アンテナショップツアーのスタート地点でもある『香川・愛媛せとうち旬彩館』
店内には所狭しと名産品が並び、愛媛県はオレンジ、香川県は緑と、看板や値札の色で商品の産地が見分けられるようになっている。2県がともにアンテナショップをはじめてから18年以上が経ち、常連も少なくない。近年は新橋から有楽町周辺のアンテナショップをめぐるツアーのスタート地点として、休日のオープンと同時に団体で来店するお客もいるという。
まずは香川県のご担当者大山さんにお話を聞く。「香川県民の多くは、自分の推しのうどん店があります」そう言いながら、うどん店の案内リストを手渡してくれる。推しのうどんを聞くと「地元に馴染みの店があり、ここでは手に入らないんです。でもこちらに並んでいるのも、美味しいですよ。どれもスーパーではなかなか手に入らない品ばかりです」と愛を全開にしてくる。さすが、うどん県だ。
ちりめん、しょうゆ豆、オリーブなどをご紹介いただき、名産はうどんだけにあらず!という気概が伝わってくる。
古くから塩が手に入りやすく、大豆や小麦などが採れることから醤油も名産。店長さんは、緊急事態宣言を経て店を再開したとき、飛ぶように売れたとしみじみ語る。「醤油をはじめ調味料は、東京ではうちでしか手に入らないような商品も多く、常連さんは暮らしの必需品を買いに来てくださっていると実感しました」。
買うべき醤油は?と尋ねたら、ヤマロク醤油さんの菊醤、鶴醤を紹介してくれた。「個人的に好きなんです。香り高くて、醤油のイメージが変わります」と店長さん。
お二人とも次々に自分の推しを教えてくれ、早くもなにを買おうか迷いはじめる。
観音寺のお菓子、観音寺饅頭(かんおんじまんじゅう)は見かけたその時が買うべきタイミング。地元民に「かんまん」と呼ばれ、親しまれていて、通販と観音寺市以外で手に入るのはこの店のみ。ふわっとした生地と甘さ控えめのきみ餡が優しいなどと、オススメポイントを聞いているうちに売れていき、手を伸ばす頃には残り一つとなっていた。
バトンタッチして、愛媛県の広報である三田さんに売り場をご案内いただく。私が酒とつまみを買うのが定番だと伝えると、練りものコーナーへ。「じゃこ天は愛媛県民に欠かせません。おつまみはもちろん、朝ごはんに焼いたり、おやつに食べたりします。地元で馴染みがあるのは、手押しのじゃこ天です」と三田さん。
宇和島田中の手押しじゃこ天は比較的高級品だそうで、もっと種類も豊富に揃えているのだそう。付け加えるように「寒い季節になったら、これをおでんに入れてください。すっごくいい出汁がでます」と店長さん。ナイスな連携プレーである。
愛媛県といえば、みかん。さまざまな柑橘が多く栽培されていて、ジュースやジャム、ドライフルーツなどで味わえる。
三田さんが推しているのは元祖キリン堂の温州みかんジャム。みかんをそのまま濃縮したような味わいで、侮るとおいしすぎて痛い目にあうのだという。愛媛県のジャムは個人の農家さんから大手まで種類豊富。必然的に評判のいいものしか残らない状況で、元祖キリン堂さんはロングセラー。三田さんも店長さんも「ファンが根強い」と口を揃える。
銘酒コーナーも充実していて、香川県の名産であるオリーブを使用した日本酒や愛媛県の名産のみかんのリキュールなど、特色のある酒も用意されていた。
カップ酒もたくさん!「外に飲みに行けず、みんなで集まって酒瓶をあける機会も減りました。最近になって、ご自宅で1人で飲む方に向けてカップ酒を増やしたんです」と店長さん。ありがてぇ。
今回の商品選びは、普段の2倍難航し、やはり買いすぎた。
さて、香川県、愛媛県、それぞれの1000円セットは発表する!
私の香川県1000円セット
さぬきビール スーパーアルト 300円
おつまみとっと 500円
しょうゆ豆 200円
しめて1000円ぴったり!
おつまみとっとに書かれた「ビールがどうにもとまらない」に惹かれて、迷わずさぬきビールを手に取った。
おつまみとっとは、香川名物の骨付鳥をおつまみサイズにした飲んべえのための商品だ。そのまま食べてもいいが湯煎などで温めて、ビールをプシュッとやるのが至高。さぬきビールスーパーアルトは、ロースト麦芽を使用し、苦味とコクのある味わい。塩味濃いめでスパイシーなおつまみとっとにマッチする。
あいだに挟みたいのが、しょうゆ豆。乾燥そら豆を醤油だれに漬け込んだもので、煮豆のように煮ておらず、甘さも控えめ。醤油と砂糖と唐辛子を混ぜ込んだたれの風味は、懐かしくて素朴だ。香ばしいビールと醤油も相性抜群。香川県の名産揃いのビールセットになった。
私の愛媛県1000円セット
石鎚 純米吟醸 緑ラベル 364円
伊予みそ 100円
六時屋タルト 121円
おつまみじゃこ天 200円
魚肉ソーセージ150円
しめて935円!愛媛県のセットは、店長さんが「美味しさが違う」教えてくれた純米吟醸のカップ酒を主軸に選んだ。タルトのデザート付きだ。
おつまみじゃこ天はパッケージに日本酒のイラストが描かれた、おあつらえ向き。プリッとした歯ごたえで、噛むごとに口の中にじゃこのうまみが広がる。日本酒で追いかければ、魚と米のうまみが出会いに何度でも乾杯したくなる。
魚肉ソーセージは、商品名に「昭和の」とついていて、日本で初めて魚肉ソーセージを販売したメーカーのもの。鯵がたっぷり使われており、普段食べているギョニソよりも弾力があり、鯵の存在感がある。なるほど、これは日本酒が似合う魚肉ソーセージだ。
デザートにはタルトを。愛媛県では、餡をスポンジ生地でのの字に巻いたタルトが複数のお菓子屋から出ていて、県民で好みが分かれるのだそうだ。
全国的には一六タルトが有名だが、六時屋派も多数。スポンジ生地がきめ細かく、ほんのりゆず香る餡はやわらかで奥ゆかしい。
2000円で香川県と愛媛県を旅できた
たったの2000円で香川県と愛媛県を旅できた。おつまみセット対決!とタイトルで煽っておきながら、うめ〜!といって食べ飲み、わかっていたが、どちらが負けということはなかった。
同店は何度も通っているので、他に買ったものはごまんとある。うどんに天ぷら、みかんに、お菓子の母恵夢。10〜11月ごろに出たばかり新もののオリーブも食べたいな。
あぁ、また新橋駅をおりたら吸い込まれてしまいそうだ。
はみ出し購入品たち
取材・文・撮影=福井晶