1階では、高級筆記具の世界を堪能
『カランダッシュ 銀座ブティック』があるのは、銀座一丁目の駅からすぐ近く。店舗は2階建てで、1階はボールペンや万年筆を取り扱うフロア、2階が画材を扱うフロア。1915年にスイス・ジュネーブの鉛筆工場としてスタートしたという『カランダッシュ』の世界を、この1店で楽しむことができる。
まず目につくのは、入り口に掲げられたこのディスプレイ! 実はこれ、『カランダッシュ』の代表的ボールペン「849」の実物を使ったもの。
握りやすい六軸となめらかな書き心地、シンプルなデザインながら遊び心のあるカラーバリエーションで人気の「849」。近年ではいろいろなコラボレーションモデルも発売され、コレクションする楽しみも。
2020年からここ『カランダッシュ 銀座ブティック』で始まった新たなサービスが、『849カランダッシュ+me』。人気の「849」を自分でカスタマイズできるというサービスだ。メッセージも刻印できるとのことで、まさに「自分だけの1本」を作りあげることができる。文房具好きや「849」コレクターにはたまらないサービスだが、例えば好きなキャラクターなど「推し」のイメージに合わせた1本を作って……というのもいいかも!?
店の奥では、その他の万年筆やボールペンも販売。例えば時計の世界ではよく知られる“SWISS MADE”という言葉のブランド力だが、それはスイス製の製品に息づく技術力や品質の高さゆえ。もちろん、『カランダッシュ』の筆記具にもそれらは当てはまる。
また、壁に陳列されたもののなかには貴重な限定アイテムや、かなり高価な品も。見ているだけでも面白い。
2階では、めくるめく色彩と画材の奥深さを楽しもう
さて、続いては2階へ。こちらでは『カランダッシュ』の手掛ける画材、ほぼ全ての商品が揃うという。鉛筆、水彩色鉛筆、パステル……ずらりと並んだ色の洪水に、思わず圧倒されてしまう光景。「本格的に絵を描く人向けなのでは?」とひるむことなかれ、取り扱っている商品も、プロユースの画材から初心者&子どもでも使えるものまで幅広い。
「プロ用の高い画材と普通の画材、どう違うの?」と思ったことはないだろうか。その答えに回答してくれたのが、当日店内を案内してくれた「カランダッシュ・ジャパン」の竹内さん。
噛み砕いて説明すると、画材の発色の良さはそのメーカーが持っている「顔料の種類の多さ&それらの質の良さ」に比例する。顔料を作るのはとても大変でお金がかかるので、いい画材は当然高級になる。「じゃあ混ぜて色を作れば良くない?」と思うかもしれないが、実は顔料は混ぜれば混ぜるほど色が濁ってしまう。そのため、プロ用の画材は価格もそれなりだし、混ぜなくてもすむよう、あらかじめたくさんの色味が揃えられているというわけだ。
「発色の良さ」と言われてもピンとこない人は、2階には全ての画材を自由に試すことができる場所があるので、ぜひ試してみてほしい。
スルスルと描けるオイルパステル「ネオパステル」、ワックスパステルの「ネオカラーI」、水溶性パステルの「ネオカラーII」などなど……何気なく目の前にある紙に描きつけると、その鮮やかさにまずびっくり。そして、水溶性のものを筆でなぞってみて二度びっくり! 自分が子どもの頃や学生時代に使っていた色鉛筆やパステル、絵の具とは、こんなにも発色が違うのかと愕然とする。特に水溶性パステルは、一度使ってみると衝撃を受けるのではないだろうか?
ワックスパステルは金属やガラス、陶器などにも使えるので、例えばこうやって植木鉢のリメイクなどにも使うことができる。最初に思っていた「プロ用画材なんて使いこなせそうもないし……」という気持ちは、色々と試すうちに「なんだか面白そうかも!?」に。すっかり欲しくなってしまった。
中には、普段は見かけないような画材も。「これ、面白いんですよ」と竹内さんが教えてくれたのは「グラフキューブ」という黒鉛、要は鉛筆の芯の部分だけをスティック状に固めたもの。木炭デッサン的に使える製品なのだが、この「グラフキューブ」にも水溶性のものが。一見どれも鉛筆の黒なのに、それぞれ水を含んだ筆でなぞると赤、緑、青のニュアンスを含んだ黒であることがわかる。これを使って何を描くか、考えるだけでも想像が広がっていく。
「前はよく通っているけれど、画材を売っているのは知らなかった……というお客様も多いかもしれません。ぜひ気軽に足を運んでいただいて、いろいろと試してもらえればと思います」と店長の棒星(ぼうぼし)充広さん。
おうち時間が長くなる今日このごろ。大人ならではのアイテムを使って、何かを描いたり作ったり、というのを楽しんでみてはいかがだろうか。
構成=フリート 取材・文・撮影=川口有紀