最中でカフェオレ汁粉
懐中汁粉をご存じだろうか。乾燥した餡を入れた最中で、熱湯を注げば即席の汁粉ができるというものだ。私はこれに目がないので、最中が余るとこれに倣い、まず汁粉にする。
熱湯やホットミルクを注ぐのもよいけれど、意外に合うのがコーヒーだ。
作り方は簡単だ。材料は最中とコーヒー、それから牛乳。
最中は、余裕があれば表面をオーブントースターで軽く炙ると、焼き餅のような香ばしさが楽しめる。
コーヒーが多いと味がぼやけるので、最初は少なめに注ぎ、味を見て足すのがおすすめだ。かといってあまり少ないとすぐに冷めてしまうので、カップ半分、80ml程度を目安にしたい。
材料が揃ったら、あとは淹れたてのコーヒーに最中を浸すだけだ。懐中汁粉は中の粉状の餡を溶かすため、皮を割ってから熱々の湯を注ぐ必要があるけれど、最中の場合はそのままでおいしい状態の餡が詰まっているので、皮は割っても割らなくてもよいし、液体の温度や注ぎ方に気を遣わなくても問題ない。
皮を崩し、餡をコーヒーと混ぜながら食べる。お麩のようにとろけた皮は餅とはまた違うおいしさがある。
シンプルなコーヒー汁粉も悪くないけれど、おすすめは温めたミルクを加えるカフェオレ汁粉だ。コーヒーの苦みも餡の甘さもまろやかになる。
あんバター最中
あんバターサンドという食べ物があるけれど、私のおすすめはあんバター最中だ。あんバター最中は、パンのようなボリュームはなく、薄く香ばしい最中の皮があるだけなので、お腹がいっぱいのときでも食べたくなる。サンド以上にシンプルなので、餡とバターにより集中できる。
作り方はシンプルだ。
まず、最中皮2枚の間にナイフを差し入れて、そっと最中を開く。
次に有塩バターを0.5cmほどの厚みに切る。最中よりひとまわり大きいくらいがいい。
バターを最中の間に挟めばできあがり。塩の効いたコクのあるバターが間に入るだけで印象ががらりと変わる。時間が経ち、食感も味もぼやけた最中でも、バターのフレッシュ感のおかげで花開くように輝きを取り戻す。
私はこのために最中を買いに走ることもある。残った最中の楽しみ方というよりも、むしろメインの楽しみ方だ。
アイスクリームサンド最中
最中をそのままラップで包み、冷凍室で冷やせば即席の小豆アイスになる。それではいかにも余り物を凍らせた感じで面白くないので、ひと工夫して、アイスクリームを挟んでみよう。
まず最中皮2枚の間にナイフを差し入れて最中を開く。湿気た最中はボロボロ崩れてくるので慎重に進めよう。指先で押さえると皮が指にはりつくので、ラップでおさえるのがおすすめだ。
無事に開いたら、片面にきなこをたっぷりのせる。
その上に好みのアイスクリームをのせる。今回はミニサイズの抹茶味のカップアイスを水平に厚み1.5cmにスライスしたものを使った。もう1枚の皮をのせたらラップで包み、しっかり固まるまで冷凍室へ。
食べたいときに取り出してナイフとフォークを添えて食べる。
食べる際、好みできなこをかけるのもおすすめ。
作りたてのパリッとした最中が好まれる一方で、時間が経って皮がしんなりとしたものを「饅頭のようだ」と喜ぶ人もいる。江戸時代のガイドブックのような『江戸買物独案内(えどかいものひとりあんない)』(文政7年(1824)刊)に載る最中饅頭は、現在の最中の原型とされるので、ある意味饅頭のような位置づけなのかもしれない。
それでもせっかく香ばしく焼いた最中皮。本来の香りが残るうちに、おいしく食べきりたいものだ。
文・撮影=原亜樹子(菓子文化研究家)