博多っ子のソウルフードを、おいしく食べやすい味で
『とんこつラーメン 博多風龍』は、都内を中心に現在9店舗を展開する博多ラーメン専門店。博多出身のオーナーが「腹から日本を元気にしたい!」と、2008年5月、渋谷に1号店をオープンした。創業当時は「1杯500円、替玉2玉無料」という驚異的な安さで他の追随を許さず、今なおリーズナブルな値段と替玉サービスで、その人気が衰えることはない。
メニューはとんこつラーメン650円のほか、焦がしニンニク入りの黒マー油とんこつラーメン730円、チョイ辛の辛味噌とんこつラーメン&ピリ辛の辛ラーメン(共に780円)がある。季節限定ラーメンを楽しみにしているリピーターも多い。
今回は定番のとんこつラーメンと、人気の博多産明太子ご飯のセットを注文。まずは、とんこつラーメンをシンプルにいただくとしよう。
スープは豚骨特有のにおいやドロッとした感じがまったくなく、むしろさらっとしていてクリーミー。あっさりとしていながら豚骨の旨みがしっかり感じられて、クセがないのにクセになってしまう(⁉)味わいで、誰もが食べやすいだろう。麺は「ばりかた」で注文。食べ進めるうちに麺の硬さが徐々に変わっていき、麺がスープを吸ったりして、おいしさも変化していく。
トッピングの黒マー油80円が気になったので追加。コクがあって、とってもいい香り。やさしいスープに香ばしさとパンチが加わって、味の広がりを楽しめる。辛味噌+黒マー油もいいかも。黒マー油で味変してからついレンゲを持つ手が止まらず、スープを飲み干してしまった……。
気を取り直して明太子ご飯、いただきます。明太子のプチプチ感と青ネギのシャキシャキ感がいいコンビ。「替玉もぜひ食べていただきたいので、ご飯で満腹にならないように、あえてバランスを考えた量にしています」と副店長の尾中瑞城さん。スープを飲み干してしまったこともあり、替玉は見送りとなったが、明太子ご飯のおいしさに大満足。茶碗1杯分あるので、筆者のおなかを十分満たしてくれた。
替玉おかわり&味変トッピングで、無限ループ必至!
替玉を頼む時は、卓上に用意されている「替玉札」を使用する。麺の硬さを決めて指定の台の上に札を立てて、店員さんに声をかけるという流れだ。
麺の硬さは、「ばりかた」「かた」「ふつう」「やわ」の4種類から選べる。最初に注文した時と麺の硬さを変えるのもいいし、着丼と同時に替玉を注文するお客さんもいるらしく、楽しみ方は人それぞれ。
替玉を受け取ったら、無料のトッピングで味変を楽しもう。店の自慢は、福岡から仕入れているオリジナルの辛子高菜。めっちゃ辛いので、ひとつまみ入れて辛さの加減をみるといい。この辛子高菜、味・辛さ・食感、すべてがパーフェクト! 辛いもの好きはきっとドハマりするだろう。たくさん食べたいところだが、一気に入れ過ぎぬようにご注意を。
けっこう刺激的なトッピングが多いのだが、その味に負けずに、あるいは相乗効果で、スープのクリーミーさが最後まで生きているのはすごい。やさしい味わいながらも、スープの土台に力強さがある。1杯目はとんこつスープそのものを味わい、替玉を注文して2杯目、3杯目は味変を楽しむ。これぞ博多ラーメンの醍醐味なのだ。
「おいしく食べてもらいたい」との想いから生まれた工夫
無料の替玉やトッピング以外にも、とんこつラーメンをさらにおいしくするお供がたくさん。なかでもチャーシューと半熟玉子は特筆に値する。チャーシューは注文が入ってから1枚ずつ切り分けるといったこだわりよう。切り立てだから、しっとりしていてやわらかい。クリーミーなとんこつスープにぴったりの味つけだ。
自家製の半熟玉子は、ほんのり甘みがあってやさしい味。玉子を口にすると、あれ? 温かい。これは玉子を入れた時にスープが冷めないようにするためだそうで、半熟加減が変わらないようにほどよく温めているという。
細麺の博多ラーメンは熱過ぎない程度の絶妙な温度でスープを仕上げるため、具材をのせればのせるほど、スープが冷めやすくなる。「なるべく温かい状態で召し上がっていただけるように、トッピングでのご注文の場合は別皿でお出しして、お客さまの好きなタイミングでスープに入れていただくんですよ」と教えてくれたのはエリアマネージャーの赤池将郎さん。
切り立てのチャーシューといい、温かい半熟玉子といい、このひと手間のおかげでよりおいしくラーメンをいただけるのだから、店員さんのさりげない心配りに感謝です。
秋葉原総本店は2009年8月に開店した。秋葉原総本店と共に歩んできた九州男児の尾中さんは、初めて『博多風龍』のとんこつラーメンを食べた時、その安さとあまりのおいしさに雷に打たれたような衝撃を受けたと話す。
一時、家業を手伝うために店を離れたが「お客さんに替玉を手渡しできる喜びが忘れられなくて」再び戻り、副店長となった尾中さん。「替玉のおかわりやお客さんの反応があると、うちのラーメンってやっぱりすごくおいしんだって、そう思えるのがうれしいですね」。
尾中さんをはじめ店員さんは皆、『博多風龍』のラーメンが大好きなのだ。店頭で聴いた「博多風龍の唄」では、こう歌われている。「風龍!! 味わうこの幸せを~♪ 今こそ!」、皆さんにもお届けしたいと筆者も心からそう思った。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=コバヤシヒロミ