寒い日こそいただきたい安心&安全の味
味噌ラーメンは、ラーメンの中でも振り幅が広いメニューだ。こってりピリ辛タイプもあれば、味噌汁的なぼんやりした味のものに当たることもある。店名を冠した“店名丼”のように、正体の知れなさをあえて楽しむメニューとは違って、味噌ラーメンに限っては絶対に自分の思う味であってほしい! という安全志向が働いてしまうのはなぜだろう。ここ『精陽軒』の味噌ラーメンは、まさに私の思う味にドンピシャであった。青森の田舎のロードサイドにあるラーメン屋で、親戚が集まるといつも食べていたあの味。寒い体にしみるほどよいコクの味噌と、たっぷり盛られた野菜。そうか、味噌ラーメンには安心を求めていたんだ! と気づかされた。(増山)
そう、まさかの最高額でした!
味噌の原価があるからね。
野菜とかひき肉とか色々入ってるから高くなるのでしょうか。
だけど、僕は寒くなると食べる頻度高くなるね。
若い時は二日酔いの時なぜかよく食べてました。強い味で何かを封じ込める様なイメージで。
二日酔い対策!
「封じ込める」、それは初耳です!
味噌ラーメンで好きなのはもやしと、最後に底に沈んでるひき肉ですね。
穴のあいたレンゲですくう店ありますね。ひき肉。自分も好きです。
確かに底にたまったひき肉がたまらない!
おいしい味噌ラーメンは専門店にもあるのだろうけど、町中華の味噌ラーメンはあんまり気合いが入ってないくらいが好きだな~。
わかります! バリバリこってりよりも味噌のやさしさを推しているタイプを求めます。
そうそう、味薄いくらいがちょうどいい! あと町中華の味噌ラーメンはたいていラーメンと同じ麺。太麺じゃないことが多いね。
確かに麺をわざわざ変えているところは少ないかも。
そうそう、そのへんも凝らないのが町中華。
太麺を茹でるのって時間かかって面倒ですもんね。
ほっとする味わいこそ、町中華の味噌ラーメン
にんにくの存在ってどうですか?結構入っているものもある気がして。
にんにくは、気づかせない程度もしくは入ってない、という印象です。
にんにく、どうなんだろ。主張はあまりしてない気が。
にんにくと一味は入れたいですね。そうそう、長野県の味噌ラーメンがおいしかったね。信州味噌使ってて。
長野は味噌にうるさいからね。でも北海道味噌と信州味噌を合わせているほうがまろやかみたい。
東北には仙台味噌のラーメンのカップラーメンがありました。仙台味噌なんでピリ辛でしたね。
青森のやつもどっちかというとピリ辛寄りで、にんにくも少し入ってたような気がします。
味噌ラーメンと一言でいっても、けっこう地域性も出るメニューかもしれませんね。
具材も大事。ニラが入ってるとうれしいですね。あとにんじんもね。十条の『玉屋』さんの味噌ラーメンも野菜たっぷり。かなり理想に近いです。
『精陽軒』さんの味噌ラーメンは、最初しっかり味噌なんですが、食べ終わりは味噌だったっけ? って感じでしたね。
たしかに! 最初はパンチを感じるのに、食べ終わりはあっさりでしつこくなかった! 不思議ですねえ。具からじんわり水分や甘みが出てくるのか?
『精陽軒』さん、よく行っていた時期がありました。遅めのランチか早めの夕食でよく麺に半チャーハンがついたセットメニューみたいなのをいただいてましたね。
セットメニューが多くてお腹いっぱいになれる店なんですよね。味噌ラーメンもボリュームたっぷりで、具材も多かったです。バターを入れるとさらに感動の味わいでした!
味噌×町中華ならではのほっとする感じがいいですよね。
バター入れるのはチェーンの『どさん子』(本社は東京)が北海道ならバターでしょうって想像で入れたみたいですね。札幌でもそれを受けて入れるようになったとか。
味噌ラーメンが普及したのもそのあたりからだもんね。昭和40年代は町中華の新人メニューだったと思う。
味噌ラーメンは町中華きってのアイデア料理?
下北沢『丸長』のおやじさんが組合の講習で味噌ラーメンを習ったと言ってらっしゃったんですが、講習を受けたという店、他にはいまだ出合えていないですね。我々が物心ついたときにはごく普通にあったから、新しいメニューって聞いたときには驚きました!
『どさん子』の衝撃が全国をかけめぐったということですね。それに町中華の一部ものっかったと。
いや、単純にそうとも言い切れません。雷門の『生駒軒』のおやじさんはブームの前から『生駒軒』では味噌ラーメン出してたそうですよ。
なるほど、ブーム前に作っていたところもあるのですね。
今さらながら、ラーメン+味噌というのはすごいアイデアだよね。日式中華のシンボルのひとつだと思う。
醤油がいけるなら、味噌もアリだろって入れた勇者がいたのですね。
そういう勇者たちのおかげでいろんな町中華メニューが広がっていった気がしますね。確かに、実はとんでもないアイデアメニュー!
高校生の時ラーメン屋でバイトしてて、そこの味噌ラーメンの具がもやしとひき肉とコーンだけで、色どりが悪いからニラと人参入れてくれって大将にお願いしたのを思いだした。
そんなご経験が!
作るのがけっこう大変なのに、普通の顔して登場してくる奥ゆかしさと体を心から温める季節感が味噌ラーメンにはあるんだなー。店に入って、ラーメンかな、お、味噌があるじゃないか、寒いし味噌にしよ、と頬が緩むのです。
味噌ラーメンには安心感がありますね。
なるほど、「安心感」は味噌ラーメンを象徴する言葉ですね!
100年以上続く「お客様ファースト」
大正3年(1914)創業の洋食店『精陽軒』に一大転機がやってきたのは、1967年。それまでもラーメンなどは出していたが、お客に喜んでもらうためと、洋食より安価で提供できる中華メインの店へと転身したのだ。以来、味噌ラーメン750円など昔ながらの味の、これぞ町中華という料理が評判に。渋谷町中華の雄として多くの人々に愛されている。「お客さんに喜んでもらいたい、それだけです」と4代目店主の厚子さん。小学生の頃から看板娘である彼女のお客様ファーストの接客が、さらなる歴史を築いてゆく。
取材・構成=半澤則吉 撮影=山出高士
味噌ラーメンってラーメン類の中では価格高めですよね。閉店しちゃった御徒町の「来集軒」、確か一番高いメニューが味噌ラーメンだったような。