大分県に忘れ物をした気がしている
出張では別府市、宇佐市、日田市の小鹿田焼の里を訪ねた。大分グルメを堪能し、共同の温泉にも入って、街の方ともたくさん話せた良い旅であった。が、ひとつ心残りがある。
バックパックひとつでお邪魔したせいで、お土産があまり買えなかったのだ。銘菓ざびえるは気になったけど、日本酒と焼酎をたんまり買い込んでしまい、持って帰る余地がない。ちょっと後悔している。
そんな矢先に大分県のアンテナショップ『坐来 大分』を取材させていただけることになった。渡りに船。気になる大分グルメをガッツリ買うぞ!
予算1000円!旅とは
我が家の電子レンジが壊れたことにはじまる。旅行に行けるその日まで残そうと決めていたお金が最新家電になってしまった。そのショックと出かけられないストレスが沼の化身になって現れて、私を飲み込む。節約と旅を両立できる場所を求めて、行き着いた先がアンテナショップだった。
ここでアンテナショップを巡る1000円旅、略して「せんたび」のルールを説明したい。
・予算1000円
・予算内ならなにを買ってもOK
・オーバーしたら、自腹
1000円ポッキリでご当地を堪能する品を買う。これだけだ。
レストランが中心の大分県のアンテナショップ『坐来 大分』
『坐来 大分』は、アンテナショップには珍しくレストランをメインにした施設だ。大分県産の食材やお酒が楽しめ、床材や照明、器など細部に至るまでオール大分。大分の職人技が光る空間で、関あじ、関さばやおおいた和牛のほか、季節の食材も楽しめる。「とり天」や「りゅうきゅう」など大分の郷土料理をいただけるのもうれしい点だ。
入り口には名産品を集めたギャラリースペースがあり、食事のあとはもちろん、有楽町でアンテナショップめぐりをするときにもフラッと立ち寄れる。商品は日田杉の家具に並べられ、照明は竹細工が有名な大分らしく、竹をくり抜いたランプシェードがあしらわれている。
案内してれたのは、ホールマネージャーの中村さん。一緒に大分県日出町出身の広報さんも同行してくれた。まずは、出身者の広報さんに東京にきて気づいた大分の魅力を聞いてみた。
「温泉が身近にあることの良さを改めて感じました。お休みの日になんとなく温泉へ出かけて、ゆったり1日を過ごすのが当たり前でしたから。場所によっては、こどもが小さいうちは家族で温泉に入っても1000円程度、なんて施設もあるんですよ。大分県は別府をはじめ温泉が有名で、18市町村あるうちの16市町村に温泉があります。源泉数も、湧出量も日本一。大分ならではの魅力ですね。」
うらやましい。取材スタッフ全員が、広報さんに羨望の眼差しを向ける。
次に、中村さんに大分県の名産を聞きながら、商品をおすすめしてもらう。
中村さん「県を象徴するのはなんといっても、かぼすです。夏に旬を迎えるかぼすは、香りもよく、酸味も爽やかで本当においしいですよ。揚げ物にかけたり、ドリンクにいれたりするだけでなく、どんな料理にも使います」
広報さん「お味噌汁にもスープにも、ギュッと絞って使います。庭に木を植えている家庭も多いので、時期になると親戚やご近所さんからいただく機会もあり、とにかくガンガン使います」
中村さん「入り口の上にある照明にお気づきになりましたか?これ、かぼすなんですよ」
なんと……!かぼす愛が強い。
中村さんが「県民はすだちとかぼすを間違うと本気で怒ります」といっているのを聞いて、思わず笑ってしまった。
大分県の柑橘好きはかぼすだけではない。
中村さん「九州全体で親しまれているゆずこしょうも大分の名産のひとつです。青唐辛子とゆずと塩を練って作る調味料で、フレッシュなものもいいのですが、一年熟成したものはコクがでてまた違ったおいしさです」
