麻辣(マーラー)塩らーめんの可能性を広げる
店主・山田雄太さんは、亡き父の味を引き継ぎ、浦和で創業した。『らーめん えんや』の名を一躍知らしめたのが、東京都立川市の『ラーメンスクエア立川』で2009年に開催された「第五回ラーメントライアウト」で山田さんが優勝したこと。その後、同場所での出店・卒業後、王子にオープンし、以後、何度かのリニューアルを繰り返し現在に至る。
お客さんは幅広い年齢層で、学割サービスもある。学生証を提示すれば大盛や味玉などがサービスされる。「電車の乗換の関係か、何故か東大生が多いですね。東大生ってこんなに多いんだと感じました」と店長の長沼宏和さんは笑って教えてくれた。
店名の由来を長沼さんにうかがうと「『えんや』を漢字で書くと“塩屋”となります。ですので、塩らーめん800円がイチオシです」というが、インパクトのある商品を生み出そうと、塩らーめんでは珍しい麻辣塩らーめん900円を開発したという。店内のPOPをみると麻辣には、1辛~3辛まで選ぶことができるようだ。長沼さんは「僕が注文するなら美味しさが感じられる1辛です。それ以上になると挑戦というか激辛好きのメニューになります」というが、辛い物好きとして味玉チャーシュー麻辣らーめん3辛1100円を選んでみた。
テーブルに置かれた丼を見るとスープが真っ赤に染まっている。ひと口スープをすすった瞬間、刺激的な風味が広がり、一気に汗が噴き出てくる。四川山椒や唐辛子のほか、オリジナルでブレンドした麻辣はかなりの強敵。まさに麻=しびれ、辣=辛さが襲いかかってくる。
辛さだけでなく、その奥にスープの旨味が広がり、岩海苔を溶かすと磯の風味が奥行きを感じさせる。噛み応え十分で美味しさを堪能できる真空低温調理した三元豚肩ロースチャーシュー、トロリとした黄身がコクと風味を与える味玉、シャッキリとした山クラゲと、岩海苔以外のトッピングも秀逸だ。「最近は激辛ブームからか、2辛を注文をする人もいますが、3辛で完飲する人はほとんどいないですね」といいながら心配そうな顔をする長沼さんが印象的だった。さすがに完飲することはできなかったが、汗びっしょりになりながら無事に完食することはできた。
食べ進めるたびに変化する塩つけ麺
辛さが際立っていた麻辣ではなく、純粋にスープを楽しもうと思い、塩つけ麺も注文。塩ダレは室戸海洋深層水の塩をメイン。はかた地鶏や伊吹イリコなどで作った出汁と合わせたつけ汁は黄金に輝き、ひと口飲めば口の中が幸せになる。麺が入った丼には、ややとろみがある昆布と煮干しの出汁が入っている。食べ進めていくと出汁の旨味がつけ汁に広がり、後を引く。もちろん、秀逸なトッピングとの相性も抜群だ
卓上にはまろやかな辛さのホワイトペッパー、長野『八幡屋礒五郞』による『らーめん えんや』オリジナルブレンドの七味唐からしがあり、加えることによって塩のスープを邪魔せずに適度な刺激が味わえる。七味唐からしは800円で販売もしている。定番以外にも季節限定のラーメン・つけ麺が登場する。冬は味噌だったが、春には新ワカメを使ったラーメン・つけ麺が、そして5月ぐらいからは早くも冷やしが食べられる予定。四季を感じるラーメン・つけ麺もぜひとも味わいたい。
『らーめん えんや』店舗詳細
取材・文・撮影=速志 淳