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町田忍(まちだ しのぶ)
庶民文化研究家。幼少期より銭湯に通い、銭湯研究の第一人者に。『銭湯 「浮世の垢」も落とす庶民の社交場』(ミネルヴァ書房)など銭湯関連本ほか著書多数。『町田忍の手描き看板百景』(東海教育研究所)が2月25日発売。

中延温泉 松の湯

伝統建築+近代的設備の融合に惚れる

銭湯絵師・中島盛夫氏のペンキ絵が胸をすく。内湯は薬湯、寝湯、電気風呂などを用意。
銭湯絵師・中島盛夫氏のペンキ絵が胸をすく。内湯は薬湯、寝湯、電気風呂などを用意。

暖簾の先でマツやモミジ、ザクロなど、植木屋が丹精する庭が出迎え、旅情ムードムンムン。1958年建築の風情を生かす形で2002年にリニューアル。浴室では大迫力の富士山が威風堂々と君臨し、その裾野に湯が満ちる。「肌触りがいいので調べてもらったら温泉でした」とは、3代目の伊東正博さん。さらに、その湯にガスを混ぜ込んだ炭酸泉が露天風呂に。温泉を堪能し、広々した脱衣場でふと見上げれば、雲浮かぶ空天井。爽快だ。

黄色い梁が印象的。
黄色い梁が印象的。
3代目の正博さんを中心に、伊東さん一家で切り盛り。
3代目の正博さんを中心に、伊東さん一家で切り盛り。
ヒノキの露天風呂。浴室は火曜に男女が入れ替わる。
ヒノキの露天風呂。浴室は火曜に男女が入れ替わる。
町田 町田

柱が真ん中にないから、ペンキ絵の富士山が迫力あるんです。ゆがみもないし。タイルの目地、天井に至るまで清潔で気持ちいい!

『中延温泉 松の湯』スポット詳細

住所:東京都品川区戸越6-23-15/営業時間:15:00~翌1:00(日は10:00~24:00)/定休日:月(祝の場合は翌火)/アクセス:東急大井町線・地下鉄浅草線中延駅から徒歩2分

品川 新生湯

ワンダーランドを地でいく銭湯

「太陽の湯」は露天風呂の奥に洞窟風呂が。
「太陽の湯」は露天風呂の奥に洞窟風呂が。

「銭湯は楽しんでもらうところ」と新井重和さんは、社長で兄の重雄さんとともに銭湯を引き継ぎ、2007年に大リニューアル。左右の浴室を「太陽の湯」「大地の湯」と命名し、15種類もの風呂をちりばめた。しかもペンキ絵は、富士山に向かって飛ぶ火の鳥という斬新さ。週替わりで2つの風情を味わう趣向だ。また、岩塩サウナも自慢で、「2度目の発汗がすごいんです」。井戸水の沸かし湯は37~0℃のぬるめゆえ、じっくり浸かりたい。

見事な格天井。デイサービスも行う、街に開かれた銭湯だ。
見事な格天井。デイサービスも行う、街に開かれた銭湯だ。
高濃度炭酸泉や石敷き浅風呂など、浴室で風呂の種類が違う。
高濃度炭酸泉や石敷き浅風呂など、浴室で風呂の種類が違う。
「大地の湯」の露天風呂ではウッドデッキで涼める。
「大地の湯」の露天風呂ではウッドデッキで涼める。
町田 町田

洞窟風呂があるのは、ぼくの知る限り都内で2軒だけ。亡き早川利光さんのペンキ絵も必見。ぬるめの温度設定でゆっくり入れます。

『品川 新生湯』スポット詳細

住所:東京都品川区旗の台4-5-18/営業時間:15:30~翌0:30(土は15:00~、日は11:00~24:00、月祝は13:00~24:00)/定休日:月(祝の場合は営業、振休あり)/アクセス:東急大井町線荏原町駅正面口から徒歩5分

戸越銀座温泉

黒湯と風情を日替わりで味わう

「月の湯」の富士山は中島盛夫氏作。内湯は黒湯。
「月の湯」の富士山は中島盛夫氏作。内湯は黒湯。

「1960年に開いたとき娯楽的な温泉銭湯にする構想があったんですが、頓挫したんです」と話すのは、2代目の中寺秀雄さん。先代が買い取り、時を経て、2007年の改築を機に、黒湯がようやく日の目を見た。「月の湯」は間仕切りのない内湯に、「陽の湯」は露天風呂に黒湯が満ち、角質が取れて肌がツルピカになると評判だ。また、硬度0の軟水にガスを入れながら沸かす炭酸泉もやわらか。色調、壁画、湯船のすべてが異なる2つの風情とともに堪能あれ。

