派手な看板に挑戦的なワード。店のあちこちから溢れ出すオーナーの思い
池袋から要町通りを歩くと、かなり遠くからでも見える「油そば好きですか?」という看板。その下にド派手な店構えで『「鈴の木」の一杯を世界へ!!』『美味しくなかったら全額返金!』などの文字が踊る。さいたま市で人気だった『油そば SUZUNOKI』が、2022年2月に池袋に移転しオープンしたのがこの店だ。
墨で書いた張り紙が壁のあちこちに貼ってある店内もちょっと独特だ。これらはすべてオーナーのりゅう社長が考えたもので、油そばの食べ方はもちろん、両親への感謝、事業への思いなどが綴られている。「オレはやってやるぜ!!」という気合いがビンビンに伝わってくる。
それもそのはず、この場所は8年間で11もの店が開店しては消えていったという曰く付きで、りゅう社長自身、自虐的に「ラーメン店の墓場」と呼ぶほど。ふつうなら敬遠するような場所だが、人と同じことをやるのが嫌いというりゅう社長にとっては「曰く付きぐらい跳ね飛ばす」という心構えのようだ。
「油そばが苦手な人でもおいしく食べられる油そば」を求めてたどり着いた味
りゅう社長自身、油そばがあまり好きではなかったという。そんな自分が好きになれる油そばが作れれば、苦手な人でもおいしく食べてもらえるんじゃないかと独自で研究し作り上げた油そばは、4年8ヶ月の間にさいたま市の人気店の仲間入りを果たす。野心家なりゅう社長が次のステージとして狙いを定めたのはここ池袋だった。
特徴的なのは、油そばなのに汁気が多いこと。この汁気はなにかというと、鶏ガラをベースに豚骨と野菜を7時間炊いたスープと背脂を混ぜた背脂スープだ。油そばは麺に油を混ぜるのが一般的だが、スープと脂を混ぜることにより、油そばが苦手な人でも食べられる味になる。
予想通りガッツリくるジャンクな味!しかし意外とくどさがなくて……
茹でたての中太ストレート麺を入れ、鶏ガラベースのスープと背脂を配合した背脂スープを注ぎ入れる。青ネギ、刻みタマネギ、フライドガーリック、溶けるチーズ、マヨネーズを盛り付け、最後に特製辛味噌ダレをオン。辛まぜそばの完成だ。
きれいに盛り付けられているが、「下からガッツリ混ぜてください」とりゅう社長。お言葉に甘えて「下からガッツリまぜる為の箸」でガッツリ混ぜまくる。(おそらく一般的な割り箸です)
茹で前で200gの中太麺はなかなか重いが、底の方にはスープがあるので混ぜやすい。ようやく全体が整ってきた。
ひと口すすると、真っ赤な特製辛味噌ダレがパンチのある辛さを繰り出す。味噌に唐辛子、数種のスパイスを調理して作ったこのタレは、尖った辛さではなくじわじわとくる辛さで旨味を感じる。チーズやマヨネーズのトッピングによって少しマイルドにもなっているようだ。口当たりがよく弾力もある中太麺はモチモチッとしてタレとバッチリ絡み合う。噛む度にガリガリっとフライドガーリックが砕け、パワーあふれる味がガツンとくる。想像通り、これはかなりジャンクな味わいだ。と思ったのもつかの間、案外くどくないことにも気づいた。
スープの力によって、ガッツリジャンクなだけでなく食べやすく複雑な味わいになっているのだ。確かに油そばが苦手な人でもOKな1杯だ。
カスタマイズと追い飯も楽しみの1つ。最後の最後まで味わって
豊富に揃う味変グッズで自分だけの味を追求するのもいい。生ニンニクはフライドガーリックとまた違ったインパクトのある味になる。特製辛ダレでもっと辛さを求めたり、粉チーズを思い切ってたくさんかけてマイルド風味にするのもオススメだ。
汁気が多く残るため、茶碗1杯100円の追い飯も人気。盛り方は自由なのでてんこ盛りにして食べる人も多く、満腹になること間違いなしだ。
目指すところは世界。油そばに夢をかけるオーナー
すでに国際的な味となったラーメンに続き、油そばも世界に通用する味だとりゅう社長は断言する。「アジア各国はスパイシーな味が好きなので、確実にこの店の油そばは受け入れられると思います」と世界を旅してきたりゅう社長は自信満々、油そばのカップ麺化という目標も語る。
視野は常に世界。油そばに夢を持つオーナーが今後どのような展開をしていくのか楽しみだ。
取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ 構成=アド・グリーン