街の素敵なプラ看板たち
プラ看板に書かれている絵は、全体的に画力が高い、という印象を私は持っている。たとえば新井薬師前にある精肉店のプラ看板には、店名の周囲にしっかりとした筆致で描かれた牛・豚・鶏・調理された肉の絵があしらわれている。
何のてらいもない、誠実な作風は好感度が高い。府中の自転車店のプラ看板に描かれた女性も、かっちりとした迷いのない線であらわされ、正方形という難しい構図の中にぴったりと収まってさわやかな雰囲気を醸し出している。
一方、かわいらしいキャラクターが描かれているケースもある。狛江の総菜店やつつじケ丘のカラオケ店には、店名から着想を得たと思われる、コマドリやペキニーズの絵が描かれていて微笑ましい。
三軒茶屋の「キッチンおばさんのお店」に描かれる女性も、ゆるいタッチの絵柄ながら、配色にセンスがあって素敵である。
ザ・80年代な絵柄のプラ看板
そしてプラ看板はなぜか、80年代的な絵柄と親和性が高い。北赤羽の理髪店は店名の字体も含めてまさに「ザ・80年代」という感じであるし、北千住のベーカリーのキャラクターも、80年代の小学生女子が持っているぬいぐるみのようなクマである。
三軒茶屋の携帯ショップ(現在は別の店が入っており、看板だけが残されたものと思われる)のプラ看板は、携帯ショップなので恐らく90年代の看板だろうが、パステルカラーの配色が何とも80年代的だ。
切り絵系プラ看板の美
ところで、この携帯ショップの看板のように、プラ看板の絵柄の特色の一つは「切り絵のような表現技法」ではないだろうか。実際にカラーのプラ板を切り抜いて作られているものもあり、そのぎこちなさも味わい深い。こうした切り絵系プラ看板は、配色の美しさにも注目したいところだ。
三軒茶屋の青果店のプラ看板は、店名の両端に盛りだくさんの野菜や果物の絵が切り絵風にあしらわれている。
一つ一つの野菜を見てみればぎこちなさもあるが、全体としてカラフルで迫力のある絵になっており、こういう勢いのある絵を描いてみたいと思わせる。一方、草津温泉の酒店の切り絵系プラ看板は、湯もみをする女性たちが細かく描かれていて、バランスの良い仕上がりになっている。
かわいらしい切り絵系プラ看板もある。新宿のフルーツパーラー、狛江の寿司店のプラ看板は、果物や寿司がちんまりと切り抜かれていて、まるで色画用紙で制作したかのような愛らしさがある。
プラ看板は屋外で日光や風雨に曝され、いずれ劣化していくものでもある。永久に残り続けるわけではない街角の絵たちを、せめてその看板が設置されている間は、楽しんで鑑賞していきたいものだ。
絵・取材・文=オギリマサホ