1997年創業、独特のあっさりした味わいの東京とんこつを独自に開発

渋谷橋交差点から広尾方面へ向かうとすぐ店の看板が目に入る。
渋谷橋交差点から広尾方面へ向かうとすぐ店の看板が目に入る。

明治通りの渋谷橋交差点からすぐ近くに『九十九ラーメン』がある。店頭に灯る派手なネオンサインが目印。オープンエアの店内は、オフホワイトの壁と木を基調にしたインテリアがナチュラルな雰囲気だ。

カウンターだけでなく、奥にはテーブル席も完備。
カウンターだけでなく、奥にはテーブル席も完備。

九十九と書いて「つくも」と読む。1997年にオープンして四半世紀以上、東京とんこつを提供し続けている人気ラーメン店だ。厨房で手際よくラーメンを盛り付けていた店長の渡辺隆秀さんに話を聞いた。

ひとつひとつ、丁寧に答えてくださった店長の渡辺隆秀さん。
ひとつひとつ、丁寧に答えてくださった店長の渡辺隆秀さん。

「オープンした当時、世間は本格的な九州とんこつが人気だったのですが、特有の香りが濃厚な九州とんこつよりもあっさりした東京流のとんこつスープを開発し、九十九ラーメンが誕生しました。このスープはすべてのメニューの基礎になっていて、納得いくものが完成するまでに2年くらいかかかりましたね」と渡辺さん。

毎朝、10時間かけて仕込む極上のスープ。
毎朝、10時間かけて仕込む極上のスープ。

さらにメニューを指差しながら「それと同時に、チーズを使ったラーメン作りも進めていて、ほどなくして完成した元祖〇究(マルキュー=正しくは究を○で囲んだ文字)チーズラーメンは、九十九ラーメン、醤油とんこつラーメンに並ぶ人気で、特許も取りました」と解説してくれた。

メニュー写真を見て驚いた!スパイス程度の量じゃなくて、チーズが山盛りになっているではないか。無類のチーズ好きなもので、このメニューから目が離せなくなってしまった。

無類のチーズ好きである筆者。この山盛りチーズを見たら目がクギ付け!
無類のチーズ好きである筆者。この山盛りチーズを見たら目がクギ付け!

こだわりの十勝産チーズと味噌とんこつのマルキューチーズラーメン

早く食べたい〜。チーズラーメンは3種類あるが、一番人気の元祖究チーズラーメン1150円をオーダー。ズラリとチーズが並ぶ棚を横目に、厨房へ入らせていただいた。

入口付近のカウンターから見えるチーズのオブジェたち。
入口付近のカウンターから見えるチーズのオブジェたち。
すべてのメニューの基礎となるとんこつスープには特製のブレンド味噌が加わる。
すべてのメニューの基礎となるとんこつスープには特製のブレンド味噌が加わる。

仕上げは、チーズを振りかける。使用するチーズは、十勝・花畑牧場のゴールデンゴーダ。渡辺さんが筆者をいちばんよく見えるカウンター席に案内しながら、「ウチの社長と花畑牧場の田中義剛さんが知り合いで、ラーメンに合うようなオリジナルのチーズを作ってもらってるんですよ」と教えてくれた。

アツアツの味噌ラーメンの上に、かき氷のような白いチーズがこんもり。ああ、おいしそう!

チーズグレーダーで60gのチーズをすり下ろしてこんもりふりかける。渡辺さんは「おそらく全国で初めてグレーダーを導入したラーメン店じゃないでしょうか」と笑う。
チーズグレーダーで60gのチーズをすり下ろしてこんもりふりかける。渡辺さんは「おそらく全国で初めてグレーダーを導入したラーメン店じゃないでしょうか」と笑う。

ほどなくして着丼。うれしくてつい「うわ〜!」と歓声をあげた。自宅でこんなことをしようものなら、お母さんに絶対怒られる量のチーズが乗っている。背徳感と罪悪感の間で欲望が爆発した。

手のひら大はあるチーズの山! 雪のようにフワフワだ。
手のひら大はあるチーズの山! 雪のようにフワフワだ。

さっそくいただきまーす! まずはスープから。ベースは味噌とんこつだというから、どれだけ濃厚なのかと思ったが、口当たりがやさしく実にまろやか。

食べ方は人それぞれだが、渡辺さんによるとまずはチーズの山を崩さず、少しずつ麺に絡めて食べるのが定番だそう。

もっちりとした中太麺にチーズをたっぷりまとわせていただく。事前にオーダーすれば細麺に変更できる。
もっちりとした中太麺にチーズをたっぷりまとわせていただく。事前にオーダーすれば細麺に変更できる。

