3年ぶりに入場制限がなくなった浅草酉の市

「酉の市発祥の地」のひとつといわれる、浅草鷲神社。昨年までの酉の市は新型コロナウイルスの感染防止対策のため人手が少なくなっていたが、2022年は入場制限がなくなって賑わいが戻りつつあるという。

2022年は三の酉まであり、一の酉が11月4日、二の酉が16日、三の酉が28日の開催となる。訪れたのは二の酉で、前日15日の午後10時過ぎに到着したが、熊手店や神社のまわりの露店はすでに営業していた。

時間が若干早いこともあって参拝客はまばらで、列に並ぶことなくお参りができた。日付が変わって午前0時にふたたび訪れると、人手は増えたものの適度な距離を保ちながら参拝できた。神社入口でのアルコール消毒やマスク着用など、感染防止対策も継続して行われていた。

境内には多くの熊手店が出店しており、大小さまざまな熊手がたくさん飾られていた。各店で意匠を凝らしており、見ていて飽きることがない。手締めや拍子木の音がそこかしこで響き渡り、非常に活気があった。

古い熊手を古札納所で返納し、新しい熊手を手に入れるために「よし田」へ向かう。よし田は創業から80年以上に渡って伝統の技法を守り続ける老舗の熊手商店だ。

よし田の宝船熊手はひとつひとつ職人による赤物(指物が手作業で作られる熊手のこと)で、プラスチックなどを使わず天然の材料が用いられる。手描きの七福神の表情はあたたかみがあり、手にしただけで福が舞い込んでくるようだ。

壁に掲げてある熊手を見ると、浅草のおでん料理の老舗「浅草おでん大多福」を見つけた。大多福は境内の献灯もしており、社殿に掲げられた高張り提灯でも確認することができる。

熊手店の灯りや数えきれないほどの提灯が幻想的な雰囲気を漂わせる。昼間に参拝するのもいいが、都合がつけばぜひ夜に訪れてみてほしい。

さまざまな食べ物が誘惑する露店のグルメ

鷲神社の周辺は露店が連なっており、こちらも非常に雰囲気がある。境内よりも賑やかで、若者が多い印象を受けた。すでにコロナ禍前の賑わいが戻っているようだ。

露店は仲之町通りを中心に、千束3丁目から浅草4丁目の西側一帯に出店していた。はるか彼方まで露店の灯りが続く通りを歩いていると、夢の中に迷い込んだような不可思議な感覚に襲われる。

露店の出店数はコロナ禍前と同じくらいに見えたが、座席が用意されている露店は非常に少なかった。座席があるのはビルや私有地で営業するお店ばかりだったので、おそらく公道で営業する露店での座席設置は禁止、もしくは自粛しているようだ。

さまざまなお店が並び、眺めているだけでも面白い。露店グルメも定番から初めて見るものまでたくさん種類があった。今回の目的はおでん観測だが、少し紹介しておこう。

イカ焼きはお祭り屋台の定番で、鉄板から漂う醤油の焼けた匂いがたまらない。複数のお店で焼いていたので、筆者のお腹の虫は鳴きっぱなしだった。

関西以南で見かける「はしまき」は、薄く焼いたお好み焼きを箸に巻きつけたもの。キャベツが入っていないので、かぶりついてもこぼす心配が少ない。とにかく目玉焼きのインパクトがすごい。

炭火で焼かれているのは「宮崎地鶏」。もうもうと立ちこめる煙と香りについ引き寄せられてしまう。このほか、シャーピンやトッポキ、じゃがバターなど、とにかく種類が豊富だった。

露店のおでんを満喫する

おでんはほとんどが座席があるお店で提供されているため、コロナ禍前に比べると少なくなっていた。煮込みおでんは単品ではなく、盛り合わせがほとんどだった。

最初に見たお店のおでんは種類が豊富で、大根、玉子、こんにゃく、焼ちくわ、はんぺん、ちくわぶ、フランクなどが確認できた。はんぺんやちくわぶといった東京のおでん種があるのは好印象だ。

