果てしないデザインマンホールの世界
今やデザインマンホールは、ご当地をアピールするアイテムとして各自治体が積極的に設置場所等を宣伝するようになり、各地のマンホールを撮影することを旅の楽しみとする愛好家も多くなった。また下水道広報プラットフォームが各自治体と協力して制作し、無料配布している「マンホールカード」も、2022年8月現在、第17弾・872種が発行されるほどの人気となっている。「デザインマンホール撮影」は、メジャーな趣味となったのだ。
このように人気の高いデザインマンホールを、なぜ私は撮影してこなかったのか。それはひとえに私の「コンプリート欲」による。たとえば大きな書店などに行くと、私はいつも茫漠とした気持ちに襲われる。「一生かかっても、ここにある本を全部読むことができないのだろうなぁ……」という気持ちになるわけだ。「あるものは全部揃えたい」という私にとって、デザインマンホールは数が多すぎるのである。
マンホールカードも、ご当地に行かなければ入手することができない(それは正しいと思うし、今後もそうであって欲しい)。47都道府県を全て回って、1万種類以上あると言われるデザインマンホールを全て撮影することも、マンホールカードをコンプリートすることも難しいだろう。ならば最初から撮影しなければいいか。そのようなねじれた気持ちでいたのである。
気になり出したら、まんまとハマる。メジャーな趣味の魔力
しかしそんな私の心を、あるマンホールが動かした。昭島の道路で見つけた「クジラのマンホール」である。
昭島でなぜクジラ?と疑問に思い、ひとまず撮影をした。帰宅してから調べてみると、多摩川河川敷でクジラの化石が発掘され、「アキシマクジラ」と命名されたことにちなんでいる、とのことであった。
私はそれ以降、出かけた先々にデザインマンホールがある場合、少しずつ写真に収めるようになった。
マンホールをよくよく見てみれば、雨水用や汚水用などに分かれていることがわかる。
また「マンホール」とひとくくりにしてきたが、中にはデザインの施された消火栓もあり、なかなかに奥が深い。
試しに調布駅周辺を散策してみたところ、調布ゆかりの漫画家・水木しげるにちなんだ「ゲゲゲの鬼太郎」キャラクターのマンホールや、
FC東京のキャラクター「東京ドロンパ」をあしらったマンホールなど、数多くのデザインマンホールを発見することができた。
全国制覇は難しいにしても、まずは自分の住んでいる都道府県のデザインマンホールを発見する散歩をしてみてもよいのではないか、と考えを改めてみた。と同時に、これまで行った各地でマンホールを撮り逃してきたことを猛烈に後悔するようになった私は、まだまだ「コンプリート欲」に囚われた人間なのだと再確認した訳である。
絵・文・写真=オギリマサホ
※マンホールカード:出典=下水道広報プラットフォーム(http://www.gk-p.jp/)
※アキシマクジラ:出典=東京都下水道局 https://www.gesui.metro.tokyo.lg.jp/business/b1/designmanhole/index.html