高級住宅街にある落ち着いた店内で本格インド料理ランチを楽しむ
JR品川駅高輪口を出て第一京浜を品川方面へ徒歩5分。通りから道を一本入った静かな一角に『サルマ ティッカ&ビリヤニ』はある。落ち着いた雰囲気の高級住宅街の中に、エスニックな雰囲気の看板。店の前にはオープンテラス席がある。
本場のビリヤニを食べることができるということでエスニック界隈(?)では有名な店なんだそう。筆者はビリヤニ初挑戦ということで期待しての訪問だ。
高級感のある黒を基調とした店内。窓を大きくとっているため、開放感もある。壁の装飾もシンプルで居心地がよさそう。
迎えてくれたのは『サルマ ティッカ&ビリヤニ』を運営する会社のCEO カン・ムクタルさんとマネージング・ディレクターのジャウエド・サリムさん。カン・ムクタルさんはインド出身、ジャウエド・サリムさんはパキスタン出身だ。
ジャウエド・サリムさんは語学留学生として1988年に来日。学校を卒業後、貿易会社を経営していたが、現在ではカン・ムクタルさんのもとで、6店舗のインド料理店を管理統括している。
「私が学生の頃は、インドやパキスタンの料理は値段が高くてなかなか食べることができなかったんです。そこで、日本の皆さんやインド、パキスタンから来ている人たちにボリュームいっぱいのインド料理を食べてもらいたいという思いで2014年にここをオープンしました。安くておいしい料理をたくさん食べてもらって、みんな幸せになってほしいと思っています」とジャウエド・サリムさん。今では日本国籍を取得している。
そして、お店を開いたもう1つの目的が、ビリヤニを日本へ紹介するということ。「日本では、インド料理というとまずカレーだと思っている人が多いのですが、実はインドではビリヤニのほうがメジャーです。もっと日本の皆さんにビリヤニのおいしさを知ってほしいんです。」とカン・ムクタルさん。
本場インドではカレーよりメジャーなビリヤニを本場と同じレシピで調理する
「ビリヤニとはインドで一番有名な料理で、結婚式や誕生日などの集まりでは必ず真ん中に置かれます。どこの地方といったものではなく、インド全土やパキスタンなど広い地域で愛されている郷土料理です。」と、ジャウエド・サリムさんがビリヤニ初挑戦の筆者に丁寧に教えてくれる。
調理方法も聞いてみた。「インド料理に使われる細長い米のバスマティライスとカレー、そして肉や野菜などの具材を交互に重ねて15分から20分ほど蒸します。スパイスは32種類使っていて、そのうち20種類は粉にして、残りの12種類はそのまま入れます。意外と手間のかかる料理なんです」。
作り方にもいろいろあるようだが、本場インドと同じ方法で調理しているそう。日本風に言うと、炊き込みご飯といった感じらしい。少しでも安い値段で食べてほしいので、大量に使うスパイスは系列店でまとめて仕入れるなど工夫してコストダウンに努力している。
一番人気のラム肉のビリヤニランチセットはインド人も納得の味
ビリヤーニセット(ラム)1260円を注文すると、まず、ラッシーとサラダが出される。
ラッシーは甘さ控えめで飲みやすい。サラダは新鮮でシャキシャキ感のある野菜とほんのり香辛料の香りがするドレッシング。サラダの上に乗っている白いものは、チーズではなく豆腐。なぜ和食の豆腐をのせたのか聞いてみると「遊びですよ」とジャウエド・サリムさんが笑顔で答えてくれた。
いよいよビリヤニとライタ(ヨーグルトのサラダ)、豆カレーが到着。初対面のビリヤニは、大きくカットされたトマトとオニオン、オレンジなど見た目のカラフルさに少々驚く。一口いただくと、バスマティライスのふわっとした感。これは初めての経験だ。次に具材とバスマティライスが混ざりあった絶妙なバランスの食感とスパイスの香りが口の中に何層にも広がる。あまりのおいしさにニコリ。
一口ごとに、味わいが微妙に変わってくるが、おそらく32種類も入れてあるスパイスによるものだろう。辛さは控えめに感じるが、しばらくするとスパイスの効果で体がぽかぽかしてくる。
食べ進むと、ライスの中に柔らかい骨付きのラム肉の塊を4個発見。しっかりとスパイスに漬けこまれていたラム肉は、味も十分に染み込み、独特の味わいが楽しめる。スパイスの塊が口に入ってしまうことがあるが、そのときは無理に食べてしまわず、出してオッケーだそう。
次にライタと豆カレーをかけて味の変化を楽しむ。ライタとは、刻んだ野菜と香辛料が入ったヨーグルトサラダのこと。ビリヤニにかけると、ヨーグルトの酸味が加わってまろやかな味わいとなる。豆カレーは、カレーのスパイス感とコクで味にさらに深みが足される。ボリュームがあるので、ライタと豆カレーを混ぜる割合を変えてみたり、いろいろと試しながら、さまざまな味の変化を十分に楽しむことができる。
1人で食べきれるかな、と心配になるほどのボリュームだったが、途中で飽きることなく食べ終えることができた。インド人やパキスタン人の客も多く、常連客の中には、週に3〜4回来店する人もいるそう。このビリヤニをいただけるのなら、遠方からでも来る価値は十分にあると思う。
今回始めてビリヤニを食べたが、ふわっとした食感のバスマティライスとスパイスの香りを満喫できて大満足。つぎは、天気のいい日にテラス席でゆっくりとビールと本格インド料理を楽しみたいと思えるお店だった。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=羽牟克郎