親子3代で切り盛りする肉屋にはこだわりがてんこ盛り
2019年にオープンした『MEAT&DELI 355』は豚、鶏、さまざまな国産銘柄和牛を取り揃えた肉のセレクトショップ。店内には精肉のほか、生ハムやフライ類、サラダ、チーズなどのデリやお弁当、指定農家から仕入れる野菜、ワインまで幅広いラインナップで展開する。デリはすべて手作りで、材料の素材も、調味料もできる限り国産にこだわっている。
ここは戸越銀座でも少なくなった親子3代で店を切り盛りする店。前身は、ここから少し離れた西品川の百反通り商店街で精肉店として営業していた『飯田ミートストアー』だ。代表の原田昌紀さんに話を聞いた。
「昭和16年(1941)創業ですが、その前から店を開いていたそうですから約90年間、庶民的な肉屋として営業してきました。でも、周囲に大きなスーパーができたり、ほかのお店が高齢化で閉店したりして、閑散としてしまって。うちもガクンと売り上げが落ちました。あわや廃業の危機というところまで来たのですが、それでも父が『肉屋を続ける!』と決断したので、僕も覚悟を決めました」。
そして創業者から数えて4代目に当たる昌紀さんはここ戸越銀座で新たな会社を立ち上げ、この店をオープンすることにした。ちなみに店名の355とは、百反通り商店街のころの住所が3丁目5番地5号だったことからきている。
信頼できる問屋から仕入れる、部位ごとにおいしい良質な銘柄肉
A5ランクの牛が最上級といわれているが、実は、1頭の牛のすべての部位がA5ランクに見合っているかというと、そうではないという。「僕は、等級だけではうまさを判断できないと思っています。だから、うちは“銘柄和牛のセレクトショップ”。信頼できる肉問屋が持ってくる本当に納得のいく肉を、各部位ごとに一番上質なものを仕入れて販売しているんです」と昌紀さん。さすが、代々続く肉の目利きだ。
しかも、販売する肉はスタッフで味見をし、それぞれの銘柄の部位の特徴を舌で覚える。だから、お客さんに胸を張っておすすめできるのだ。
品質への自信は、ガラスケースの中でもわかる。選んだ牛肉は、注文してから好みの厚さにスライスしてくれるからフレッシュだし、お好みの量で購入できるので、自宅で高級焼肉店で出されるような上質な焼き肉やすき焼き、ステーキがリーズナブルな価格で楽しめるのだ。
その他、あっさりしているが甘みとコクがある新潟の深雪もち豚、山梨や長野産の柔らかくてうまみたっぷりの地鶏・信玄どり。そして老舗ハムメーカーの大多摩ハム、イタリア・パルマ産のプロシュートやナチュラルチーズ専門店・ユーロアールのチーズまでズラリ。極めつきは、肉のガラスケースの向かいにあるワインまで。どうしよう……もう、目移りしまくりだ!
天気のいい日は、外のデッキでのんびり食事もいい!
店頭では、愛媛の廣川農園のこだわり野菜と、神奈川の井出トマト農園のおいしいトマトを販売。
そのままズイっと奥に入れば、フライやサラダ、スパニッシュオムレツなどのデリが購入できる。銘柄和牛と深雪もち豚を使用した人気のメンチカツを筆頭に、信玄どりの唐揚げ、コロッケやトンカツなども揃う。さらには焼きすき丼、ロースカツ丼、銘柄和牛の焼き肉弁当などガッツリ食事も店の外で食べてOKだ。
天気の良い日は、散歩がてらにふらりと立ち寄りここで一杯飲むもよし、ちょっと奮発して肉や野菜を買い込み家でじっくり料理をするもよし。散歩の途中でこういう店に出合ってしまうかもしれないから、カバンにエコバッグをもうひとつ入れておこうと思うんだよなあ。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