「消えたフン」の解読難易度をはかってみる

ところでこうした「犬フン看板」を追っているうちに、ある傾向に気が付いた。犬フンを強調したいあまり、赤の塗料で文字や絵を描いてしまい、経年とともに赤色だけ退色して何だかわからないメッセージになっている看板が多いということだ。今回はその「色あせ犬フン看板」に注目し、解読の難易度をはかってみたい。

人はなぜ看板を作るのか。それは訴えかけたいことがあるからだ。看板の中でも特に重要な言葉は目立たせたい。そこで、その言葉を目立つ赤で書く。その心情はとてもよくわかる(写真1)。ところが、である。日数が経つと、赤い塗料はだんだん褪色していく。結果、一番目立たせたかったはずの言葉だけが消え失せてしまっているという事態が生じる。何とも皮肉な話だ。街を歩いていると、こうした「赤だけ色あせ看板」をあちこちで発見することができる。この「色あせ看板」をいくつかのグループに分類してみたい。
今まさに退色が進んでいる、足立区の犬フン看板。フンが黒で縁取りされているため、色あせても安心だ。
今まさに退色が進んでいる、足立区の犬フン看板。フンが黒で縁取りされているため、色あせても安心だ。
もともとの色はこちら。女の子がフンにリードを付けて連れ帰っているシュールさについては、また別稿で検証したい。
もともとの色はこちら。女の子がフンにリードを付けて連れ帰っているシュールさについては、また別稿で検証したい。

【解読難易度:易】

おそらく退色したのは赤だけではないだろう。新品と比較してみたい。
おそらく退色したのは赤だけではないだろう。新品と比較してみたい。

難易度の低い「色あせ犬フン看板」とは、赤字部分がまだ若干残っており、判読ができるタイプである。調布の犬フン看板は、だいぶ色あせてはいるものの、「犬のフンの後始末は飼主の手でして下さい」という文字が読み取れる。

紙の印刷の場合、退色とともに雨による滲みにも気を付けなければならない。
紙の印刷の場合、退色とともに雨による滲みにも気を付けなければならない。

川越の犬フンポスターも、もはや赤が薄黄色になってしまっているが、かろうじて「ここで(フンや尿)をさせないで下さい」と読み取ることができる。

【解読難易度:やや難】

上部に書かれた警告文が読み取りにくいが、ぜひ頑張ってもらいたい。正解は府中市ホームページで。
上部に書かれた警告文が読み取りにくいが、ぜひ頑張ってもらいたい。正解は府中市ホームページで。

赤字は消えてしまったものの、背景の色との若干の違いなどにより、判読ができるものがある。府中の犬フン看板は、一見しただけではわからないかもしれない。しかし、よくよく目を凝らして見てみれば答えがわかるはずである。

色あせするのは赤だけではなく、緑の塗料も設置された環境によっては色あせてしまうのだということもわかった。

【解読難易度:難】

完全に赤が抜けてしまい、何が書かれていたかが全くわからない看板がある。それでも、前後の文脈などから、空欄に当てはまる語句を入れることはできる。

スペースを考えると、ここに入る語句は「フン」一択だろうが、もしかすると「ふん」かも知れないし、大書された「糞」かもしれない。
スペースを考えると、ここに入る語句は「フン」一択だろうが、もしかすると「ふん」かも知れないし、大書された「糞」かもしれない。

「犬フン看板」の場合、その言葉は十中八九「フン」なわけだが、「糞」なのか「フン」なのか「ふん」なのか、表記の違いまでは判別することはできず、非常にもどかしい思いがする。

これも恐らくは「フン」だろう。フン警告看板には珍しいウサギのイラスト。
これも恐らくは「フン」だろう。フン警告看板には珍しいウサギのイラスト。

【解読難易度:至難】

文章が丸ごと消えてしまっている川越の看板は、難易度としては最も難しい。どのような文が書かれていたのか、一字一句正確に答えることはほぼ不可能だろう。それでもわれわれがこれを「犬フン看板」と認識できるのは、飼い主に何かを訴える犬のイラストが残っているからである。

 

今後もこうした「犬フン看板」を追っていきたいと思っているが、看板を設置している人には、このような謎解き看板になる前に、新しいものに交換することをおすすめしたい。

 

絵・写真・文=オギリマサホ