JAGUAR(ジャガー)さん
1985年からスタートした千葉テレビ『ハロー・ジャガー』でお茶の間のスターとなり、2005年、千葉テレビのご当地ソング「ファイト! ファイト! ちば!」で再び脚光を浴びたジャガー星人。2013年、「ファイト! いちかわ!」で千葉全土を席巻。2019年には千葉の永遠のライバル県・埼玉が舞台の映画『翔んで埼玉』にも登場! 2021年10月4日、ジャガー星に帰還したことが発表された。
納税でジャガーショーいかがでショー
宇宙船ジャガー号は、本八幡駅からほど近くに停留していた。
音もなく開く自動扉。スペイシーな漆黒の通路を進むと、まばゆいライトが点滅する特攻感あふれる乗り物が2台、そのかたわらにはメタルな男が。
「あ……ジャガーさん?」と声をかけそうになったところ、背後から神々しい彗星のような気配が。
「フッ。あれはジャガーのクローンでございマス。ジャガーが『動くなヨ』と命じているので、じっとしてますけどネ。ごあいさつが遅れました。ハロォ~! ジャガーだゼ~ぃ。みんなァ、元気か~イ」
夏空を切り裂く稲妻のようなミントヘア、本物ジャガーのお出ましだ!
「この乗り物は、『ジャガウェイ』と『ジャガーバイク』。夜でも朝でもお昼間でも、ジャガーはこれに乗って、市川上空を空中散歩するのサ。とくに海の上を飛ぶ時なんか、最高だゼ~」
――空を飛べる乗り物なんですね。
「今、我々がいるのは宇宙船。だから夜には、これも飛んで鋸山の洞窟に格納するのサ。ほらこの通り、富津警察署から、ジャガー号の車庫証明もいただいちゃったのサ!」
――こ、これは確かに警察署のサイン入り。『車名:ジャガー号 型式:UCHUSEN型 車台番号:JAGUAR』の証明申請書ではありませんか! 国家権力も思いのままのジャガーさんですが、ジャガー星から本八幡に上陸されたのはいつでしょう?
「地球時間で言うところの、約30年ほど前のことサ。以来すっかり千葉が大好きになってネ。今、市川市にふるさと納税をしたら、お礼の品にサイン入りのジャガーTシャツや、ジャガーショーがメニューにあるんだゼ~」
――ふるさと納税でジャガーショー?
「こちらは高価商品でございマスヨ。90分で100万円のステージなのサ」
――ひゃくまん、えん。
「ところがちゃんと希望者がいらっしゃって、前回は30人のお客様が集まったゼ。50人でも100人でも友達誘って、ジャガーショーに来ればみんなハッピーだぜ~ィ」
もうジャガーは玄米とお魚ばっかりサ
――今や、市川と書いてジャガーと読む。そんな存在感のジャガーさんですが、お気に入りのスポットは?
「そぉネ。一番よく行くのは近所の『ドン・キホーテ』。下にでっかい魚屋があってサ、週2で通っちゃうよネ。『いらっしゃーい、いらっしゃいっ。ドン・キホーテのメガ盛りオススメですよォ~』ってスピーカーから流れてるのは、じつはジャガーの声でございマス……」
――呼び込みまで? ジャガーさんはお魚が好きなんですね。
「もう、ジャガーは玄米とお魚ばっかりサ。千葉の魚は全部美味しいヨ。でも一番の好物はカツオの刺し身。あと珍しいものだとマグロの巨大なカマ。ふつうの包丁なんかじゃさばけないから、木工用切断機でダダダダーって。それはもう、すんごい迫力なのサ~」
――切断機をお持ちで?
「ジャガー星のホームセンターには何だって売ってるんだゼ。あ、でも5本指の靴下だけは、地球でしか買えない貴重な品物サ」
――5本指の靴下ですか。
「ジャガーは5本指に分かれている靴下しか履かないのサ。なぜならジャガーのスニーカーは5本指だから。素足みたいにすごく楽ちん。だからほら、ジャガーの歩き方はちょっと一般の人とは違って、ぴーんとしてるんだゼ」
――その靴下はどちらでお買いに?