ペインティングユニットGravityfreeが2人で描くモダン壁画が「陽の湯」に。内湯は軟水の湯。
ペインティングユニットGravityfreeが2人で描くモダン壁画が「陽の湯」に。内湯は軟水の湯。
階上には露天風呂が。「陽の湯」は黒湯だ。
階上には露天風呂が。「陽の湯」は黒湯だ。
中寺さん。
中寺さん。
町田 町田

黒湯が気持ちいいし、2種の浴室がデーシフトで楽しめます。広い休憩室やガラスブロックを用いた外観など、凝った造りも見どころ。

『戸越銀座温泉』スポット詳細

住所:東京都尾品川区戸越2-1-6/営業時間:15:00~翌1:00(日・祝は8:00~12:00朝湯あり)/定休日:金/アクセス:地下鉄浅草線戸越駅から徒歩3分

武蔵小山温泉 清水湯

2種類の温泉を交互浴する贅沢さ

黄金の湯と呼ぶナトリウム-塩化物強塩泉は療養泉。露天風呂にあり。
黄金の湯と呼ぶナトリウム-塩化物強塩泉は療養泉。露天風呂にあり。

石塀に瓦がのる仕切りや木目調タイルで設らえられた湯殿にいると、鄙びた山の温泉
場に来たかのよう。坪庭を配した露天風呂には、2つの岩風呂それぞれに、黒湯と黄
金の湯がなみなみ。黒湯に加え、2006年に1500m掘り、黄金の湯が湧出。「交互浴するのがオススメです」と3代目の川越太郎さん。常連客に倣い、2種の温泉に交互に繰り返し浸かれば、あぁ湯が染みていく。湯上がりは、庭を愛でての生ビールや畳で寝そべることも。湯治気分、満喫だ。

重炭酸ソーダ泉の黒湯。ナノバブルを充塡した水風呂も黒湯だ。
重炭酸ソーダ泉の黒湯。ナノバブルを充塡した水風呂も黒湯だ。
生ビール500円のお供に温泉玉子50円も忘れずに。
生ビール500円のお供に温泉玉子50円も忘れずに。
2階には休憩室が。
2階には休憩室が。
町田 町田

異なる泉質の源泉を2つもつ銭湯は都内唯一! 温泉玉子も作っていて、湯上がりにビールと味わえるのも、ここならではの楽しみです。

『武蔵小山温泉 清水湯』スポット詳細

西品川温泉 宮城湯

随所に心地よさを追求する温泉銭湯

3階浴室には露天風呂も。
3階浴室には露天風呂も。

“他を抜く”の縁起を担ぎ、先代が好んだのがたぬき。入り口や湯船脇にいて、のどかな気持ちにさせてくれる。「足腰の悪い方は高いほう、小さな子供さんがいる方は低いほうが使いやすいから」と、高さが異なるカランを揃え、「自宅では味わえない風呂を目指しました」と、3代目の佐々木正治さん。木曜に男女が入れ替わる浴室は、1階湯船が広々ゆったりとし、3階露天風呂は空近し。メタケイ酸が豊富な温泉で満たされ、疲れがじんわりほぐれていく。

これが島カラン。隣や後ろの人に気兼ねなく洗える。カランは高さちがいで3種あり。
これが島カラン。隣や後ろの人に気兼ねなく洗える。カランは高さちがいで3種あり。
露天風呂の小窓をのぞけば、新幹線が往来する。
露天風呂の小窓をのぞけば、新幹線が往来する。
純和風浴室の1階。たぬきも気持ちよさそうだ。
純和風浴室の1階。たぬきも気持ちよさそうだ。
町田 町田

都内ではこの島カランは珍しいですね。高さが選べて、ゆっくり気兼ねなく洗えます。あと、バリアフリーだし、たぬきもいますよ。

『西品川温泉 宮城湯』スポット詳細

取材・文=佐藤さゆり(teamまめ) 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2020年3月号より