さまざまなゾウのすべり台を観察してみたい
タコやロボットなど、さまざまな意匠をこらしたデザインのすべり台もある。デザインすべり台はその大きさゆえに公園のシンボルともなり、いつしか「タコ公園」「ロボット公園」などと呼ばれて、公園の正式名称を誰も覚えていない、という事態にもなる。
統計を取ったわけではないが、すべり台に用いられるデザインのうち、最も多いのが「ゾウ」ではないだろうか。試しにLINEで「すべり台」と入力すると、ゾウの形のすべり台の絵文字が候補に出てくる。確かにゾウの長い鼻を滑り降りるのは、子どもの時に誰もが一度は想像した夢の光景である。今回はそんな各地の「ゾウさん公園」に設置されている、さまざまなゾウのすべり台を観察してみたい。
鼻を滑り降りるタイプとそうでないタイプ
まずは、われわれが「ゾウのすべり台」と聞いて、真っ先に思い浮かべるようなスタンダードなもの。鼻部分が滑り降りるところになっていて、「ゾウから滑り降りている」欲を満たしてくれるものである。
残念なことに、滑っている本人はゾウの姿を確認できないが、そこには目をつぶるしかない。渋谷区・代々木大山公園のゾウすべり台は、高低2頭のゾウが組み合わさっているタイプで、どちらから滑るか迷ってしまう。
ゾウの鼻を滑り降りるタイプのすべり台の中で、最もインパクトがあるのが、神楽坂にあるあかぎ児童遊園のものだ。
巨大な2頭のゾウが頭を並べ、その鼻を一気に滑り降りる。土地の高低差を生かしたデザインも素晴らしい。
今、「ゾウの鼻を滑り降りるタイプ」と書いた。そう、各地のゾウすべり台の中には、ゾウをモチーフにしておきながら、鼻から滑り降りないタイプのものも少なからずあるのだ。
町屋三丁目児童遊園のゾウは、お尻(耳?)から降りるタイプである。飛鳥山公園のゾウすべり台は、等身大と思しきリアルなゾウが、すべり台を背負う形になっている。
「ゾウすべり台」と聞いて、にわかにこの形を思い浮かべるのは困難だが、ゾウの背中をまたいで降りるという貴重な体験ができると思えば、これはこれでアリだろう。飛鳥山公園のゾウすべり台は昔からこのような形だったようで、近隣の人は「ゾウすべり台」と聞けばこちらを思い浮かべるかもしれない。
どうしてそこを赤く塗ってしまうのか
ところで、スタンダードな「鼻を滑り降りる」タイプの中で、私が恐怖を覚えるものがある。鼻を滑り降りるとは言っても、ゾウの丸太のようなリアルな鼻では落下の危険性があるため、滑る部分を凹状にへこませているものがほとんどだ。このへこみの部分を正面から見ると、ゾウが真っ二つに割られているようでそれはそれで怖いのだが、中にはその内側を赤く塗装しているすべり台がある。横須賀・汐入公園のゾウすべり台がまさにこのタイプであり、私は初めて通りがかった時に思わずギョッとした。
なぜそこを赤に塗ってしまったのか。見るからにゾウ真っ二つではないか。公園がにわかに殺伐とした空間に変化した瞬間である。
ここまでさまざまなゾウすべり台を見てきた。しかし以前、当コラムでも指摘したことだが、公園遊具は老朽化により撤去・交換されてしまうケースがある。これまで「ゾウさん公園」と呼ばれて親しまれてきた公園から、ゾウのすべり台が撤去されて、普通のすべり台になってしまったケースも見てきた。各自治体は、予算の都合などもあるだろうが、できる限りゾウのすべり台はそのまま残していってもらえると嬉しく思う。
イラスト・文・写真=オギリマサホ