浮世絵から浮かび上がる、幕末明治の人々と暮らし

小林清親《常盤橋内紙幣寮之図》。明治13年(1880)大判錦絵 『練馬区立美術館』蔵。
小林清親《常盤橋内紙幣寮之図》。明治13年(1880)大判錦絵 『練馬区立美術館』蔵。

収蔵品や展覧会の性格の違いから、これまで共同企画が開催されることのなかった『練馬区立美術館』(ねり美)と『練馬区立石神井公園ふるさと文化館』(ふる文)。今回、それぞれが収蔵する浮世絵をテーマに初のコラボレーション展示が実現した。

担当の学芸員は「浮世絵版画という印刷物が果たした役割や魅力は、決して今の我々のメディアと遠いものではありません。役者絵はアイドル、スターの推し活ですし、戯画はマンガやバラエティ、名所絵はそれこそ『さんたつ』。私たちの目線で浮世絵を見ていこう、そして、昨年(2025年)の大河ドラマ人気にまだまだ乗っかっていこう!という展覧会です」と見どころを語る。

渓斎英泉《江戸町一丁目 和泉屋内泉寿 しかの かのこ》文政前期(1820)頃 大判錦絵 『練馬区立石神井公園ふるさと文化館』蔵。
渓斎英泉《江戸町一丁目 和泉屋内泉寿 しかの かのこ》文政前期(1820)頃 大判錦絵 『練馬区立石神井公園ふるさと文化館』蔵。

多岐にわたる浮世絵約70点が展示

小林清親《高輪牛町朧月景》明治12年(1879)大判錦絵『練馬区立美術館』蔵。
小林清親《高輪牛町朧月景》明治12年(1879)大判錦絵『練馬区立美術館』蔵。

ふたつの区立ミュージアムから特色ある浮世絵が集結した本展。『ふるさと文化館』では上石神井村の名手で、代々この地域の名士であった栗原家に伝わった幕末の浮世絵130点余りが収蔵されており、役者絵をはじめ、美人画、風景画、戯画など多岐にわたる。それらの浮世絵を概観すると、最大のエンタメであった歌舞伎芝居、その役者たちが憧れのスターだったこと、災害・事件の伝達や政権批判のメディアとしても浮世絵はその役割を果たしている様子など、江戸時代に人々はどのように暮らし、どんな娯楽や出来事に一喜一憂していたかがうかがい知れる。

一方、『練馬区立美術館』の浮世絵はもっと現在の暮らしに近い、近代化した東京の様子が描かれている。小林清親が描いたのは、古来からの浮世絵の技法を用いながら、これまでとはまるで違う、光と影、季節や天候、空気感を表現した水彩画のような東京名所図。鉄道や電線が走り、洋館が点在する新しい時代の幕開けがみずみずしい斬新な手法で描かれている。

多彩な浮世絵約70点で、幕末明治の江戸・東京へと誘ってくれそうだ。

歌川国貞《見立福清 松本幸四郎 見立かしく 岩井半四郎 見立六三 瀬川菊之丞》天保9年(1838)大判錦絵『練馬区立石神井公園ふるさと文化館』蔵。
歌川国貞《見立福清 松本幸四郎 見立かしく 岩井半四郎 見立六三 瀬川菊之丞》天保9年(1838)大判錦絵『練馬区立石神井公園ふるさと文化館』蔵。

開催概要

ねり美・ふる文コラボ企画「もっと浮世絵で行こ! 幕末明治の暮らし、娯楽、事件…」

開催期間:2026年1月25日(日)~3月8日(日)
開催時間:9:00~18:00
休館日:月(ただし2月23日は開館)・2月24日(火)
会場:練馬区立石神井公園ふるさと文化館 2階企画展示室(東京都練馬区石神井町5-12-16)
アクセス:西武鉄道池袋線石神井公園駅から徒歩15分
入場料:無料

【問い合わせ先】
練馬区立石神井公園ふるさと文化館☏03-3966-4060
公式HP https://www.neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=202511091762668548

 

取材・文=前田真紀 画像提供=練馬区立美術館