まるでカフェ? 女性客も入りやすいおしゃれな外観
『濃菜麺 井の庄 荻窪店』はクリーム色の外壁がおしゃれ。一見すると今風のカフェのようだ。
2018年にオープンした『濃菜麺 井の庄 荻窪店』は、辛辛魚で業界に衝撃をもたらした有名店『麺処 井の庄』のグループ店だ。
「うちは肉がウリです」という店長の名古屋佑介さんがおすすめする肉濃菜麺1150円。野菜大盛+120円で注文。
贅沢な肉は脳がとろけるうまさ! 麺とスープ、野菜も美味で濃厚な味わい!
明るく居心地のいい店内で待っていると、どんぶりが到着。……すごい高さだ。肉で形成された頂にゴクリと喉が鳴る。
まずはスープから一口。どろっとした濃厚な豚骨が沁(し)みる。スープはたっぷりの豚のゲンコツを火にかけ、豚足、背油などを投入。一晩煮込んで、再び豚の背ガラや香味野菜を追加して煮込む。そして丁寧に濾して冷やしたあと、さらに一晩寝かせてから完成する。手間ひまかけて素材の旨味をギュッと濃縮させたスープは、コク深い味。
肉をめくり、山盛りの野菜を掘り返してやっとたどりつく麺は、モチっとした弾力ある太麺。
肉は2種類。これでもかとかぶさっている薄切りの肉は豚肩ロース。ふた晩かけて味をしみこませたあと、低温調理で6時間半ほどじっくりと火を通すことで熟成肉のような柔らかさに。とろける食感と、しっかりとしたうま味に頬がゆるむ。
右奥の白い肉は鳥取県の銘柄鳥「大山(だいせん)どり」のむね肉。こちらも低温調理でじわじわと柔らかく仕上げる。しっとりとジューシーな味わいだ。
クタっと煮込まれたキャベツはえぐみがなくて甘い。野菜は柔らかい国産を使うのがこだわりだ。
サイドメニューのジロべジ100円も人気。ジロべジの“ジロ”はあの『二郎』が由来だそう。ゆでた野菜に特製の背油のタレで味付けされている。野菜なのにスナック菓子のようなジャンキーさ。これは病みつきになる。サラダ感覚で注文したり、おつまみにしたり。ご飯にかけてもよし。
荻窪で店をやるからには「強い気持ちで勝ちに行く」
「濃菜麺のようなタイプのラーメンは荻窪では見当たらないですね」と名古屋さんは言う。「だから皆さんにはぜひ足を運んでほしいのですが、この街はラーメンの激戦区。ただ待っているだけではお客さんは来ません。たくさんのラーメン屋の中から、うちの店を知ってもらわないと」と続ける。「そのために常に限定メニューを出しています。“あのお店、おもしろいことをやってるな”と思ってほしくて」。
これまで“シュクメルリまぜそば”や、“トマトチーズリゾット肉ごはん”といった一風変わったメニューを絶えずに登場させ、そのたびにお客さんの目をひいてきた。
しかし新たなメニューの開発は簡単なことではない。アイデアを試し、70点のおいしさはすぐに出せるものの、80点、90点と100点に近づけていくのはとても難しいという。完成に至るまでに、数えきれないほどの失敗を重ねる。
挫折しそうになるとき、名古屋さんの気持ちを奮い立たせるのは趣味のボクシングで養った闘争心だ。「他の店には負けないぞという強い気持ちでやっています。荻窪のラーメンもボクシングのように競争が激しいですからね」。
おしゃれなカフェ風の外観からは想像もできなかった熱い闘志。『濃菜麺 井の庄 荻窪店』はパンチの効いた本気の一杯で勝負をかける。
構成=フリート 取材・文・撮影=宇野美香子