村瀬秀信
ライター・エ本作家。アニメ版ムーミンしか知らない昭和生まれの44歳。気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている、『散歩の達人』の連載も読んでくださいね。

世界中で愛されたムーミン一家の世界が、昨年3月に埼玉県は飯能、宮沢湖の畔に出現した。
『ムーミンバレーパーク』。それはムーミンの物語の世界観を見事に再現した、まるでムーミン谷のような場所である。
日本におけるムーミンは本国フィンランド以上に人気が高いとも囁かれる誰もが知るキャラクターだ。子供向けのほのぼの世界観に愉快な仲間たち。しかしどうだ。アニメを少し見たぐらいの薄い記憶を掘り起こしてみると「カバじゃなくて妖精」「声は岸田今日子」「スナフキンは自由人」ぐらいで認識が止まってはいまいか。
この森に囲まれた湖畔の渓谷で一日過ごせば思い知る。日本人よ。ムーミンは深いぞ。我々はなんにもわかっていなかったのだ。

ムーミンの小説版は全9作品。そこには深~い物語がある

『ムーミンバレーパーク』は、原作者トーベ・ヤンソンの記した小説版の世界観に沿って作り出されたテーマパークだ。ムーミンファンであればご存じだろうが、この小説版はベースにこそ「たのしいムーミン一家と仲間たち」的なほのぼの世界があるものの、パステルカラーな世界だけでは終わらない。時に洪水などの自然災害に見舞われるわ、彗星が落っこちて世界が終わる恐怖、ムーミンパパが自身の威厳を保つために家族で灯台へ移住するなど、人生の艱難辛苦であり、寂しさや不安なんてものを前向きに乗り越え、生きるヒントを得ながら成長していく物語がそこにはあるのだ。

水浴び小屋

園内に入って一番最初に見えるのがムーミンパパがつくった水浴び小屋。泳いだり、釣りをしたり。

ストーリーの扉とストーリーガイド

園内に設置された「ストーリーの扉」では近辺にあるアトラクションや施設などにまつわるムーミンの物語を映像で紹介。ストーリーガイドは各所で配布!

海のオーケストラ号

若かりし頃のムーミンパパたちと一緒に出掛ける冒険の船旅。美しい映像と臨場感あふれるシアター。

リトルミイのプレイスポット

いたずら好きのリトルミイがムーミン屋敷に居候する契機のエピソードが、観客参加型で楽しめる。

ムーミン谷の食堂

おさびし山のハヤシライス1300円、緑の帽子のパスタ(和風ガーリック味)1200円などムーミンの世界観が楽しめるレストラン。

コケムス3F

コケムスとはフィンランド語で『体験』という意味。物語の様々な名場面を描いた体験展示「ムーミン谷の自然」は、本の中に入り込んだような世界が広がる。手を振るとニョロニョロが生えてくるコンテンツなどもあり、撮影も自由なのでバエな写真が撮り放題。

このパークは、一見すれば子供が楽しめるテーマパークである。森の中には小説のエピソードを元にした愉快なアトラクションがあり、「エンマの劇場」で観劇したり、大型アスレチックやジップラインアドベンチャーで湖を越えたり、アーケードゲームをクリアしてぬいぐるみをもらい、でっかいパンケーキを食べたりと、ひとつひとつを取り上げれば、わかりやすく楽しいエンタメがそこにはある。だが、俯瞰してみればこれらすべてがムーミンという物語の下に紡がれた一節であり、それらは連動して大きな世界観を作り上げていることがわかる。小説版ムーミンの世界をまったく知らなくとも十分楽しいだけでなく、大人が感銘を受けずにはいられない深い深い趣と、物語へのカギがあちこちに転がっている。

たとえば園内の主要スポット14カ所に設置された「ストーリーガイド」や、物語を再現する紙芝居小屋「ストーリーの扉」は、その導となる。そして「コケムス」には、作者トーベ・ヤンソンの人生と、ムーミンの作品をより深く知れる展示があり、登場人物の紹介を見るだけでも、むちゃくちゃ面白い。

