後日、明るいうちに再び同じ場所を通りがかったところ、その正体は「安全運転」というのぼりを持ったゴリラの像であることが判明した(私の驚きを考えれば、逆に安全運転に悪影響を及ぼしそうな気もする)。

怖い生物の正体は、かわいらしい子ゴリラであった(喜多見・2021年)
怖い生物の正体は、かわいらしい子ゴリラであった(喜多見・2021年)
反対側から見ると、車を手に持った親ゴリラが(喜多見・2021年)
反対側から見ると、車を手に持った親ゴリラが(喜多見・2021年)

しかもこれは親ゴリラの肩に乗った子ゴリラであり、ビルの反対側から見れば、ねじり鉢巻きに咥えタバコの親ゴリラの顔を見ることができる。

数ある動物の中でゴリラが選ばれるわけ

街のビルの中には、この喜多見のビルのように、外壁に人形をあしらって人目を惹くものがある。そのモチーフを見てみると、圧倒的にゴリラ率が高いように思う。

ビルに巨大な人形を設置するとなった時、特撮映画に登場するようなヒーローや怪獣では、版権上問題となる可能性がある。その点、巨大ゴリラであればその心配はない。ただしそこでゾウやライオンではなくゴリラが選ばれるのは、むろん映画「キングコング」の影響ではあろうが。

こうしたゴリラビルにも、いくつかのパターンがある。銀座・すずらん通り沿いにあるビルには、1階から2階にかけての外壁をよじ登るゴリラがいる。

控え目な感じに壁をよじ登るゴリラだが、なぜここにいるのかはわからない(銀座・2021年)
控え目な感じに壁をよじ登るゴリラだが、なぜここにいるのかはわからない(銀座・2021年)

ビル自体は料理店やギャラリーなどの入る商業ビルで、特にゴリラとの関係はなさそうだ。歌舞伎町でも、星条旗柄のパンツを穿いたゴリラがピースサインをしている。

さほど巨大ではないが、鉄柱を曲げるパワーはあるらしい(歌舞伎町・2021年)
さほど巨大ではないが、鉄柱を曲げるパワーはあるらしい(歌舞伎町・2021年)

このような外壁よじ登り型のゴリラは、強度の関係もあるだろうが、サイズ的には普通のゴリラより少し大きいくらいで巨大と呼ぶほどではない。

屋上の巨大なゴリラ

一方で、ビルの屋上にいるタイプのゴリラは、概して巨大である。このようなビルは遠くからでもよく目立つ。藤沢駅北口のパチンコ店の屋上には、両手にドル箱を掲げた巨大ゴリラが微笑んでいる。

景気が良さそうな感じの屋上巨大ゴリラ(藤沢・2021年)
景気が良さそうな感じの屋上巨大ゴリラ(藤沢・2021年)

北砂町の巨大ゴリラも含め、巨大ゴリラを屋上に設置するビルは、パチンコ店が多い印象だ。

ゴリラとパチンコ店は相性が良いのだろうか(北砂町・2021年)
ゴリラとパチンコ店は相性が良いのだろうか(北砂町・2021年)

最初に紹介した喜多見の親子ゴリラもなかなかの大きさなのだが、巨大ゴリラという点においてとりわけ抜きんでているのが、三軒茶屋のゴリラではないだろうか。

三軒茶屋で有名なゴリラ。女の子を見つめる目が優しい(三軒茶屋・2020年)
三軒茶屋で有名なゴリラ。女の子を見つめる目が優しい(三軒茶屋・2020年)

近隣住民には「ゴリラビル」として親しまれているこのビル、屋上から超巨大なゴリラが手を伸ばしている。手のひらにはランドセルを背負った少女が座っており、物語を感じさせるゴリラだ。

ゴリラという生き物のイメージとは

こうしてゴリラビルを見てみると、なぜモチーフにゴリラが選ばれるのかが何となく分かってきた。ゴリラという生き物は怖さを感じさせず、どことなくユーモラスなのである。巨大なゴリラのもたらすイメージは「恐怖」ではなく「親しみ」だ(暗闇で目だけが光るというような特殊な場合を除き)。設置する側も、目立たせたいという意図と、近隣住民に親しまれたいという思いを込めて、ゴリラというモチーフを選んだものと思われる。

東京に限らず、全国にもこのようなゴリラビルは多数あると聞く。いずれ「ゴリラビル巡り」をしてみたいというのが、目下の私の願望である。

イラスト・文・撮影=オギリマサホ

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