敷地は日比谷公園の約2.5倍。八潮団地のなりたち
戦前から人口増加や産業経済の発展を見据えて計画された東京港の埋め立て造成。広大な大井埠頭(ふとう)埋め立て地もその一つで、一部は品川区八潮と名付けられる。そのうち5丁目を占めるのが八潮団地。日比谷公園の約2.5倍という約40haの敷地に69の住宅棟で、1983年3月に街開きした。
「当時入居者は子育て真っただ中の30〜40代の人ばかり。小学校も3校あるほどで、それはにぎやかでした」
と、39年前の入居開始時から住む八潮自治会連合会会長の丹治勝重さん。ピーク時は1万7129人が暮らした。
イメージは地中海の街!?
官公署や医療機関以外は商業施設とコンビニのみの純然たる住居専用地域だが、島のような敷地を歩き回ると、橋に小道に壁画に築山にと気になるものばかり。団地の建物も画一的でなく変化に富んでいて見比べるのが楽しい。
丹治さん「ここは5つの事業者に開発され、分譲と賃貸が混在し、かつ、開発時のコンセプトは地中海の街のイメージだったと聞いています」
茶系の三角屋根や側面のタイルなど、しゃれた要素が多いのはそのせいか! さらに近年では各棟で改修工事が繰り返されるうちに、個性も微妙に出ているとか。
また、道路と居住スペースに高低差がある立体的な構造も特徴で、
「建物の行き来を車と接することなくできる歩車分離のおかげで歩きやすい街になっています」
と八潮地域センター所長の中西俊介さん。緑も豊かで、敷地の外周を囲むように続く緑道にいると埋め立て地であることを忘れそうになる。現在の人口1万1555人の中には若い世代も増えているという住みよき団地は、散策してもよし。島歩き気分でいざ探検へ!
自然もアートも盛りだくさん! これが八潮団地だ
1. 歩きたくなるくねくね道
51号棟付近は植栽豊かで曲がりくねった道がいい。築山には古代遺跡のような彫刻の石も!
2. 橋は緑と黄色のツートンカラー!
ちょうちょ橋などの、地区を結ぶ人道橋は緑と黄色に色分け。柵にはイチョウのモチーフ。
3. まさかの武蔵野の森が出現!?
京浜運河緑道公園はまさに森。植物の生命力を思い知る。そばのしおじ公園ではパンダも目撃!
4. 三ツ星トイレにほれぼれ~。
洋館風の建物に英語表記。何かと思えばなんと京浜運河緑道公園 勝島橋公園トイレ。個室は洗面台付き!
5. あなたの故郷の石はあるかな?
33号棟脇の築山は長野の天竜石など47都道府県の銘石が石段に。頂上にはストーンサークル⁉
6. 高~い塔柱が迫力あり!
京浜運河側からアクセスできる3つの橋の一つ、かもめ橋。1986年開通、全長168mの歩行専用の斜張橋だ。
7. 走っても歩いても気持ちよい緑の道
運河に沿って約2.5㎞続く京浜運河緑道公園。見上げるほどの背の高さの木々には松も多い。
8. 洒落たアーチにグッとくる
白亜の60号棟の1階は、装飾の凝った軒のアーチと柱が連続して異国チック。併設する保育園にもアーチが。
9. ひと休みならココ!
元気食堂うさぎ
NPO法人みんなの食育が運営し、管理栄養士による料理やスイーツは体に優しく彩りよく栄養満点。店内には住人で作った「みんなのやしおマップ」も。プレートランチ750円、野菜のヘルシーケーキ300円。
●10:00~17:00(ランチは11:30~14:00)、第2火・翌水休。 ☎03-6674-1803
取材・文=下里康子 撮影=小野広幸
『散歩の達人』2022年7月号より