土産物のキーホルダーをどうにか活用できないか

土産物店の店先に、必ずと言っていいほど陳列されているキーホルダー。安価で小学生にも買い求めやすく、子どもの頃はお土産としてもらうことも多かった。キーホルダーをランドセルに付ける期から、ケータイにご当地ストラップをジャラジャラ付ける期を経て、大人になってからはキーホルダーを買う機会ももらう機会も激減している気がする。それでも観光地に生き残っているキーホルダーをなんとか活用したい、と思った私は、キーホルダーをピアスに加工することを思いついたのである。

以降、観光地に赴いては手頃な大きさのキーホルダーを求めているうちに、観光地のキーホルダーにはいくつかの傾向があることに気が付いた。

汎用型の縁起物タイプ

まず、熱海の土産物店で売られていた七福神の根付やひょっとこ、

ユーモラスな表情の七福神。私はピアス穴が7個開いているので、ちょうど良い。
ユーモラスな表情の七福神。私はピアス穴が7個開いているので、ちょうど良い。
ひょっとこは鈴になっている。
ひょっとこは鈴になっている。

高尾山の恵比寿と大黒が両面になったキーホルダーなど、縁起物がモチーフとなっているもの。

両面に顔が付いているデザイン。1個で2倍楽しめる。
両面に顔が付いているデザイン。1個で2倍楽しめる。

なぜ熱海でひょっとこなのか、高尾山で大黒なのか、考えても仕方がない。このジャンルは「その土地の土産物」というより「縁起の良いものを身に着けること」に重きが置かれているからだ。

アメリカ生まれ、大阪育ちのビリケンさん。足裏を触るとご利益があるそう。
アメリカ生まれ、大阪育ちのビリケンさん。足裏を触るとご利益があるそう。

大阪のビリケンさんはまだご当地色の濃い縁起物だが、

高尾山の土産物店で売られていた托鉢僧。全国のお寺近くで売られていそう。
高尾山の土産物店で売られていた托鉢僧。全国のお寺近くで売られていそう。

高尾山の托鉢僧はおそらく、日本全国を回れば同じ僧に出会えそうな気がする。

自ら運を掴み取る系の縁起物として、おみくじキーホルダーも根強い人気を誇る。小学生時代、「飛び出る系」や「中を覗ける系」のキーホルダーは特に人気が高かった。今の子どもたちもそうなのだろうか。私は清里で入手したが、同じものを他の観光地で見かけたことがある。

清里のおみくじキーホルダー。暗い所で光る。
清里のおみくじキーホルダー。暗い所で光る。
振ると、中からおみくじの棒が出てくる。
振ると、中からおみくじの棒が出てくる。

みやげ物感じ強めのご当地キャラクタータイプ

横向きの姿が千葉県の形をしたチーバくん、ピアスにするときには横が見えるようにしたい。
横向きの姿が千葉県の形をしたチーバくん、ピアスにするときには横が見えるようにしたい。

縁起物のような「汎用系土産」に対し、ご当地のキャラクターがデザインされたキーホルダーは、土産物感を高めてくれる。千葉県のキャラクター・チーバくんや大阪のくいだおれ太郎、広島のカープ坊やをデザインしたマンホールのキーホルダーなどはその一例だ。

道頓堀のシンボル、くいだおれ太郎。一目で大阪土産とわかる。
道頓堀のシンボル、くいだおれ太郎。一目で大阪土産とわかる。
広島にあるデザインマンホールをモチーフにしている。
広島にあるデザインマンホールをモチーフにしている。

国立歴史民俗博物館(千葉)のショップで入手したキーホルダーも、芝山古墳群で馬型埴輪が出土していることを思えば、ご当地キャラと言ってもいいのかも知れない。

芝山古墳群から出土した馬型埴輪に何となく形が似ている。
芝山古墳群から出土した馬型埴輪に何となく形が似ている。

しかし高尾山のタヌキやサルとなると、確かに高尾山にはタヌキやサルは生息しているだろうが、果たしてこれをご当地キャラと呼んでもよいものか、判断に迷うところだ。

親子ダヌキのキーホルダー。親ダヌキは目が飛び出る仕様。キャラというより縁起物枠か。
親子ダヌキのキーホルダー。親ダヌキは目が飛び出る仕様。キャラというより縁起物枠か。
ファンキーな顔をしたサル。木陰からこれが出てきたら全速力で逃げる。
ファンキーな顔をしたサル。木陰からこれが出てきたら全速力で逃げる。

キャラクターではないが、その地を走る鉄道、名所などもご当地感溢れるモチーフである。

伊勢志摩を走る近鉄の観光特急「しまかぜ」。
伊勢志摩を走る近鉄の観光特急「しまかぜ」。

とは言え、東京タワー下の土産物店で入手したタワー型キーホルダーは、どう見てもエッフェル塔のような……?

