座談会メンバー紹介
信藤舞子
写真右。連載では和菓子の執筆を担当。北海道出身。
あんこが好き。家族には豆菓子やカステラを東京みやげとして贈る。
下里康子
写真中央。連載では洋菓子の執筆を担当。東京都出身。
取材してみてハマったのはスノーボール、シナモンロール、カヌレなど。
オカダタカオ
写真左。連載では撮影担当。千葉県出身。
和菓子はその場で食べる用も追加で買う、がモットー。最近はチョコがマイブーム。
東京のおやつと言えば…
――まず、東京のおやつの印象というと?
信藤 和菓子はまず、煎餅ですね。醤油の煎餅は地元の北海道ではなじみが薄かったんです。
オカダ 千葉は醤油煎餅が普通。でも煎餅が丸い瓶に入って店に並んでるって景色は東京ならではかもね。何よりいろんな味がある。山椒とか……。
信藤 『神田 淡平(あわへい)』ですね。あのバリエーションを目の当たりにすると、煎餅ってこんなにも遊び心を表すことができるのかって驚きます。
オカダ どの味もよくて、上下がない感じが煎餅はいいんですね。あと1枚100円程度なのもいい。ちょっとした手みやげとして気負いなく買える。
下里 洋菓子の印象は全体的にこざっぱりしているというか、洗練されている感じがあります。『しろたえ』のレアチーズケーキなんて、まさにその代表で。
オカダ カメラマン助手時代、赤坂で出合った時には驚いたよ。日持ち・重量感、全てが完璧というか。これぞトーキョーシティーボーイの一品だな、と。
助手時代といえばエクレア。小腹が空いた時によく食べていました。シュークリームより食べやすいんだよね。『フランス菓子 Sthorer(ストレル)』のは外側のチョコのカリっと感もいい。
下里 エクレアはクリームや表面の飾りで遊べたり、チョコを別添えしたり、結構幅広い。見た目も楽しいし、崩れにくいから手みやげにいいと思います。
ラッピングのひと工夫に高級感
下里 この『Quatre×Quarts(カトル カール)』も食べてみてください。
信藤 え、海苔だ!
下里 そう、この店がある大森は海苔で有名なので、あおさのりをたっぷりと混ぜ込んでいます。隠し味に白味噌を使っているんですよ。切ると鮮やかな緑色でギャップもいいし、レモンやプレーンなどそれぞれの味に合わせてラッピングのリボンの色を変えているのもいい。高級感があるんです。自分のために買ってもテンション上がるし、人にも自信を持って渡せます。
オカダ 高級感といえば、この団子はきれいだよな〜。
信藤 『五十鈴(いすず)』のずんだ、いいでしょ! 味はもちろん、スーッとずんだをのせている姿も品があって。まさに東京、しかも神楽坂って感じ。米を使ったおやつのおいしさに気づくきっかけとなった一軒です。あと、東京では餅菓子の専門店がまだまだ元気ですね。
オカダ 餅屋の餅っていうのはよくできてる。滑らかでね。餅みたいなものこそ差が出るね。「餅は餅屋」っていうのは単なることわざじゃなくて、真理。
信藤 餅にこだわりを持つ和菓子屋も多いです。『つ久し』の豆大福は豆、あんこ、餅のバランスのよさが素晴らしいんです。
下里 お豆が大きくて、視覚的にもそそられます。
オカダ しかも意外と重くない。
信藤 あと今の季節なら桜餅もいいですよね。地元では「道明寺」以外食べたことなかったから、「長命寺」をみた時にはビックリした。しばらく慣れなくて……でも今はどっちも好き。
オカダ そういう意味では、和菓子は季節を楽しむツールだよね。季節感がある手みやげもポイント高い。
職人の腕が生み出すおいしさ
下里 ぜひこれも。『かすたねっと』のチョコチップ! 固さと大きさが絶妙で、今やみつきなんです。日持ちもするし、クッキーを嫌いな人はあまりいないと思うから、贈り相手を選ばないはず。
信藤 カリッとしていておいしい! 塩気もいいですね。
下里 社会福祉法人系のお店なのですが、連載で紹介したうち、そういうお店はほかにもあるんです。どのお店もとってもおしゃれで、おいしくて。
信藤 日持ちする焼き菓子というと、カステラも好き。棹(さお)で売ってるやつは一人じゃ食べられないから手みやげにするんです。自分も食べる気満々で訪問先に持参して、ハイ! みんなで食べましょうって(笑)。
編集部 もちろん買ってきました! 『坂本屋』です。
オカダ カステラ専門の個店があるのもやっぱり東京っぽいよね。
信藤 専門店がたくさんあって、しかもそれぞれの職人の腕が独自のおいしさを生み出している。東京のおやつは、本当に多様で、尽きることがないな、と思います。
下里 一番は決められないです。言ってみれば全部好き(笑)。
オカダ 興味がなくても、食べてみることでハマることもありますからね。私なんかはレモンケーキがまさにそうでした。あと最近は、おいしい和菓子をおいしいお茶と合わせる贅沢にね、ようやく気づきましたよ。
信藤 おやつとのペアリングを考えるのも楽しいですよね。取材中、お酒に合うかりんとうとか、ハーブティーに合うおはぎとかをお店の人に教えてもらったものも印象的でした。
下里 手みやげが、新たなおやつへの興味や、発見のきっかけになったら最高ですね。
撮影=オカダタカオ 構成=編集部
『散歩の達人』2022年4月号より