地域に愛される老舗海苔店の新業態カフェ

JR本八幡駅から歩いておよそ15分。ニッケコルトンプラザ通りという、比較的大きな道路沿いに『かんぶつとコーヒーのお店 まるに商店』はある。実はこの店、隣で営業を行う『伊藤海苔店』の系列店だ。『伊藤海苔店』は、大正12年(1923)に創業した海苔問屋。築地にも2号店を構える。創業時には両国に店があったが、昭和45年(1970)頃に千葉県市川市に移転し、以来地元で愛される店となった。

『伊藤海苔店』の海苔も購入可能。
『伊藤海苔店』の海苔も購入可能。

『かんぶつとコーヒーのお店 まるに商店』がオープンしたのは2017年のこと。オーナーを務める4代目の伊藤信吾さんは、創業した経緯をこのように話す。「長いこと海苔店として乾物を販売するだけだったんですけど、飲食店として乾物を表現するのも面白いんじゃないかと思ったんです」。

ナッツやドライフルーツも種類豊富。
ナッツやドライフルーツも種類豊富。

もともとは海苔用の倉庫だったという場所を改装した店内は、カフェとショップを併設した造りが特徴。ショップには、海苔やお出汁などの乾物から、ドライフルーツやお茶まで幅広く取りそろえられている。その多くが、子どもから大人まで安心して食べられるよう、オーガニック原料・無添加にこだわっているのだ。

できたてのクッキーがスタンバイ。
できたてのクッキーがスタンバイ。

店内の一角にあるガラス張りのスペースの中には、焼きあがったばかりのクッキーやパウンドケーキが並んでいた。この店では焼き菓子の製造・販売も行っており、カフェ利用時にイートインも可能。お店で扱っている乾物(ドライフルーツやナッツなど)や抹茶を使って作られる焼き菓子は、どれも素材の味を活かした素朴な味わいに仕上がっている。ちなみに、このガラス張りのスペースは、2021年6月までにより本格的なお菓子工房に生まれ変わる予定だ。

キッズサイズの座席もしっかり完備。
キッズサイズの座席もしっかり完備。

首都圏のベッドタウンという土地柄、小さな子ども連れのお客さんが多く訪れるという同店。そのため、店内には子ども用の座席スペースも広く確保している。取材時にも、幼稚園帰りの子ども2人とお母さんがその席に座ってアイスクリームを食べていた。座席やディスプレイの配置など、全体的にゆとりを持たせているのは、小さなお子さんの安全への配慮でもある。

こだわりのドリンクメニュー

カフェラテ(ホット)550円、濃厚抹茶のケーキ270円。
カフェラテ(ホット)550円、濃厚抹茶のケーキ270円。

カフェでは、こだわりのドリンクメニューが楽しめる。コーヒーは、ニュージーランドに本社を置き、清澄白河にも直営店とロースターリーを構える『ALLPRESS ESPRESSO』の豆を使用。LA MARZOCCO(ラ・マルゾッコ)製のエスプレッソマシンを駆使して、エスプレッソやカフェラテなど、本格的な味を提供している。

マッチャラテ(アイス)600円。
マッチャラテ(アイス)600円。

また、伊藤さんは築地で海苔店のほかに日本茶専門店『Matcha Stand Maruni(マッチャスタンド マルニ)』も営んでおり、そこで扱っている自社ブランドの抹茶を使用したマッチャラテもイチオシだ。京都・宇治産の抹茶を惜しげもなく贅沢に使ったこのドリンクは、ひと口飲んだだけで芳醇な抹茶の味わいがしっかりと感じられる。

レモネード(アイス)500円。
レモネード(アイス)500円。

そして、コーヒーやラテ以外に、レモネード、ジンジャー、クラフトコーラといったドリンクも用意している。いずれも、原液となるシロップは自家製だ。手作りは難しそうに思えるクラフトコーラも、シナモンやクローブなどのスパイスを煮詰めるだけで作れるのだという。

オーナーの伊藤信吾さん。
オーナーの伊藤信吾さん。

オープン以来、従来の海苔店のイメージを払拭する“地域のコミュニティカフェ”として親しまれている『まるに商店』。実際に、取材中もお客さんが入れ替わり立ち替わり訪れ、皆さん地元の方なのか、スタッフと親し気にコミュニケーションを取っていた様子が印象的だった。それは、まさしく伊藤さんが最後に語ってくれた、「本八幡には個人経営の店が少ないけれど、横のつながりを通して、もっと街を活性化させられたら」という意気込みの表れのようにも感じる。

『かんぶつとコーヒーのお店 まるに商店』店舗詳細

住所:千葉県市川市南八幡2-16-16/営業時間:10:00~17:00/定休日:火・水/アクセス:JR総武線・地下鉄新宿線本八幡駅

取材・文・撮影=柿崎真英