この形はどう見ても東京タワーには見えない。
この形はどう見ても東京タワーには見えない。

現物とともにお土産にしたい、ご当地グルメ系タイプ

熱海の駅売店で購入したアジの干物キーホルダー。耳から干物の香りが漂ってきそう。
熱海の駅売店で購入したアジの干物キーホルダー。耳から干物の香りが漂ってきそう。

普通ならば現物をお土産にするご当地グルメも、キーホルダーになるとまた違った味わいが出る。

伊豆限定のサザエとキンメダイのキーホルダーセット。組合せが斬新な気がする。
伊豆限定のサザエとキンメダイのキーホルダーセット。組合せが斬新な気がする。

先日熱海に行った際、アジの干物やサザエ、キンメダイといった海産物には目もくれず、それをモチーフとしたキーホルダーを購入して帰った。
干物は食べればすぐになくなってしまうが、キーホルダーをピアスにすれば、いつまでもその思い出を耳に飾っておくことができる。

赤福売店で購入した赤福箱の根付。おなじみのデザイン。
赤福売店で購入した赤福箱の根付。おなじみのデザイン。
全国で販売されているものの、サクレアイスの製造元・フタバ食品は宇都宮の会社である。
全国で販売されているものの、サクレアイスの製造元・フタバ食品は宇都宮の会社である。

また最近ではご当地お菓子のキーホルダーも多く発売されているが、パッケージを見ているだけでも楽しい気分になる。

キーホルダーをふたつ買う気持ち

高尾山の糸巻キーホルダー。八王子市が織物の街だからだろうか。
高尾山の糸巻キーホルダー。八王子市が織物の街だからだろうか。

ここまでさまざまなキーホルダーを見てきたが、世の土産物店には一定数「なんだかよくわからないキーホルダー」が存在する。なぜ高尾山で糸巻きなのか、なぜ熱海で竹馬なのか。縁起物の時にも同じ疑問を抱いたが、縁起物であれば身に着ける理由もわかる。もし友人から熱海土産として竹馬のキーホルダーを渡されたら、私はどうすればよいのだろう。複雑な気持ちを抱きながら、私は竹馬をピアスに加工した。

熱海と竹馬の関係について、ご存じの方がいたら教えていただきたい。
熱海と竹馬の関係について、ご存じの方がいたら教えていただきたい。

今後も各地の土産物店で味わい深いキーホルダーを発見していきたいとは思っているが、問題は「ピアスに加工する場合、同じものを2つ買わなければならない」という点だ。2つのキーホルダーをレジに持っていく際、「家で待っている双子にあげるんです、双子なので同じものじゃないと喧嘩になるんです」などと、空想の双子をでっちあげて、自らの心に言い訳をしている自分を少々いじらしく思う。

絵・文・写真=オギリマサホ

旅の楽しみの一つに、土産物がある。その土地ならではの特産物や工芸品など、心惹かれるものは多い。一方で、ファンシーなキーホルダーやペン立てのように、日本全国どこに行っても似たようなものが売られていることもある。こういった「いかにも土産物」といった商品は大抵、有名な観光地に古くからある土産物店で販売されている。最近では各地の土産物もどんどんオシャレになってきて、土産物店から「いかにも土産物」が少なくなりつつあるようだ。しかし、少ないお小遣いを握りしめながら、何を買おうか迷っていた子ども時代を思い出すと、これらの土産物が絶滅してしまうのは残念極まりない。そこで今回は、「いかにも土産物」に目を向けていきたいと思う。
先回このコラムで取り上げた土産物、スノードームと湯呑みは、いずれも重くてかさばるのが難点であった。それに対し、小さくて軽い土産物の代表格といえばピンバッジではないだろうか。どこの観光地に行っても、大抵はその土地ならではのデザインをあしらったピンバッジが販売されている。旅の思い出にもなるし、誰かにプレゼントしてもいい。山登りをする人ならば、山ごとに販売されているピンバッジを集めることで、自らの登頂の記録ともなる。最近ではご当地ピンズとして、土産物店の店頭にガチャガチャの機械が置かれ、気軽に購入することもできるようになっている。小さくてかさばらないからと、調子に乗って各地でピンバッジを買い求めるうち、いつしかピンバッジ入れにしていた缶が一杯になってきた。これを機に、各地の土産ピンバッジを振り返ってみたいと思う。
もらっても困る土産物を、かつてみうらじゅんは「いやげ物」と呼んだ。そのもらって困る土産物の最たるものが、「よくわからない置物」ではないだろうか。日本各地で生産される置物は、時に民芸として評価され、最近では郷土玩具愛好家も多い。しかし一方で、そういった評価もできないような置物が土産物店に鎮座していることも、また事実なのである。
各地の観光地に見られる土産物のうち、前回このコラムで取り上げたスノードームと並ぶ「重くて割れる土産物」、それが湯呑みではないだろうか。古くからの土産物店には、必ずといっていいほど土産湯呑みが陳列されている。しかし旅の途中で立ち寄った場合、なかなか購入しづらい。理由はただ一つ、重いからだ。