一番多いのは原付スクーター
「描かれたバイク」が多く発見できる場所、その一つがバイク駐輪場だ。駐輪場の場所案内や停め方の説明などには、大抵バイクが描かれている。
一番多いのは原付スクーターの絵であるが、たとえば分倍河原の自動二輪車・原付置場に描かれたスクーターの形は、現行のものというより、1980年代初頭のホンダ・タクトやスズキ・ジェンマを彷彿とさせる。
甲府市役所のバイク置場表示に描かれたスクーターは、リアタイヤのカバーの感じなどから、昔のベスパっぽい雰囲気が漂っている。
1990年代のホンダ・ディオのような流線形のスクーター、
2000年代のホンダ・クレアスクーピーのようなライトがフロントカウルに埋め込まれたタイプのもの、
ホンダ・トゥデイのような軽快なデザインのスクーターといったように、描かれた原付スクーターだけを見ていても、スクーターのデザインの変遷を感じることができる。
なお少数派ではあるが、ホンダ・エイプ50のようなストリートスタイルの原付とおぼしき絵も存在はしている。
「大型バイクも停めることができますよ」というアピール?
バイク駐輪場にはまた、250㏄以上と思われるバイクも描かれる。「大型バイクも停めることができますよ」という駐輪場側のアピールなのかも知れない。しかしここもまた多種多様なバイクの生息地と化しているのである。
渋谷の駐輪場にはクラシカルなデザインのバイクが、
原宿にはビッグスクーターが、
幕張にはストリートファイター系までが描かれている。
しかも渋谷や幕張のものは、ピクトグラムにしては描き込みが大変細かい。実際のバイクを参考にしたか、或いはよほどバイク好きのデザイナーが手掛けたのだろうか。
趣味が丸わかりの手描きバイク
ピクトグラムはまだ一般性や普遍性が考慮されているが、「手描きで描かれるバイク」になると、描いた本人の趣味が丸わかりとなる。
府中の公園の看板に描かれたヤマハ・X1のようなバイク、
川崎の壁に描かれたオフロード車、
奈良のバイク店のシャッターに描かれたスズキ・RG400ガンマのようなレプリカ系バイクなど、
「恐らくこのバイクを描きたくて描いたんだろうな」という意気込みが感じられて、見ている方も楽しい。
もし将来、自分が「バイクの絵を描いて下さい」と言われた時に備えて、今後も街に描かれたさまざまなバイク絵を参考にしていこうと思う。
絵・文・写真=オギリマサホ