さらに園内には隠れた小ネタやキャラが細かく潜んでいるのも見逃せない。何気なく座った長椅子に「おまえさん、あんまりだれかを崇拝したら、ホントの自由はえられないんだぜ」なんてスナフキンの名言が語りかけて来る世界。ああ、これぞムーミン谷。一日居たら大事なことをたくさん教わった。帰りに小説をまとめて買った。改めて知る。大人になって知るムーミンは、こんなにも面白い。

8m超えのムーミン谷の巨大ジオラマ

コケムスの2階から3階を貫く高さ8mに及ぶ巨大なムーミン谷のジオラマ。谷全体の位置関係がよくわかるので、じーっくりいろんな角度からのぞいてみよう。15分おきにムーミン谷のできごとや季節の移り変わりを体験できる。

コケムス2F

世界一のムーミン資料館ともいえる2階の施設は、ムーミンの世界観から作者トーベ・ヤンソンの人生まで、訪れた人が追体験をしながらムーミンの物語をより深く知ることができる。新聞に連載された4コマ漫画、登場人物の面白すぎる人物紹介はとくに必見! ここだけで1日消費できる。

エンマの劇場

ムーミンとその仲間たちによるライブエンターテインメントが繰り広げられるエンマの劇場では1日3回、オリジナルのストーリーが鑑賞できる。入場無料!

ヘムレンさんの遊園地

おさびし山の子供向けアスレチック。〝しずかなのが好きなヘムレンさん〞のストーリーを再現。

ヘムレンさんの遊園地のボート。ヘムレンさんが子供らのために遊園地を作ろうとした場面の再現。付近には原画と出典も。

スナフキンのテント

おさびし山エリアの果て。最後の地点にスナフキンがテントを張っている。ベンチにも要注目!

灯台

小説「ムーミンパパ海へ行く」に登場した灯台。家族から頼りにされてない気がしたムーミンパパが威厳を発揮できる場を求めて冒険に出たとか。

ポスティ

オリジナルのポストカードやレターセットを販売。手紙の投函もできるムーミン谷の郵便サービス。店内でスタンプも押せる。

アーケードゲーム

ボールをゴールへ導く「おさびし山チャレンジ」と、ハンマーで魚を飛ばす「トゥーティッキのフィッシング」の2種類。

パーク内ではお酒も飲める。さすがは大人の空間ムーミン谷。売店ではクラフトビール700円などのアルコールやホットドッグ、ポップコーンなども販売。

ムーミン谷の仲間たちが歩いてることも。園内にはムーミン谷の仲間たちがちょくちょく出没しているので、おっさんでも積極的に声を掛けて触れ合おう。

ムイックフォト

キャラクターと一緒に記念撮影ができる写真スタジオ。オリジナルムーミン台紙もカワイイ。1枚2000円~。

ムーミン屋敷

ムーミン谷のシンボルにして原作に忠実に再現されたムーミン一家の住処。貯蔵庫の地下室と1階のダイニングのほか、ガイドツアーで2階のパパとママの部屋、3階のムーミン&リトルミイの部屋も見学できる。

ムーミン谷の売店

『ムーミン谷の彗星』にも登場するムーミンたちが立ち寄った森の売店をモチーフにしたショップ。商品点数、売り場面積も園内イチ=世界最大級のムーミングッズの品揃え。大人もうれしいお酒に合うおみやげ、オリーブオイルサーディン1620円、魚肉ソーセージ270円、ドライオリーブ648円なども。

取材・文=村瀬秀信 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2020年2月号より

ムーミンバレーパーク
住所:埼玉県飯能市宮沢327-6/営業時間:10:00~20:00(入場は~19:00)/定休日:不定/アクセス:西武池袋線飯能駅北口から「メッツァ」行き直行バス13分の終点下車すぐ