ネパール料理は家庭料理というオーナーのネパール版おふくろの味

オーナーのマハラジャン・ラジェシュさんがネパール料理店を始めたのは、2004年に日本の大学に留学した当時、ネパール料理を食べたいと思っても食べられるお店がなかったことがきっかけだ。

「ネパール料理店がないから、自分が食べたいネパール料理店をやりたいと思った」。大学卒業後の2013年、武蔵小山に『ネパール料理 バルピパル』(2016年に西小山に移転)をオープン。その後、2017年に2店目となる『ネパール料理 バルピパルkitchen』を目黒にオープンした。

オーナーのマハラジャン・ラジェシュさん(中央)と、シェフのマハラジャン・サジャンさん(左)とバクタバハドゥール・ラジャリさん(右)
オーナーのマハラジャン・ラジェシュさん(中央)と、シェフのマハラジャン・サジャンさん(左)とバクタバハドゥール・ラジャリさん(右)

「自分としては、ネパール料理は家庭料理だと思っています」というマハラジャンさん。だからお店で出す料理は、「自分のお母さんが作っていたお母さんの料理を想いながら作った。お母さんの料理はおいしかった」とやさしい笑顔で付け加えてくれた。国は違えども、おふくろの味への想いは万国共通なのだとしみじみ思う。

香り米の最高峰「バスマティライス」の炊き立ての香りを楽しみつつ、山羊肉のカレーを堪能

ネパールの伝統的な美しい真鍮の鍋で提供されるバスマティライス450円。いわゆるインディカ米だが、その香りの高さと食感から米の貴公子(The prince of rice)といわれるほどの高級米だ。『バルピパル』では、香りも食感も楽しんでもらいたいと注文ごとに炊き上げる。炊きたてホカホカのバスマティライスが満喫できる。

真鍮の鍋を直接火にかけ、日本流の「赤子泣いても蓋とるな」とは違い、蓋を開けたまま丁寧にあくをすくいながら煮込むように炊く。あえて水を多めにしてお米の出汁が出たスープをほかの料理に使うことも。
真鍮の鍋を直接火にかけ、日本流の「赤子泣いても蓋とるな」とは違い、蓋を開けたまま丁寧にあくをすくいながら煮込むように炊く。あえて水を多めにしてお米の出汁が出たスープをほかの料理に使うことも。
木の蓋で閉じられたネパール伝統のお米を炊く美しいフォルムの真鍮の鍋。この鍋で2合炊ける。ネパールの家庭では、これよりも大きなものを使うのだそう。こちらはオーナーがネパールで作らせた特注品。
木の蓋で閉じられたネパール伝統のお米を炊く美しいフォルムの真鍮の鍋。この鍋で2合炊ける。ネパールの家庭では、これよりも大きなものを使うのだそう。こちらはオーナーがネパールで作らせた特注品。
真鍮の平たいしゃもじで混ぜると、バスマティライス特有の香りがフワッと立ち込めて食欲をそそる。
真鍮の平たいしゃもじで混ぜると、バスマティライス特有の香りがフワッと立ち込めて食欲をそそる。

このバスマティライスに、この日は山羊肉のスープカレー(カシコマス)920円を注文。羊ではなく、山羊の肉ということで野性的な味を想像していたが、意外にも羊肉よりクセがなく、臭みもない。さらさらとしたスパイシーなスープカレーの中で、ほろほろと柔らかくまろやかに煮込まれている。

「ネパール料理は、さらさらとしたカレーが多いです。辛さも各家庭で違って、すごく辛いのもあれば、そうでないものもあります。これは私の家の辛さです」とマハラジャンさん。日本でいえばちょうど中辛ぐらいか。筆者にはちょうどいい辛さであった。

チーズのシェーブルのような獣っぽい味を想像していたが、そこまでのワイルドさはなく、食べやすい。まろやかで、お腹にストンと落ちるスパイシーさ。ネパールのお母さん、ありがとう!
チーズのシェーブルのような獣っぽい味を想像していたが、そこまでのワイルドさはなく、食べやすい。まろやかで、お腹にストンと落ちるスパイシーさ。ネパールのお母さん、ありがとう!

水牛料理もおすすめ。噛みしめるほどにうま味があふれ出る水牛肉のチョエラが絶品!

タンドールで焼いた水牛肉をスパイスで和えた水牛肉のチョエラ950円。
タンドールで焼いた水牛肉をスパイスで和えた水牛肉のチョエラ950円。

日本ではあまりなじみがないものの、ネパールではポピュラーな水牛肉。チョエラはネワール族の料理で、水牛肉をタンドール(粘土製の壺型のオーブン)で焼いてたっぷりのスパイスで和えた噛みごたえのある1品。噛めば噛むほど、滋味豊かなうま味が口の中に広がる。

冷えたビールに合いそうだ。 『バルピパル』ではこのほかに、水牛肉のモモ(ネパール版水餃子のようなもの)S400円・M780円も楽しめる。オーナーのマハラジャンさんもおすすめの水牛料理、ぜひご賞味あれ。

住所:東京都品川区上大崎2-26-5 メグロード2F/営業時間:11:00~15:00・17:00~24:00/定休日:日/アクセス:JR・地下鉄目黒駅から徒歩1分

取材・文・撮影=京澤洋子(アート・サプライ)