高架下で育まれる新たな生態系
2019年、京急本線大森町駅〜梅屋敷駅間の高架下にカフェやシェアオフィス、工場などが同居する「梅森プラットフォーム」が開業。ものづくり複合施設と銘打つきっかけを作ったのは、並々ならぬ地元愛を持つ茨田禎之(ばらだ・よしゆき)さんだ。
エリアマネジメントと飲食業の「仙六屋」代表、不動産業者や建築家、デザイナーからなる「@カマタ」の共同代表を務める茨田さんは、高架下の未来予想図を「勝手に」本にまとめ、京浜急行電鉄(以下、京急)に提案。京急の思いと見事共鳴した。「まちを支える町工場で働く人の姿や技術力が見えにくかった。そこでさまざまな分野のクリエイターを呼び込み、今までにないエネルギーを生み出したいと。とはいえ、こんなチャレンジングな提案を受け入れてもらえるとは(笑)」と茨田さん。
地域のものづくりの新たなプロセス構築とアウトプットに向けた試みとして、町工場とクリエイターのコラボレーション企画を実施。催し物を通して地域の人々と交流できるようオープンスペースを設けた。「さまざまな年齢や職業の人たちが集まって、新たな生態系を形成できれば」と茨田さん。京急の島本光知子さんは「ここには町工場を中心として発展した大田区の生業や文化が息づいています。散歩しながらぜひ感じてほしいです」と話す。新名所の“梅森”で人々のエネルギーを肌で感じよう。
工房も併設! クリエイターの知が集う場『KOCA』
創業支援機能を持つシェアオフィスは創作に集中・没頭しやすい無機質な内装。14個室、20席。フリーアドレス利用(平日限定)は2時間550円。併設のファクトリー(原則月曜・一般利用1日2200円)には3Dプリンターやレーザーカッターなどの機械が充実。
『KOCA』店舗詳細
甘味処の味と思い出を今に残す『仙六屋』
90年以上梅屋敷で愛されていた「福田屋」が2019年に閉店。小学生の頃から通っていた『仙六屋』店主の茨田さんは名物のクリームモナカを継承。「モナカはこの店と地域の人との接点。みんなの思い出がつまった味を大切にしていきます」。
『仙六屋』店舗詳細
撮影=鈴木愛子 取材・文=川端美穂 (きいろ舎)
『散歩の達人』2021年10月号より