新宿の“穴場的酒処”でいただく創作和食

新宿三丁目駅C7出口から徒歩5分、新宿御苑駅からは徒歩8分程度。新宿6丁目の『新宿呑場 六』は、都内の有名イタリアンレストランで経験を積んだ料理人が手がける創作和食が人気のネオ大衆酒場だ。かつて同じ職場で働いていた代表の中村健人さんと店長兼総料理長の小林秀明さんが2019年11月に店をオープンした。

東京医科大学がある通り沿いのビルの中2階。提灯や行灯、窓ガラス越しに見える『六』のロゴマークが目印に。
東京医科大学がある通り沿いのビルの中2階。提灯や行灯、窓ガラス越しに見える『六』のロゴマークが目印に。
新宿6丁目にあるので、シンプルに『六』と命名。おいしいものをいろいろ出せるように居酒屋の業態にした。
新宿6丁目にあるので、シンプルに『六』と命名。おいしいものをいろいろ出せるように居酒屋の業態にした。

新宿6丁目は駅から少々遠く感じる距離にあり、新宿駅周辺に比べて飲食店の数は少ない。人通りもそう多くはないエリアで、『新宿呑場 六』は新宿の“穴場的酒処”を目指している。

夜は女性客が7割ほど。料理の味や盛りつけもさることながら、おしゃれな店内もインスタ映えすると話題に。
夜は女性客が7割ほど。料理の味や盛りつけもさることながら、おしゃれな店内もインスタ映えすると話題に。

「お客さんに、全部おいしかったですって言ってもらえるのはうれしいですね」と、笑顔を見せる小林さん。メニューを考える時のこだわりを伺ったところ、「トレンドを意識しつつ、ひとひねりすること」だそうで、日頃から味の探究に余念がない。

店長兼総料理長の小林秀明さんは、福島県出身の元バンドマン。ちょ~っとだけ人見知りだそう。
店長兼総料理長の小林秀明さんは、福島県出身の元バンドマン。ちょ~っとだけ人見知りだそう。

「おいしいものができる時って、あれこれ試行錯誤することがなくて、不思議と一発でガチッと決まることが多いんですよ」。小林さんが「一発でキマッタ!」という料理がこちら。豚肉の生姜“焼き”ではなく、厚切り豚生姜。しょうゆとみりんで下味をつけた豚肩ロース肉をブロックのまま低温調理したものだ。

低温調理器を使って66℃で約4時間。2cmほどの厚さにカットされた豚肉は食べ応え十分!
低温調理器を使って66℃で約4時間。2cmほどの厚さにカットされた豚肉は食べ応え十分!
千切りキャベツはお肉の上に直のせ。お肉のジューシーさとキャベツのシャキシャキ感が口の中で合わさる。
千切りキャベツはお肉の上に直のせ。お肉のジューシーさとキャベツのシャキシャキ感が口の中で合わさる。

レア風に仕上がったブロック肉をオーダーが入るごとに切り分け、一口大にカット。温めた生姜ソースをたっぷりかけて、千切りキャベツをのせる。

「はじめはランチの日替わり定食の1つだったんですが、お客さんに好評でレギュラー化しました」と小林さん。お客さんのリクエストで、夜メニューにも加えたという。

食べ応えのあるおかずと大盛りごはんは驚きのボリューム感

ランチメニューは、海鮮三食丼、厚切り豚生姜定食、唐揚げ定食、日替わり定食と、全4種。どれも1000円以下とリーズナブルなお値段だ。今回のランチのオーダーはもちろん、厚切り豚生姜定食で決まり。

厚切り豚生姜定食850円。丼にてんこ盛りのごはん、海鮮出汁の和風スープ、小鉢、香の物が付く。
厚切り豚生姜定食850円。丼にてんこ盛りのごはん、海鮮出汁の和風スープ、小鉢、香の物が付く。

肝心のお味は言うことなし! 角切りのお肉はジューシーで、分厚いのに難なくかみ切れるやわらかさ。低温調理によって絶妙なさじ加減で加熱しているそうで、小林さんの見事な腕前が発揮されている。生姜ソースがお肉の甘みを引き立てていて、いい仕事をしている。

