中延温泉 松の湯
伝統建築+近代的設備の融合に惚れる
暖簾の先でマツやモミジ、ザクロなど、植木屋が丹精する庭が出迎え、旅情ムードムンムン。1958年建築の風情を生かす形で2002年にリニューアル。浴室では大迫力の富士山が威風堂々と君臨し、その裾野に湯が満ちる。「肌触りがいいので調べてもらったら温泉でした」とは、3代目の伊東正博さん。さらに、その湯にガスを混ぜ込んだ炭酸泉が露天風呂に。温泉を堪能し、広々した脱衣場でふと見上げれば、雲浮かぶ空天井。爽快だ。
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品川 新生湯
ワンダーランドを地でいく銭湯
「銭湯は楽しんでもらうところ」と新井重和さんは、社長で兄の重雄さんとともに銭湯を引き継ぎ、2007年に大リニューアル。左右の浴室を「太陽の湯」「大地の湯」と命名し、15種類もの風呂をちりばめた。しかもペンキ絵は、富士山に向かって飛ぶ火の鳥という斬新さ。週替わりで2つの風情を味わう趣向だ。また、岩塩サウナも自慢で、「2度目の発汗がすごいんです」。井戸水の沸かし湯は37~0℃のぬるめゆえ、じっくり浸かりたい。
洞窟風呂があるのは、ぼくの知る限り都内で2軒だけ。亡き早川利光さんのペンキ絵も必見。ぬるめの温度設定でゆっくり入れます。
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戸越銀座温泉
黒湯と風情を日替わりで味わう
「1960年に開いたとき娯楽的な温泉銭湯にする構想があったんですが、頓挫したんです」と話すのは、2代目の中寺秀雄さん。先代が買い取り、時を経て、2007年の改築を機に、黒湯がようやく日の目を見た。「月の湯」は間仕切りのない内湯に、「陽の湯」は露天風呂に黒湯が満ち、角質が取れて肌がツルピカになると評判だ。また、硬度0の軟水にガスを入れながら沸かす炭酸泉もやわらか。色調、壁画、湯船のすべてが異なる2つの風情とともに堪能あれ。
黒湯が気持ちいいし、2種の浴室がデーシフトで楽しめます。広い休憩室やガラスブロックを用いた外観など、凝った造りも見どころ。
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武蔵小山温泉 清水湯
2種類の温泉を交互浴する贅沢さ
石塀に瓦がのる仕切りや木目調タイルで設らえられた湯殿にいると、鄙びた山の温泉
場に来たかのよう。坪庭を配した露天風呂には、2つの岩風呂それぞれに、黒湯と黄
金の湯がなみなみ。黒湯に加え、2006年に1500m掘り、黄金の湯が湧出。「交互浴するのがオススメです」と3代目の川越太郎さん。常連客に倣い、2種の温泉に交互に繰り返し浸かれば、あぁ湯が染みていく。湯上がりは、庭を愛でての生ビールや畳で寝そべることも。湯治気分、満喫だ。
異なる泉質の源泉を2つもつ銭湯は都内唯一! 温泉玉子も作っていて、湯上がりにビールと味わえるのも、ここならではの楽しみです。
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西品川温泉 宮城湯
随所に心地よさを追求する温泉銭湯
“他を抜く”の縁起を担ぎ、先代が好んだのがたぬき。入り口や湯船脇にいて、のどかな気持ちにさせてくれる。「足腰の悪い方は高いほう、小さな子供さんがいる方は低いほうが使いやすいから」と、高さが異なるカランを揃え、「自宅では味わえない風呂を目指しました」と、3代目の佐々木正治さん。木曜に男女が入れ替わる浴室は、1階湯船が広々ゆったりとし、3階露天風呂は空近し。メタケイ酸が豊富な温泉で満たされ、疲れがじんわりほぐれていく。
都内ではこの島カランは珍しいですね。高さが選べて、ゆっくり気兼ねなく洗えます。あと、バリアフリーだし、たぬきもいますよ。
『西品川温泉 宮城湯』スポット詳細
取材・文=佐藤さゆり(teamまめ) 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2020年3月号より
柱が真ん中にないから、ペンキ絵の富士山が迫力あるんです。ゆがみもないし。タイルの目地、天井に至るまで清潔で気持ちいい!