濃厚なココナッツカレーのマイルドな味わい
神田小川町にある『チャントーヤココナッツカリー』。14種類のレギュラーメニューと季節限定メニューがそろい、ココナッツカレーの魅力を存分に味わえる。店長の齋藤梨花さんに聞けば、ココナッツカレーが大好きなオーナーの趣味が高じてこの店ができたそう。
スプーンですくってみて、まず感じたのはチーズの量の多さ。たっぷりあって期待感が高まる。
ごはんと一緒に食べてみれば、マイルドな辛さでクセになる味。コクのあるとろりとしたチーズとの相性も抜群。ナスはとろとろ、チキンはしっとり。トマトを崩して食べるとほんのり酸味が広がりまたおいしい。それぞれの食材がお互いのよさを引き立てあって、頬がゆるみっぱなし。
このチキンとナスとトマトの焼チーズカリーは人気メニューなんだとか。
お疲れ気味のときは野菜カリーで元気をもらおう。とろとろのナス、歯ごたえの残るピーマン、コロンとしたオクラ、くたっとやわらかなキャベツ、ほんのり酸っぱくジューシーなトマト。
どれもしっかり煮込まれているけれど、それぞれの味と食感がちゃんといきている。具材の味わいがココナッツの風味とマッチして口の中は幸せでいっぱい。
ゆるりとした空間で、心も体も南国気分
『チャントーヤココナッツカリー』が店を構えるのは神田小川町。大通りはにぎやかだけど、わき道に入ると静かな場所も多いエリアだ。この店も明大通りと本郷通りをつなぐ駿河台道灌通りから1本入った場所にある。
ひときわスタイリッシュなのに街の風景によくなじむ外観で、中に入ればウッディでゆったりとした空間が広がっている。店内は海の家をイメージしたそう。
都心のせわしない時間とは切り離され、一息つけるスポットだ。
謎めいた店の名は「チャントー」と「トーヤさん」から?
“チャントーヤ”という不思議な言葉の響き。いったい何語だろう。
「実は何語でもないんです。オーナーのお父さんがカレー好きな人だったそうで、その人のニックネームが“チャントー”。それに、この店の初代の店長でレシピの考案者だったのが“トーヤさん”。おふたりの名前から『チャントーヤココナッツカリー』という店名にしたと聞いています」
「でもトーヤさんはどこの国の人だったのか……。もう日本にはいないらしくて。詳しいことはちょっとわからないんです、ごめんなさい」と齋藤さん。
取材に訪れたのは平日の午後3時すぎ。入れ替わり立ちかわりお客さんがやってきて途切れない。常連さんらしき人はお店のスタッフと一言二言ほどの会話をする。自然な笑顔であたたかい接客。おだやかな空気が流れている。
いま来たお客さんは遅めのランチなのか、早めのディナーなのか。そしてトーヤさんとは何者なのか。いやいや、そんな細かいことを考えて過ごすのはこの店には似合わない。空腹のままにやってきて、やさしい口当たりのココナッツカリーをお供にゆっくりと過ごそう。そんな気分にさせてくれるのが『チャントーヤココナッツカリー』の魅力なのだ。
構成=フリート 取材・文・撮影=宇野美香子