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Profile:原亜樹子(原亜樹子)
菓子文化研究家。米国高校へ留学・卒業後、東京外国語大学へ進学し、文化人類学ゼミで食を探求。卒業後は特許庁へ入庁するも、6年目に退職し、食に関する執筆活動をスタート。2006年より生活情報サイト「All About」で和菓子ガイドを務めるほか、アメリカの食に関する著書多数。
和菓子が食べきれないことはありませんか。お土産でいただいた数十個の温泉饅頭(まんじゅう)は固くなり、最中は湿気てしんなり、街の和菓子店で欲張って買い込んだ大福はカチカチ。大きなカステラや大棹の羊羹を前に途方にくれる。和菓子が多く集まりがちな我が家ではよくある光景ですが、どの和菓子も無駄にしたくない。最後までおいしく食べきりたい。そんなところから生まれた、残った和菓子の食べきりレシピを少しずつご紹介していきます。まずは饅頭編。食べきれなくて困ったときも、普通の食べ方に飽きたときも、お試しください。
和菓子が食べきれないことはありませんか。お土産でいただいた数十個の温泉饅頭(まんじゅう)は固くなり、最中は湿気てしんなり、街の和菓子店で欲張って買い込んだ大福はカチカチ。大きなカステラや大棹の羊羹を前に途方にくれる。和菓子が多く集まりがちな我が家ではよくある光景ですが、どの和菓子も無駄にしたくない。最後までおいしく食べきりたい。そんな気持ちでいつも楽しんでいる、残った和菓子の食べきりレシピを少しずつご紹介していきます。第二回目はカステラ編。食べきれなくて困ったときも、いつもの食べ方に飽きたときも、お試しください。

最中でカフェオレ汁粉

最中をスタンバイ。最中の表面をオーブントースターで軽く炙るのもおすすめ。
最中をスタンバイ。最中の表面をオーブントースターで軽く炙るのもおすすめ。

懐中汁粉をご存じだろうか。乾燥した餡を入れた最中で、熱湯を注げば即席の汁粉ができるというものだ。私はこれに目がないので、最中が余るとこれに倣い、まず汁粉にする。

熱湯やホットミルクを注ぐのもよいけれど、意外に合うのがコーヒーだ。

作り方は簡単だ。材料は最中とコーヒー、それから牛乳。

最中は、余裕があれば表面をオーブントースターで軽く炙ると、焼き餅のような香ばしさが楽しめる。

コーヒーが多いと味がぼやけるので、最初は少なめに注ぎ、味を見て足すのがおすすめだ。かといってあまり少ないとすぐに冷めてしまうので、カップ半分、80ml程度を目安にしたい。

 

熱々のコーヒーに最中を浸す。
熱々のコーヒーに最中を浸す。

材料が揃ったら、あとは淹れたてのコーヒーに最中を浸すだけだ。懐中汁粉は中の粉状の餡を溶かすため、皮を割ってから熱々の湯を注ぐ必要があるけれど、最中の場合はそのままでおいしい状態の餡が詰まっているので、皮は割っても割らなくてもよいし、液体の温度や注ぎ方に気を遣わなくても問題ない。

数分ふやかしてから混ぜて餡を溶かす。皮は崩しすぎない。餡は塊が少し残っていてもおいしい。
数分ふやかしてから混ぜて餡を溶かす。皮は崩しすぎない。餡は塊が少し残っていてもおいしい。

皮を崩し、餡をコーヒーと混ぜながら食べる。お麩のようにとろけた皮は餅とはまた違うおいしさがある。

温めた牛乳を大さじ2ほど加える。冷たいものでも可。
温めた牛乳を大さじ2ほど加える。冷たいものでも可。

シンプルなコーヒー汁粉も悪くないけれど、おすすめは温めたミルクを加えるカフェオレ汁粉だ。コーヒーの苦みも餡の甘さもまろやかになる。

あんバター最中

有塩バターを最中よりひとまわり大きく切る。
有塩バターを最中よりひとまわり大きく切る。

あんバターサンドという食べ物があるけれど、私のおすすめはあんバター最中だ。あんバター最中は、パンのようなボリュームはなく、薄く香ばしい最中の皮があるだけなので、お腹がいっぱいのときでも食べたくなる。サンド以上にシンプルなので、餡とバターにより集中できる。

作り方はシンプルだ。

まず、最中皮2枚の間にナイフを差し入れて、そっと最中を開く。

次に有塩バターを0.5cmほどの厚みに切る。最中よりひとまわり大きいくらいがいい。

有塩バターを使う。
有塩バターを使う。

バターを最中の間に挟めばできあがり。塩の効いたコクのあるバターが間に入るだけで印象ががらりと変わる。時間が経ち、食感も味もぼやけた最中でも、バターのフレッシュ感のおかげで花開くように輝きを取り戻す。

私はこのために最中を買いに走ることもある。残った最中の楽しみ方というよりも、むしろメインの楽しみ方だ。

おつまみにもいい。
おつまみにもいい。

アイスクリームサンド最中

湿気た最中は崩れやすいので半分に割る際は慎重に。
湿気た最中は崩れやすいので半分に割る際は慎重に。

最中をそのままラップで包み、冷凍室で冷やせば即席の小豆アイスになる。それではいかにも余り物を凍らせた感じで面白くないので、ひと工夫して、アイスクリームを挟んでみよう。

まず最中皮2枚の間にナイフを差し入れて最中を開く。湿気た最中はボロボロ崩れてくるので慎重に進めよう。指先で押さえると皮が指にはりつくので、ラップでおさえるのがおすすめだ。

無事に開いたら、片面にきなこをたっぷりのせる。

好みのアイスクリームをのせる。
好みのアイスクリームをのせる。

その上に好みのアイスクリームをのせる。今回はミニサイズの抹茶味のカップアイスを水平に厚み1.5cmにスライスしたものを使った。もう1枚の皮をのせたらラップで包み、しっかり固まるまで冷凍室へ。

できあがり。
できあがり。

食べたいときに取り出してナイフとフォークを添えて食べる。

きなこをプラス。
きなこをプラス。

食べる際、好みできなこをかけるのもおすすめ。

作りたてのパリッとした最中が好まれる一方で、時間が経って皮がしんなりとしたものを「饅頭のようだ」と喜ぶ人もいる。江戸時代のガイドブックのような『江戸買物独案内(えどかいものひとりあんない)』(文政7年(1824)刊)に載る最中饅頭は、現在の最中の原型とされるので、ある意味饅頭のような位置づけなのかもしれない。

それでもせっかく香ばしく焼いた最中皮。本来の香りが残るうちに、おいしく食べきりたいものだ。

文・撮影=原亜樹子(菓子文化研究家)