世界に影響を与えたインド更紗の美意識に触れる
数千年の歴史の中で、衣服や宗教儀式、室内装飾など、さまざまな用途に使われてきたインド更紗。天然素材の茜と藍を巧みに用い、染織の難しい木綿布を色鮮やかに染め上げて作られた更紗は、主要な交易品として1世紀には東南アジアやアフリカへ渡り、17世紀にはヨーロッパ各国で相次いだ東インド会社の設立に伴い世界中へと輸出された。貿易を通して他国の要望に応じたデザインを展開しつつも、力強いインドの美意識が内包されたインド更紗は、世界中のあらゆる芸術に影響を与えたという。
展覧会担当学芸員の半澤さんは、「インド更紗の魅力は、大胆で色鮮やかな文様。染色の難しい木綿布に、天然素材を用いて手作業による複雑な工程を経て作り上げられたデザインは、大航海時代に世界中の人々を魅了しました。本展には17~18世紀制作の掛布や、そうした裂(きれ)を使った19世紀の衣装などを出品。デザインの展開も楽しむことができます。世界屈指のコレクター、カルン・タカール氏のコレクションを日本で初めて紹介する本展を、ぜひご覧ください」と見どころを語る。
子供用の帽子から8mに及ぶ大作まで登場
本展では、インド国内向けに作られた最長約8mの完全な形で残る更紗の優品から、アジアとヨーロッパとの交易で生み出されたデザインを伝える掛布や服飾品、そして国内のコレクションも交えた日本での展開を伝える貴重な作品が紹介される。
「インド更紗は日本において何世代にもわたって愛され、珍重されてきました。更紗にどれほどの敬意が払われてきたかを示す記録や文献は、1600年代初頭にまでさかのぼります。この舶来の布は、茶道具の仕覆(しふく)をはじめ、風呂敷や煙草入れ、さらには掛け軸の表装や畳縁にも用いられ、日本の伝統に深く根ざしています。ごく小さな端切れでさえ、見本帖に貼られて大切に保存されてきたのです」(カルン・タカール)
色鮮やかで上質な木綿布の子供用の帽子や、オランダ向けに生産されたと考えられるチューリップと虫が描かれた印象的なデザインなど、さまざまなインド更紗から、その奥深い魅力が伝わる内容になっている。
開催概要
「カルン・タカール・コレクション インド更紗 世界をめぐる物語」
開催期間:2025年9月13日(土)~11月9日(日)
開催時間:10:00~18:00(金は~20:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:月(ただし9月15日、10月13日、11月3日は開館)・9月16日(火)、10月14日(火)
会場:東京ステーションギャラリー(東京都千代田区丸の内1-9-1)
アクセス:JR東京駅直結
入場料:一般1500円、高校生・大学生・専門1300円、中学生以下無料
※身体障害者手帳などの手帳をお持ちの方は200円引きその付添いの方(1名まで)無料。
【問い合わせ先】
東京ステーションギャラリー☏03-3212-2485
公式HP https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202509_india.html
取材・文=前田真紀 画像提供=東京ステーションギャラリー





