大蛇が悪霊や悪疫を退散!

毎年1月17日に行われている「国府台辻切り」は、今から約500年前の室町時代から始まったといわれている。「辻切り」とは、悪霊や悪疫が村に侵入するのを防ぐため、各集落の出入り口にあたる四隅の辻を霊力で遮断するというもの。千葉県内では同様の行事がほかにも何カ所かで行われている。「昔は薬がなかったので、悪霊や悪疫から村を守るために行われたといわれています。一種の呪術のようなもので、おそらく村人が願いを込めて大蛇をお祀りしたのでは」と教えてくれたのは、国府台辻切り保存会の会長を務める小宮寛美さん。

当日は朝9時ごろから国府台天満宮の境内で大蛇作りに取り掛かる。2mを超える大きさなので、木にロープで吊るしながら息をそろえて体となる部分を編んでいく。大蛇の目玉は前々年の大蛇をお焚き上げした際のワラ灰を半紙でくるんで作る。こうすることで今まで祀られてきたものがずっと受け継がれていくのだという。

ワラ灰を半紙でくるんだ目玉を一体ずつ大蛇につけていく。
ワラ灰を半紙でくるんだ目玉を一体ずつ大蛇につけていく。

最後にビワの葉で耳をつけて4体の大蛇ができあがると、お神酒(みき)を飲ませて「魂(たま)入れ」を行い、町内4カ所の辻に向けて1体ずつ出発する。大蛇を祀る木があるのは、国府台国立病院前の信号ロータリー、里見公園の「羅漢の井」の近く、天満宮の裏門、天満宮の山を下りたところの4カ所。前年の大蛇と入れ替える形で今年の大蛇を木の上に祀ることで、一年間悪いものが入ってこないように大蛇が見張ってくれるのだ。

地域の人たちにとって大事な行事

一昨年から保存会の会長を務めることになったという小宮さん。かつて同じく会長を務めた亡き父をこのように回想する。「父と兄が大蛇の頭を作っていたのを小さなころから見てきました。前の晩には親子で練習していましたね。思いが強い分、できあがった大蛇はとても立派でした。今もなお歴代の思いを受け継いで、保存会のみなさんがそれぞれの思いを込めて作っています。この行事があることで守られている気がします」。古くから受け継がれるこの行事は、大雪が降っても大雨が降っても欠かさずに行われてきた。地域の人たちが大事にしている伝統行事なのだと話す。

「2m超えの大蛇は見応えがあると思います!」と小宮さん。地元の農家が中心の保存会だが、メンバーが少なくなっていく中で、現在は地区の消防団にも協力してもらいながら伝統を守っているという。ぜひこの伝統行事を現地で見学しよう。江戸川に臨む国府台には古墳や城跡といった史跡も多くあるので、それらを散策しながら木の上でにらみをきかせる大蛇をめぐってみるのもおすすめだ。

地域の人たちが協力し合いながら大蛇を祀っているところ。一年間風雨に耐えながら町を守ってくれる。
地域の人たちが協力し合いながら大蛇を祀っているところ。一年間風雨に耐えながら町を守ってくれる。

開催概要

「国府台辻切り」

開催日:2026年1月17日(土)
開催時間:9:00~12:00ごろ
会場:国府台天満宮(千葉県市川市国府台3-11-11)
アクセス:JR総武線市川駅からバス「国府台病院」下車徒歩10分

【問い合わせ先】
市川市観光振興課☎047-711-1142
URL:https://www.city.ichikawa.lg.jp/edu09/1541000011.html

 

取材・文=香取麻衣子 ※写真は主催者提供