タバコ屋の素敵なデザインを記憶に残したい
商店の横にヒョッと設置された、人ひとり分くらいの幅の出窓。そこから顔を覗かせて客とやりとりをする。店内は見えないが、きっとコックピットのようになっているに違いない。
大抵店番はおばあちゃんであるが、たまに犬が出てくることもある。一体内部はどうなっているのだろう、と想像は膨らむばかりであった。
しかし時代を経るにつれ、タバコはコンビニで気軽に入手できるようになった。私自身は非喫煙者のため、タバコ屋に行く機会も持てない間に、街からはどんどんタバコ屋が姿を消していっているように思う。
こうしたタバコ屋の素敵なデザインを、ぜひ記録に残しておかねばならない。
「昭和のタバコ屋」にもさまざまある
出窓風のタバコ屋は、一般に「昭和のタバコ屋」などと言われる。しかし昭和といっても年代はさまざまだ。
雨戸が木でできている古い造りのものから、
昭和中期風のタイル張りのデザイン、
ポップな字体の80年代風のものまである。
狭いところ好きの私が心惹かれるのは、やはり窓の幅が狭い店である。狭ければ狭いほど、「店内はどうなっているのだろう……」と想像力をかき立てられる。窓が狭いということは、当然シャッターの幅も狭くなる。
このような幅狭シャッターは、タバコ屋の窓にしか使われないのではないだろうか。
昭和を感じるキャッチコピー
ところで、古いタバコ屋を見学しているうちに、次のような言葉が目に留まった。「おくりものに たばこ」。恐らくは専売公社時代のキャッチコピーだろうが、今では考えられないフレーズである。度重なる値上げにより、一箱600円近くとなっている現在の方が、高級感のある贈答品となりそうでもあるのだが……。
ここまで、おもに閉店したタバコ屋を見てきたが、もちろん今現在でも出窓からの販売を続けているタバコ屋もある。今後もこうしたタバコ屋の出窓が残り続けることを祈りつつ、出窓が似合うおばあちゃんになれるよう、今から鍛錬を積んでおきたいと思う。
絵・写真・文=オギリマサホ