丁寧に守り続けたソースとレシピ

「1982年の創業時から調理法は変わりません。ソースも当時から継ぎ足しています」。そう教えてくれたのは『ガヴィアル』の店長である曽根田一喜さん。

大鍋いっぱいの玉ねぎを1日かけてボイルし、ショウガ、にんじん、セロリや香辛料などを入れ、バターで12時間かけて炒めたペーストからつくる新しいソース。それを創業時から継ぎ足しているソースに合わせ、さらにその日の天候や季節に合わせて微調整をする。

使用するスパイスは28種類。食べてみると、まろやかで奥行きのある甘さのあとに、じわじわと辛さを感じる。甘さと辛さがいい具合に交じり合って不思議な味だ。『ガヴィアル』のカレーは「あとをひく」「クセになる」というお客さんが多い。

店を出てしばらく経つと、また食べたくなる味。「中毒性が高い」と言うお客さんも。

よく売れるのはビーフカレー。しかし曽根田さんのおすすめはポークカレーだそう。

「ポークカレーを注文したお客さんから“これビーフじゃないの? 間違ってない?”と言われるほど(笑)、うちのポークは食べ応えがありますよ」

ポークカレー1600円。ガヴィアルのカレーにはすべて、じゃがいもと薬味、バターライスが付く。ライスにはゴーダチーズがかかっている。
ゴロっと大きなポークの塊。じっくり煮込まれてやわらかい。

「シーフードカレーも人気です。アサリ、ホタテ、エビを焼いたときに出るスープをソースに加えています。ポークもビーフもじっくり煮込みますし、チキンはカリカリに焼きます。具材に合わせて最適な調理を施すことがおいしさの秘訣です」

魚介のうま味がソースと溶け合って絶妙なおいしさのシーフードカレー1850円。

新しい世代に受け継がれていく『ガヴィアル』の味

『ガヴィアル』の創業者は一喜さんの父親にあたる曽根田勝行さん。
カレーの激戦区である神田神保町で『ガヴィアル』を有名店に押し上げた。

落ち着いたムードの店内。

「父がこの店を始めたのは、ふらりと入ったお店の欧風カレーの味に衝撃を受けたからです。当時は高級な欧風カレーというのが珍しく、こんなにおいしいカレー屋があるのかと感銘を受けたようで。店に飾ってある絵も彫刻も父親の趣味ですね。BGMにクラシックを選んでいるのも父です。

創業以来、父はずっと店に立っていたのですが、今はもう高齢なので……。新型コロナウイルスの流行があってから、家にいてもらうようにしています。でも昔からの常連さんは父が店にいないと、心配するんです。『どうしたの? 体調大丈夫なの?』『今日は勝行さんいないの?』という声があまりにも多くて……。ですから、父にはたまに店に来てもらって、お客さんへ顔を見せてもらうようにしています。店の看板ですね。お客さんも父の顔を見るとほっこりとしてくれます」

一喜さんご自身はロックが好きだそう(写真右)。「Hi-StandardやBRAHMAN、ザ・クロマニヨンズをよく聴いています。開店前に店で流していたりもしますよ」

『ガヴィアル』はちょうど世代交代のタイミング。でも代替わりしたら、これまでの味が変わってしまうのでは? という心配はご無用。なぜなら一喜さんは、勝行さんの作る『ガヴィアル』のカレーが大好きだからだ。

「子どものころからずっと食べてきた愛着のあるカレーですからね。父がいなくなったらこの味はもう食べられなくなるのか、と思ったら寂しくて。だったら自分が継げばいいんだ、と。」

一喜さんは高校を卒業以来、父とともにこの店を守ってきた。そして一喜さんの弟・隼也(としや)さんも店の味を習得し、料理長に就任。では、一喜さんの思い描く、これからの『ガヴィアル』は?

「時代によって変わっていくことも必要かもしれませんが、うちは創業者の味を受け継いで、変わらない『ガヴィアル』の味をずっと守り続けていきたいですね。そして、神田神保町に存在するたくさんのカレーの名店とともに、街を盛り上げていきたいです」

大きな窓からは神田神保町の交差点が見える。

一度食べたらまた食べたくなる魅力的な味。そんな『ガヴィアル』の欧風カレーは、世代を超えて長く愛され続けるだろう。

住所:東京都千代田区神田神保町1-9稲垣ビル2F/営業時間:11:00〜21:30LO/定休日:無/アクセス:地下鉄神保町駅より徒歩1分

構成=フリート 取材・文・撮影=宇野美香子