スープカレーの本場北海道出身の店主が腕をふるう
店主・諸橋宏明さんはスープカレーの本場・北海道の出身。『スープカレーカムイ』のメニューはコクのある甘酸っぱさを感じるトマトベースだ。味わいは濃厚でしっかりスパイシー。南インドのカレーをベースに、日本でもなじみ深い味になるようアレンジされているのが特徴で、食べすすめると、辛さがじわじわとやってくる。
野菜はどれも大きくて食べ応え抜群。骨なしチキンはホロホロと柔らかくてジューシーだ。
「“身土不二(しんどふじ)”という考え方が好きで。“人間の体と土は切っても切り離せないもの”という仏教の言葉なのですが、食に対してもそう思っています。うちの店で使う素材はできるだけ東京に近い関東近郊から取り寄せているんです」と諸橋さんは教えてくれた。
スープカレーの仕込みは毎朝3時からスタート。諸橋さんが6時間かけて仕込むという。
出汁をしっかりとるのがおいしさの秘訣で、どこかほっとするような味わいに仕上がっている。
秋葉原系サブカルチャーに囲まれて楽しむ本格派のスープカレー
店主の諸橋さんは北海道で専門学校に通うかたわら、広告代理店でタウン誌の編集者として働いていたそう。札幌では1990年半ば頃からスープカレー屋が爆発的に流行り、諸橋さんはたくさんのスープカレー屋へ取材に行くようになった。
「いろんなスープカレーのお店を取材するうちに取材や編集の仕事よりも、スープカレー作りの方に興味を持っちゃって(笑)。自分も店をやろうと思ったんだよね!」。
しばらく北海道のスープカレーの有名店で修業したあと、2011年に上京。その日のうちに店を探し始め、カウンターのみの小さなお店で『スープカレーカムイ』をオープン。すっかり人気店になり、2019年に店は現在の場所へ移転。席数は6席から24席に、広さは4倍になった。
商売繁盛の理由を聞いてみると、広告代理店勤務時代に培った戦略があったそう。
「当時はすでにSNSで発信できる時代だったので宣伝しまくりました! 自分はSNS時代の申し子ですよ(笑)。そしていろんなコラボレーションを積極的にしかけていきましたね。秋葉原に集まる人が好きそうなサブカルチャーとスープカレーがコラボしたらお客さんを呼べるのではないかな、と思って。アニメやゲーム、メイドさん、アイドルとか。コンテンツにちなんだ限定メニューを出したり、お店でイベントを開いてもらったり。おかげさまで、今では逆にコラボを申し込まれる側になりました」。
店主の戦略に加えて、『スープカレーカムイ』の確かな味、そしておおらかで人に好かれる店主の人柄もこの店が人気店に成長した理由だろう。
取材にお邪魔していると、サブカルチャーのファンはもちろん、「この店の味のファン」も続々と訪れる。
にぎやかな店内で本格的なスープカレーを楽しめる『スープカレーカムイ』は、これからもこの街を盛り上げていく存在だ。
構成=フリート 取材・文・撮影=宇野美香子