内閣文庫ならではの貴重な資料に注目
「内閣文庫」は、もともと明治政府が官庁の中央図書館として設置した機関で、現在はコレクションの名称になっている。ここには江戸幕府の諸機関が収集した古書・古文書が引き継がれ、『国立公文書館』で保存・管理されている。2025年は内閣文庫と改称されてから140周年の節目にあたり、これを記念して、江戸時代に人々がどのように海外知識を取り入れていたのか、18世紀を中心とした貴重な資料でたどる。
展示会担当者は、「本企画展では、内閣文庫140周年を記念し、国指定重要文化財『御書物方日記』・『北夷分界余話』・『阿蘭陀本草和解』の3点を公開します。また、新井白石(はくせき)や青木昆陽(こんよう)など、著名な学者たちの自筆(直筆)本、大河ドラマ『べらぼう』でもおなじみの平賀源内・島津重豪(しげひで)らの海外研究に関する資料も展示します。内閣文庫にしかない貴重書の数々をお楽しみいただけますので、ぜひご来館ください」と見どころを語る。
江戸時代の人々の海外知識への渇望にふれる
江戸幕府は海外との窓口を長崎、対馬、薩摩、松前の4カ所に限り、国際関係を統制していた。八代将軍徳川吉宗が輸入書籍の制限を緩和して以降、さまざまな海外知識が国内へ流入した。吉宗は輸入した文献に自ら目を通したばかりでなく、各分野の学者に命じて、注釈書や和訳本を作成させて知識の普及も図ったという。
さらに吉宗の次の世代を生きた人々の中には、自ら海外情報を積極的に集める人も登場する。身分を超えた同好の士の集まりとして学術研究のサロンを作り、世界の学問を学ぼうとあらゆる試行錯誤を繰り広げた者もいたという。
漢文で書かれた中国由来の知識はもちろん、ヨーロッパ諸国の文物を直接学ぶため蘭学にも興味を持ち、語学、博物学、医学など、さまざまな分野の知識を収集し、吸収しようとした江戸の人々。数々の文献からその思いが伝わってくる。
開催概要
内閣文庫140周年記念「世界へのまなざし―江戸時代の海外知識―」
開催期間:2025年10月11日(土)~12月7日(日)
開催時間:9:15~17:00
休館日:11月16日(日)・23日(日・祝)・24日(月・休)
会場:国立公文書館 東京本館1階展示ホール(東京都千代田区北の丸公園3-2)
アクセス:地下鉄東西線竹橋駅から徒歩5分
入場料:無料
【問い合わせ先】
国立公文書館☏03-3214-0621
公式HP https://www.archives.go.jp/exhibition/index.html
取材・文=前田真紀 画像提供=国立公文書館





