スパイスをふんだんに使用し、味わいしっかりなのに糖質オフのカレー
お腹まわりが気になる今日このごろ。健康を意識していつもよりたくさん歩いてみる。どこかでランチをしようかな。あぁ、濃厚なものが食べたい。スパイシーなカレーなんか最高。でも……。そんな葛藤を繰り返すみなさま、お待たせしました。
神田駅北口を出てしばらく歩くと見えてくる『ヨンイチカレー』。ここでは低糖質なカレーが食べられるという噂。カレーなのに低糖質? それって本当においしいの? 期待と不安を胸に足を運んでみることに。
ランチタイムのおしながきは鶏ひき肉のキーマカレー800円、ごろごろ野菜のカレー900円、その両方がかかった、あいかけカレー1000円が並ぶ。
野菜と手羽中がゴロゴロと入った野菜カレー。パプリカやブロッコリー、トマト、玉ねぎ、オクラといった野菜をたっぷりとれて、食感もバッチリ。手羽中もしっとりと美味。カレーはコクと辛さ、旨味がちゃんと感じられておいしい。
ショウガとブラウンマスタードの風味がほのかに広がり、鶏ひき肉のうま味がギュッと詰まったキーマカレー。辛ウマな味にライスが進む!
“低糖質”とうたわれると、さっぱり・あっさりしていて、なんだか物足りない印象のメニューが多いなか、『ヨンイチカレー』のカレーはスパイシーで濃厚。
2種のカレーの境目になるライスの上には、カスリメティとフライドオニオン、カットトマトが。
少しずつ混ぜて食べていくと、味が変わってまたおいしい。あっという間に完食。食べている分には低糖質であることをまったく感じない。カレー好きを裏切らない味。
低糖質へのこだわりと、おいしさへのこだわりを両立する挑戦
『ヨンイチカレー』の糖質量の少なさは、食後の体の感覚でよくわかる。たしかにお腹が満たされている。でもカレーを食べた後の、眠くなる感じや体がダルくなったり重たくなったりする感覚がない。頭も冴えている。
お腹は満たされているけれども体は軽く、すぐにでも動けそうな感じ。
「オーナーはビジネスで飛び回っていて、会食ばかりなんです。だから体にもやさしくて、食べた後に眠くならない、そんな“機能食”のようなカレーを食べたいというオーナーの要望がこのお店のはじまりです」
そう教えてくれたのは店主の小田泰之さん。長年、飲食業に携わってきたベテランの料理人だ。無類のカレー好きで糖質制限ダイエットにハマっていたオーナーが、低糖質カレーのお店を開こうと小田さんにレシピの開発を依頼したのがきっかけで『ヨンイチカレー』がはじまった。
「でもね、実は僕自身は“低糖質”っていう縛りが嫌で(笑)。使える食材や調理の方法、味の付け方も限られてしまうし、思いっきり料理ができませんからねぇ」
なるほど、根っからの料理人からすると、低糖質という縛りはもどかしいのかも。
「世の中のいわゆる低糖質な食事って、だいたいあっさりしていて食べた気がしないでしょ? 僕はそういうのが好きじゃなくて。でもオーナーの低糖質へのこだわりがものすごく強くて、糖質量と味の両立は大変でしたが、どうにかこうにか形にしました」という小田さん。
「味に妥協はできません。ちゃんと食べた気になる食事がしたい」と繰り返す。低糖質という制約の中、おいしいカレーをつくるのは難しい。腕のある小田さんだからこそ、低糖質でも満足感があり納得できるカレーが完成したのだろう。
人が集まり、自然に交流が生まれる『ヨンイチカレー』
『ヨンイチカレー』は、まず神田で働く“健康が気になるお年頃の中年男性”の胃袋をつかんだ。
次に“美容が気になる流行に敏感な若い女性”も足を運ぶように。また、そういった女性がSNSに写真を投稿することで低糖質でおいしい『ヨンイチカレー』の情報はじわじわと広がり、今では遠方からもわざわざ足を運ぶ人が多いという。
「神田の近くには皇居があって、食事に気をつかうランナーの方が食べに来てくれます。美容や健康業界の方も多いです。いろんな方がいらっしゃいますが『ヨンイチカレー』のお客さんは“共通の悩み”をお持ちです。だからお客さん同士で仲良くなることもあるんです。僕も『このお客さんとこのお客さんは話が合いそうだな』と思ったらさりげなく会話をつなげたりしていますよ」。
低糖質なのに、おいしいカレー。そんな都合のいいものは世の中にはなかなかない。だからこそ、こんなにおいしい低糖質のカレーが出てきたら隣の人と意気投合してしまいそう。なんだかカレーショップというよりバーみたいな空間ですね。
「低糖質であること、カレーがおいしいことはもちろん、この店で生まれるコミュニケーションも大事にしたいと思っています」。
体にやさしい低糖質のカレーでお腹を満たしたり、会話を交わして心を満たしたり。『ヨンイチカレー』は神田の街を歩く楽しみがまたひとつ増えるような、体と心を癒やしてくれるスポットだ。
構成=フリート 取材・文・撮影=宇野美香子