別のお店では大根、玉子、こんにゃく、焼ちくわ、さつま揚げという厳選された少数精鋭のおでん種が揃う。おでん汁は関東風の濃口醤油を使っているようだ。

座席のないお店では味噌おでんを提供していた。茹でたこんにゃくに味噌をつける、いわゆるこんにゃく田楽となる。ふっくら、ぷりっと仕上がったこんにゃくが食欲をそそる。

おでんではないが、練り物関連では厳島神社で有名な広島県厳島(宮島)の「にぎり天」が販売されていた。にぎり天は棒状の揚げ蒲鉾で、海老やチーズなどさまざまな具材が入っている。全国各地のグルメを見つけてくる露店の開拓精神には驚かされるばかりだ。

露店グルメを見てまわり、お腹も空いたのでお店に入っておでんを味わうことにした。おでんがあるお店には、もつ煮込みや焼き鳥、海鮮焼きなどさまざまな料理が揃っている。

こちらのおでんの盛り合わせは大根、玉子、焼ちくわ、がんもどき、はんぺんに加え、牛すじが入っていた。熱々のおでんを頬張りながら、冷たいビールを流し込む。お祭りなので少々割高にはなるが、賑やかな雰囲気のなかで食べるおでんはやはり最高だ。

「天つゆおでん屋台 華門」も出張営業中

以前に紹介したおでん屋台「天つゆおでん屋台 華門」も酉の市の近くで営業していた。通常は日暮里駅近くにある銭湯「ひだまりの泉 萩の湯」(台東区根岸2-13-13)の敷地内で営業しているが、この日は焼き鳥店「鳥喜 浅草店」(台東区浅草2-19-2)の前に出張していた。

浅草鷲神社から徒歩10分ほどの距離だが、仲之町通りの露店を眺めながら進めばたいして時間はかからない。到着すると、屋台の前はお客さんで賑わっていた。お持ち帰りもできるが、屋台の脇にあるカウンターで立ち飲みもできる。

こちらのおでんの特徴は、店名にある通りおでん汁に天つゆを使用していることだ。しかも、浅草で営業している天ぷら料理店『秋光』(台東区浅草2-15-1)の本格的な天つゆだ。

おでん種はおでん種専門店の『マルイシ増英』やこんにゃく専門店の『六幸食品』、ウインナーは浅草ハムなど東京の下町で作られたものを厳選している。本店は『和食バル 華門』(台東区西浅草2-25-13)という居酒屋であり、仕込みや調理も万全なので、美味しくないわけがない。

チーズ巻が加わるなど、おでんはアップデートを続けていた。また、なると巻は萩の湯にちなんで温泉マークが入っていたりとあいかわらず芸が細かい。玉子にも温泉マークの焼印が入ったものが混ざっており、引き当てた場合にはおでん種1個がサービスされる。

セルフで燗酒を作る間、相席した人たちと交流を深める。浅草で飲食業を営む女性たち、たまたま通りかかったフランス人観光客のカップルなど、屋台ならではの思わぬ出会いがある。

セルフで燗酒を作る間、相席した人たちと交流を深める。浅草で飲食業を営む女性たち、たまたま通りかかったフランス人観光客のカップルなど、屋台ならではの思わぬ出会いがある。

久しぶりの入場制限のない酉の市は賑わいが戻って日々の生活の活力を与えてくれるものだった。おでんを提供するお店は以前よりも少なくなっていたが、屋外で味わう楽しさはあいかわらずだった。新型コロナに関しては引き続き予断を許さない状況だが、気兼ねなく参拝し、お祭りを楽しむ日常が1日も早く戻ることを願ってやまない。

天つゆおでん屋台 華門の基本情報

天つゆおでん屋台 華門
酉の市は「鳥善 浅草店」前で営業、通常は「ひだまりの泉 萩の湯」の敷地内で営業
定休日:月曜日、他
営業時間:17:30~23:00頃

鳥善 浅草店の基本情報

鳥善 浅草店
〒111-0032 東京都台東区浅草2-19-2
03-3842-0499
定休日:水曜日
営業時間:11:00~19:30

ひだまりの泉 萩の湯の基本情報

ひだまりの泉 萩の湯
〒110-0003 東京都台東区根岸2-13-13
03-3872-7669
定休日:第3火曜
営業時間:6:00〜9:00, 11:00〜25:00

取材・文・撮影=東京おでんだね