チーズを絡め風味や旨味をダイレクトに感じながら食べた後は、次に溶けたチーズと味噌が香るとんこつスープをいただく。コクがあるチーズと独自に開発したという濃厚な味噌、そして旨味が強いのにあっさりとしたとんこつスープがぴったりマッチ。弾力のある麺をすすると、同時にトロッとしたスープを持ち上げてくれる。チーズの下にはもやしとコーンが潜んでいて、シャキッとした食感や持ち味がこのメニューをさらに楽しませてくれた。

純粋なとんこつの味わいがダイレクトに伝わる、九十九とんこつラーメン

渡辺さんが「チーズラーメンと同じとんこつスープを使っているのに、まったく味が違うので、ぜひ食べ比べてみてください」というので、九十九とんこつラーメン870円もいただいた

「全然違う味なので驚くと思いますよ〜」と渡辺さん。筆者が目を丸くする姿を思い浮かべているのか、なんだかとても楽しそうだ。
「全然違う味なので驚くと思いますよ〜」と渡辺さん。筆者が目を丸くする姿を思い浮かべているのか、なんだかとても楽しそうだ。

渡辺さんの手にかかると、線を描くみたいに九十九とんこつラーメンができてしまった。巻き戻してもう一回見たいくらいだ。なーんて言ってる場合ではない。ラーメンがのびる前にいただきまーす!

ん!?  ほんとだ! 同じとんこつスープを使用しているとは思えないほどあっさり。今度は塩ベースであっさりしているせいか、チーズラーメンよりもダイレクトにとんこつスープの味がわかる。渡辺さん、豚だけではないこっくりとした奥深い味わいは何でしょう?

「実は丸鶏も入れているんです。濃厚だけど淡麗に仕上げていて。九州のとんこつとは違うでしょう? じわ〜っとした旨味がありますよね。このスープは、九十九ラーメンの創業時にいたスタッフで、現在、青森で『麺屋一翔』を営む升田貴大さんが作ったんですよ。今も交流があり、1日限定のコラボメニューをゲリラ的に販売することもあります」

1日1000食以上販売したこともあるという九十九とんこつラーメン。ピュアなとんこつスープにぴったりの細麺。中太麺にも変更可能だ。
1日1000食以上販売したこともあるという九十九とんこつラーメン。ピュアなとんこつスープにぴったりの細麺。中太麺にも変更可能だ。

ツルッと喉越しのよい細麺を食べてまた驚いた。「これは中太麺とまったく同じ材料で細さが違うだけ」というが、小麦の香りも強く別物のように感じられる。

やわらか〜いチャーシューは簡単に噛み切れる。ほんのりあま〜い醤油味がしみ込んでいる。
やわらか〜いチャーシューは簡単に噛み切れる。ほんのりあま〜い醤油味がしみ込んでいる。

ほどよい厚さのチャーシューは豚バラ肉を2時間炊いた後、甘めの醤油たれに一晩漬け込みさらに弱火で30分炊いて仕上げる。柔らかいのに中心にまで味がしみ込んでいておいしい。

「ラーメンを半分くらい味わったら、無料で食べられるネギともやしを入れて食べるのがおすすめですよ。辛いのがお好きでしたら高菜もどうぞ。臭みがなくて九十九とんこつラーメンにすごく合うんですよ!」

デフォルトで付いてくるネギとナムルのような味付けのもやし。ラーメンの味変に!
デフォルトで付いてくるネギとナムルのような味付けのもやし。ラーメンの味変に!
ピリッと辛い九州産の高菜は120円。この高菜は味変の効果バツグン。
ピリッと辛い九州産の高菜は120円。この高菜は味変の効果バツグン。

「常連さんはさらにスープにご飯を入れて召し上がっていますね」と渡辺さん。そりゃおいしいだろうなあ。でも、さすがにラーメン2杯完食したからもう入らない。次はラーメンからの雑炊にチャレンジしようかな。今日は、腹ごなしに渋谷駅まで歩いて帰ろう。

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