身も心もゆるまる大人の秘密基地
市ケ谷駅近くで週2回出店している、日本酒専門のキッチンカー『カンパイ SAKE LOVERS』。店を手掛ける石坂晏敬(やすのり)さん、久保佳那さんに話を伺った。友人同士だった二人は、2019年より「日本酒ペアリング推進協会」という団体を運営し、日本酒の普及活動を行っていたそう。石坂さんは千葉県の酒蔵で酒造りの経験を持ち、久保さんは「酒ディプロマ」資格を保有。経歴からも日本酒愛が伝わってくる。
だが、さらなる活動の活性化を、と意気込んでいた矢先にコロナ禍が直撃。主催イベントも中止を余儀なくされた。「続けてきたものを形にしたいと模索していた中、日本酒に特化したキッチンカーは珍しいのでは? と始めました」と石坂さん。店には現在約35種類の日本酒をラインナップ。立ち飲みカウンターのほか、奥にはテーブル席も用意されており、屋台にも、ちょっとした秘密基地にも似た設(しつら)えだ。
注目はにごりと熱燗! 新感覚の味わいに舌鼓
この日のおすすめは「喜量能(きりょうよし)」純米酒(滋賀県)の熱燗と、にごり酒にジンジャーエールを合わせたホットカクテル。実は石坂さんは、日本酒のなかでも、にごり酒と燗酒の良さを多くの人に広めたい、と力を入れているそう。日本酒にジンジャーエール? と訝るも、一口含めばなんとも滋味深い優しい味わい。
おつまみにはアボカドの酒粕漬けとおでんを。料理は久保さんの担当だ。
「酒粕をいただく機会が多いので、それを使ったメニューが多いですね」
メニューに並ぶつまみはもちろん日本酒との相性バツグン。だしや酒粕の旨味が舌の上で酒と合わさり、思わず杯が進む。これがペアリングか! と、ベストマッチ具合に膝を打ちたくなる。
立ち上る湯気と出汁の香りに誘われて、ちらほらと通りを歩く人が覗(のぞ)きにやってくる。ランタンの明かりとタープテントの半屋外で、都心にいながら味わえるアウトドア感も楽しい。
「一人でも気軽に立ち寄りやすいのがキッチンカーの魅力です。日本酒初心者の方にこそ訪れてもらえたら」と久保さん。ゆくゆくは他の地域での出店も目指すそう。街の小さなオアシスの発展を願って、心から「カンパイ」したい!
『カンパイ SAKE LOVERS』店舗詳細
取材・文=吉岡百合子(編集部) 撮影=小野広幸