ハイブランドのグラフィックワークから書籍装丁まで一堂に

「(NO)RAISIN SANDWICH」(2021)。
「(NO)RAISIN SANDWICH」(2021)。

アートディレクター、グラフィックデザイナーとして精力的に活動する田部井美奈氏。これまで母校である武蔵野美術大学や、NHK大河ドラマ『光る君へ』、「PARCO CHRISTMAS」などのビジュアル、マティス展などの告知宣伝物を手掛けてきたほか、『奥能登半島/石川直樹』『ミライの源氏物語/山崎ナオコーラ』『結婚の奴/能町みね子』など書籍の装丁を担当するなど、幅広い領域で活躍してきた。本展は、田部井氏が試作を重ねてきた作品「光と図形」の最新作とともに、これまでの作品を一堂に展覧するものとなる。

田部井氏は、「物に光を当て、その反射や影といった現象ごとグラフィックとして見出す試み『光と図形』は、この数年続けている制作方法です。今回の新作では、特に線を取り入れることを意識し、その影の屈折や、接点に着目して制作しています。壁面に展示されたポスターに呼応するかのように、小さな窓がいくつか空いています。その窓を覗(のぞ)き込み、『観察すること』『ある視点を見つけること』の楽しさを、ぜひ感じていただければと思います」と注目ポイントを語る。

「Mame Kurogouchi」(2023)。
「Mame Kurogouchi」(2023)。
『マティス展』朝日新聞社(2023)。
『マティス展』朝日新聞社(2023)。
『極北へ/石川直樹』毎日新聞出版(2018)。
『極北へ/石川直樹』毎日新聞出版(2018)。
『結婚の奴/能町みね子』平凡社(2019)。
『結婚の奴/能町みね子』平凡社(2019)。

写真表現を生かした「タナベミナイズム」の真髄に迫る 

「光と図形と、その周辺」(2025)。
「光と図形と、その周辺」(2025)。

田部井氏が2018年より追究してきた実験作[光と図形]の最新作が、空間ごと体感できるかたちで披露される本展。

田部井氏があれこれ模索するなかで思い至ったのが「写真」表現のもつ、予定調和ではない世界の魅力を取り入れることだった。自分の意志ではコントロールすることのできない「光や影」という現象、その三次元の世界に出現する偶然性を、二次元の紙面上に落とし込んでいく、時間と根気のいる行為に没入したという。

自身の想像を超えたイメージが出現した瞬間、自分でもびっくりするという田部井氏。

ほかのグラフィックワークと併せて展覧することで、それぞれ個性的なたたずまいをもつデザインがつながっていく「タベイミナイズム」が浮かび上がる構成となっている。

「光と図形と、その周辺」(2025)。
「光と図形と、その周辺」(2025)。

開催概要

「田部井美奈 光と図形と、その周辺」

開催期間:2025年9月5日(金)~10月22日(水)
開催時間:11:00~19:00
休館日:日・祝
会場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)(東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル 1F/B1)
アクセス: 地下鉄銀座駅から徒歩5分、JR・地下鉄有楽町駅から徒歩5分
入場料:無料

【問い合わせ先】
ギンザ・グラフィック・ギャラリー☏03-3571-5206
公式HP https://www.dnpfcp.jp/gallery/ggg/jp/00000848

 

取材・文=前田真紀 画像提供=ギンザ・グラフィック・ギャラリー