広報さん「地元の調味料でいうと、九州の甘いお醤油は欠かせません。普段の料理もそうですが、特にお刺身にはこのお醤油がしっくりきますね。私もよく自宅用に購入します」
中村さん「だんご汁や、やせうまはご存知ですか?どちらも小麦粉を練って伸ばしたものが具材になっていて、だんご汁は味噌で煮込みます。丸くしてから帯状に伸ばした生地は、地域によって形状も違います」
広報さん「家庭でも食べますし、給食にも出るんですよ。やせうまは、小麦粉の生地を茹でてきなこをまぶします。子どもの頃のおやつの定番でした」
ぐるりと回って正面に、銘菓ざびえるが積み上げられていることに気がつく。「あ!!これです」と声をあげた。
淡い水色の包装紙を開けると、重厚な真っ黒のベロアの箱。昭和32年に生まれた王道の大分土産だ。平成12年に製造元である「長久堂」が閉店したことにより製造中止となったが、翌年ファンと元従業員の熱意により復活したストーリーも興味をそそる。
ざびえるは意地でも買って帰りたい。が、いつもの1000円セットはどうしようか……。
悩んで購入したのが、こちら!
私の大分県1000円セット
勝ちえび 700円
だんご汁 300円
合計で1000円ぴったり!開運、勝ちと書かれていたから、お正月に食べると縁起が良さそうな気がして買ってしまった。
調理して盛り付けるとこんな感じ。少しズルいけど、出張で買って帰った井上酒造の日本酒を開けることにした。
だんご汁はだんごを茹でてから、大根やごぼうを入れてしっかりと煮込んだ。米が不足していた時代に主食として食べていたといわれる郷土料理で、素朴な味わい。大分県の家庭で使われる味噌は麦味噌がベースで、濃いめに味付けしても野菜からにじむ出汁とマッチして、じんわりやさしい甘みが広がる。
勝ちえびは、宇佐市の漁師町で獲れる赤えびを干しえびにしたもの。塩茹でして乾燥させてから、棒で叩いて殻を落とす。そのときにカチカチ音がすることからその名がついたのだという。勝負事の神様が祀られる宇佐神宮にも献上されている縁起物。
調理せず酒のつまみに少しずつつまめば、ほろ酔いの優勝気分である。スープや炒め物に入れると、出汁がでてこれまた美味。あぁもう一杯飲みたい。
1000円オーバー、はみ出し購入品
今回、1000円セット以外に購入したのは、くろめ、ひた山椒、ざびえる。くろめは、後ほど説明するとして、さっそくひた山椒を使う。
焼酎の炭酸割りに、ひた山椒をガリっとひくだけのさわやかな山椒ハイに。ひた山椒はフレッシュでスッと駆け抜けるようなしびれる辛さをもった青実山椒。料理に使うのもいいけど、スパイス系の調味料はお酒にすると素材そのものの味がわかって良い。
おつまみには、くろめ。
昆布の仲間で水で戻すと粘りが出て、がごめ昆布やめかぶに少し似ている。少し醤油をたらしてズルズルッといただく。
最後はざびえるをデザートに。
洋風の皮であんを包んでいて、シンプルな白あんと、ラム酒に漬けたレーズンを加えた白あんの2種類がある。
そして「ほうほう、こんな味だったのか……」と味わっているうちに、また大分が恋しくなってくる。
アンテナショップへ行くと、訪ねるべき場所が増える
大分県から戻ってから、あまり時間をおかずにアンテナショップへ行ったはずなのに、また行きたくなる。今度はきっと、かぼすのある場所へ……。心残りを果たしたはずなのに、いくべき場所がまた増えてアンテナショップを後にした。
ディナー 17:00~22:00(L.O.21:30)
ギャラリー(物販)11:30~22:00/定休日:日・祝・第1土/アクセス:地下鉄銀座駅より徒歩1分