肉汁と生姜ソースのマリアージュがたまらなく美味。脂身は甘みがあって意外と重たくないので、いくらでも食べられそう。
肉汁と生姜ソースのマリアージュがたまらなく美味。脂身は甘みがあって意外と重たくないので、いくらでも食べられそう。

この厚切り豚生姜、何しろごはんが止まらない。「午後も仕事をがんばってもらおうと、よかれと思って……」と小林さんが盛りつけてくれたごはんの量は、なんと約1.5合分! それでもペロッと残さず食べる女性もいるのだそう(筆者も完食!)。

ランチタイムは多い時で3回転するので、満席続きでみんなが大盛りごはんにすると、1日100合炊いている計算に!?
ランチタイムは多い時で3回転するので、満席続きでみんなが大盛りごはんにすると、1日100合炊いている計算に!?

お肉もごはんも平らげておなかいっぱいになったら、食後にはおいしいコーヒーが待っている。店の入り口にコーヒーポットと紙コップが用意されており、セルフサービスでいただくことができる。店内でもテイクアウトでもOKだ。

毎朝ドリップしているコーヒーをサービスで。店内で飲んでいかれる常連さんには陶器のカップで出している。
毎朝ドリップしているコーヒーをサービスで。店内で飲んでいかれる常連さんには陶器のカップで出している。

紙コップを手にコンビニから出てきた人たちが急ぎ足で会社に戻る姿を見て、コーヒーを買う時間の節約になればと思って始めたサービスだそう。そんなさり気ない心配りも、多くのお客さんを魅了してやまない理由の1つだろう。

店の味とスタッフにほれ込んで何度も足を運ぶ常連たち

調理に専念する小林さんを支えているのは、ホールリーダーのたかひろさん。中村さんから誘いがあって、オープニングスタッフとして働き始めた。

「以前はシャツにネクタイ姿でかしこまって接客する店に勤めてたんですが、今はお客さんとの会話やふれあいを楽しみながら働いています。お客さんがコバさんの料理をおいしいそうに食べて楽しく過ごしている様子を見ていると、ぼくもうれしくなります」。お客さんが喜ぶ顔を間近で見られることに、たかひろさんはやりがいを感じているようだ。

開店当初からホールを任されているたかひろさんは店の顔。小林さんにとって心強い相棒だ。
開店当初からホールを任されているたかひろさんは店の顔。小林さんにとって心強い相棒だ。

「たかひろはお客さんと仲良くなって、飲み友達になることもあるんです。スタッフに会いに来てくれるお客さんもたくさんいるんですよ」と、小林さんは顔をほころばせる。

ふとカウンター上の貼り紙が気になって近寄ってみると、メニューかと思いきや、お客さんの名前がズラリ。予約客を迎える際につくる席札が何枚も重なり合って貼ってあった。

『新宿呑場 六』の絶品料理とフレンドリーな接客にほれ込むお客さんが後を絶たないのがよくわかる光景だ。
『新宿呑場 六』の絶品料理とフレンドリーな接客にほれ込むお客さんが後を絶たないのがよくわかる光景だ。

大きいサイズの席札は常連さんのもので、名前の横にメッセージが書き添えてある。「○○さん、今日もいつものご用意して〼(マス)」「いつもThank youでーす!!!」そのひとつひとつに常連さんとのつながりを見て、お客さんにとても愛されているのだと感じた。

カウンター8席、テーブル3卓(10席)の他に、個室が1室(4席)。夜の予約は必須だ。
カウンター8席、テーブル3卓(10席)の他に、個室が1室(4席)。夜の予約は必須だ。

「もっと多くのお客さんにお楽しみいただけるように、これから会社を大きくして、いろんな業態にチャレンジしていきたいです」と、小林さんは意欲を示す。絶え間なく進化し続ける『新宿呑場 六』はネオ大衆酒場の領域を超えて、新たな扉を開くことだろう。

住所:東京都新宿区新宿6-4-2 コスモス新宿18 M1F/営業時間:11:30〜14:30LO・17:00〜22:30LO(土はランチ休み)/定休日:日/アクセス:地下鉄新宿三丁目駅から徒歩7分、地下鉄丸ノ内線新宿御苑前駅から徒歩8分

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=コバヤシヒロミ