2人の作品が織りなす時空を超える空間
石橋財団コレクションと現代のアーティストが共演し、美術の新たな可能性を探るシリーズ「ジャム・セッション」の第6回。
今回は、沖縄、パラオ、東京大空襲の記憶を映像で結び、語りや歌、祈りを交錯させて歴史の複層性を映像インスタレーションとして編み上げる山城知佳子氏と、写真表現を土台とした物語を通して、東北、三陸世界における海から丘(陸)への物流の変化を「人間の作る道=人間社会のやり方」として捉える志賀理恵子氏によるセッションが展開される。
社会構造の変化や災害を背景に、地域や文化の間に潜む断絶や、かつて共有されていた記憶の風化が顕在化しつつある近年において、「中心と周縁」「土地と記憶」というテーマを喚起する。
記憶や歴史に身体的に向き合う実践であり、作品そのものが行為として訴えかける力を持つ2人の作品が、見る者の認識を揺さぶり、既存の物語や視点を問い直す契機を与えてくれる。
2人によるコレクションとの対話にも注目
石橋財団コレクション約3000点の美術作品の中から、山城氏と志賀氏がそれぞれ本展のために選出した作品計4点も同会場内に併せて展示される。2人がその作品を選んだのはなぜか? それぞれの作品が共鳴する空間に身を置くことで、コレクション作品に対しても多層的な読み解きが促される。
また、タイトル「漂着」には、偶然性と必然性、外部からの流入と内部の応答という二重の意味が宿っており、創作を通して離れた場所や他者の記憶との新たな接続を生み続けてきた2人の作家の軌跡とも重なる。記憶、災害、移動、そして再生といったテーマが、コレクション作品と交差しながら表現され、会場の空間全体が、ひとつの「漂着地」となっている。
開催概要
「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山城知佳子×志賀理恵子」
開催期間:2025年10月11日(土)~2026年1月12日(月・祝)
開催時間:10:00~18:00(金は~20:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:月(11月3・24日・1月12日を除く)・11月4日(火)・25日(火)・12月28日(日)~1月3日(土)
会場:アーティゾン美術館(東京都中央区京橋1-7-2)
アクセス:JR東京駅から徒歩5分、地下鉄銀座線京橋駅から徒歩5分、地下鉄日本橋駅から徒歩5分
入場料:WEB予約チケット1200円、窓口販売チケット1500円、学生無料(要WEB予約)※中学生以下はWEB予約不要。
※日時指定予約制(予約枠に空きがあれば、美術館窓口で購入可)。
※この料金で同時開催の展覧会「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 安井曾太郎」も観覧可能。
【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP https://www.artizon.museum/
取材・文=前田真紀 画像提供=アーティゾン美術館