「本八幡駅北にある『パティオ』の100円ショップ『シルク』。あすこ、全部100円でとおっても楽しいよ~。それでもって、買い物帰りには、喫茶店でお茶してサァ。コーヒーにケーキもつけちゃうゼ~。ジャガー、甘いものは別に好きじゃないんだけどサ」
――お好きじゃないんですね(笑)。ちなみに、5本指のお気に入りスニーカーで散歩するのはどこ?
「春は桜がきれいな里見公園。夏は法華経寺の参道が素晴らしいし、近くに何十年も通ってるレコード店『イトーヤ』もあるんだゼ。CDが売れなくて、今はほぼ電器屋さんだけどサ。あとは江戸川。昔は、毎日通って、土手でガンガン音楽聴いたり、泳いだり。それから投網もしたっけネ」
――投網……!?
「江戸川っていっぱいお魚捕れるのサ。えいやーって網をほおり投げると、大きなボラ、コノシロにカワエビ、それからハゼがかかるんだぜ。ジャガーは水が好きだから、スキューバもシュノーケリングも得意なのサ」
みうらじゅんを泣かせた”ジャガーの復活”
――まさに陸・海・空を制する無敵のジャガーさんですが、「ファイト!いちかわ!」の一節に『♪チーバくん!君が矢切の渡しに乗るとサ ヤバいんですよ!(中略)ジュンサイ池でサ 泳いでいなさいヨォ〜』などと、所々でチーバくんにプレッシャーをかけておられます。もしかして、ライバ……。
「な、ライバルなんかじゃございマセンヨ! ただ現場でネ、よく一緒になるのサ……。チーバくん、ふなっしー、うなりくん。そしてジャガー」
――よき仕事仲間なんですね。安心しました。この星ではアーティストのお友達も多いそうですが?
「氣志團の綾小路翔氏に、ドラゴンアッシュのKenKen氏。みうらじゅん氏なんかは30年くらいの付き合いだゼ。ジャガー、みうら氏に20年前に手紙を書いたことがあってネ。その手紙を彼は今でも大事に持っているってサ……」
――どんな内容だったんですか?
「ワァ~オ~! それ聞いちゃう?『ジャガーはもう曲作りもライブも、音楽活動を全部やめました。お世話になりました』ってネ。ショックを受けたって、彼は言ってたっけ」
――え! スーパージャガー星人が、音楽をやめていた時期があった……?
「あの頃、ジャガーは何もかもやる気が無くなっちゃってサ。10年間、ずうっと旅をしていたよネ」
――長い旅です。それはどちらに。
「好きなことしかしないって決めて、千葉の海は全部行ったゼ。勝浦、銚子、館山、そして白浜。高級ホテルに泊まってサ、毎日美味しいビュッフェを食べてネ。そしたらある日、千葉テレビから連絡が来たんだよ。局主催のイベントで、毎回有名人が呼ばれて『ファイト、ファイト、千葉!』ってただ叫ぶお仕事……サ」
――それをおやりに?
「やらなかったネ。ジャガー、そんなダサいことはどうしてもイヤで……。その代わり、千葉テレビのオリジナル曲とPVを作って送ったのサ。キャンペーンで使ってほしいって。それが『ファイト! ファイト! ちば!』なのサ~」
――「ダサいのイヤ」という情熱が、音楽魂に再び火をつけた、と!
「イェイ。そしたら、高円寺の居酒屋で、みうらじゅん氏がたまたま『ファイト! ファイト! ちば!』を聴いていて、涙が出たって。『ジャガーさん、復活したんだ』って。いまだにジャガーにその話をしてくれるんだゼ」
――胸熱なエピソードです。そんなジャガーさんの今後の夢は?
「夢っていうかサ、ずっとできたらいいなァって思ってたことが、もうすぐ実現しちゃうんだゼ~ぃ! 2019年の夏は『JAGUARミュージアム』の開催に、新曲『華麗なるJAGUARカレー』の発売。そして秋にはジャガーが大好きなカボチャのハロウィーンも忙しくなっちゃいそうだゼ~ぃ。
地球ってつくづくおもしろい星サ。願ってると、不思議と叶っちゃうんだ」
ちなみにミュージアムには、ジャガークローンに、ジャガー号操縦席・ジャガーチェアもお目見えだ。
「一歩足を踏み込めば、もう地球には戻れないかもねェ~! イエ~イ!!」
取材・文=さくらいよしえ 撮影=三浦孝明
『散歩の達人』2019年8月号より