江戸時代に堀切で発祥した花菖蒲園

初夏に咲く花として人々から愛されるハナショウブ。水辺などに群生し、気品のある凛とした雰囲気は梅雨時季の沈みがちな気持ちをしゃんとさせてくれる。そんなハナショウブを区の花としているのが葛飾区で、区内には二大名所である堀切菖蒲園と都立水元公園がある。それら2カ所を会場に、5月26日(月)~6月15日(日)には「2025葛飾菖蒲まつり」が行われる。

会場のひとつ、堀切菖蒲園の歴史は江戸時代後期までさかのぼる。天保年間(1830~43)に花農家を営んでいた小高伊左衛門がハナショウブの栽培に力を注ぎ、小高園を開園。その後、武蔵園が開園、明治時代には吉野園・堀切園・観花園が開園し、第二世界大戦後唯一復興を果たした堀切園の一部が堀切菖蒲園として開園して現在に至る。堀切のハナショウブは江戸名所のひとつとして古くから知られていて、歌川広重や小林清親(きよちか)などの浮世絵にも登場している。

現在堀切菖蒲園で見られるハナショウブは約200種類6000株。「限られた敷地の中で種類をそろえているのが特徴です。さまざまな品種のハナショウブを楽しんでもらえれば」と教えてくれたのは葛飾区観光課の三上さん。「十二単衣」、「酔美人(すいびじん)」、「霓裳羽衣(げいしょううい)」といった希少な品種もあり、愛好家たちにも評判だ。

堀切菖蒲園では夜間のライトアップも。日中とは異なる雰囲気を楽しめる。
堀切菖蒲園では夜間のライトアップも。日中とは異なる雰囲気を楽しめる。

広大な敷地に数多く咲く水元公園

もうひとつの会場、都立水元公園は小合溜に沿って造られた都内唯一の水郷景観をもった公園。菖蒲まつりの時期には、ハナショウブのほかアジサイも見頃を迎える。「かなり広い範囲に約100種類1万4000株が咲き誇ります。満開時には迫力のある景色が楽しめますよ」と三上さん。

「水元会場は自然の中で伸び伸びと咲いている様子が見られるのも魅力のひとつ」(三上さん)。
「水元会場は自然の中で伸び伸びと咲いている様子が見られるのも魅力のひとつ」(三上さん)。

期間中、堀切会場では6月6日(金)・7日(土)には夜間のライトアップ、8日(日)には駅前大通りを中心に華やかな菖蒲まつりパレードが行われる。また、水元会場では土・日を中心に歌謡ショーや地域団体の発表のステージが催されるほか、特定日にはお茶処もオープン。ハナショウブを見ながらおいしいお茶とお菓子を味わって、のんびりとしたひとときを過ごせる。

また、土・日に限り両会場を結ぶ「菖蒲めぐりバス」も運行。柴又駅や亀有駅など主要な街を結んでいるので界隈の観光スポットもめぐれる。「両会場とも違った魅力のある会場なので、ぜひ2会場とも足を運んでいただければ。地域の方々が主体となって開催している歴史あるイベントにぜひお越しください」と三上さん。江戸時代から続く歴史に思いを馳せながらハナショウブを観賞しよう。

堀切会場で行われる菖蒲まつりパレード。迫力ある阿波踊りの団体がイベントを盛り上げる。
堀切会場で行われる菖蒲まつりパレード。迫力ある阿波踊りの団体がイベントを盛り上げる。

開催概要

「2025葛飾菖蒲まつり」

開催期間:2025年5月26日(月)~6月15日(日)
開催時間:堀切菖蒲園は8:00~18:00(菖蒲まつり期間のみ、6・7日は19:00~21:00にライトアップを実施)、都立水元公園は入園自由
会場:堀切菖蒲園(東京都葛飾区堀切2-19-1)、都立水元公園(東京都葛飾区水元公園3-2)
アクセス:〈堀切会場〉京成電鉄京成本線堀切菖蒲園駅から徒歩10分、〈水元会場〉JR常磐線金町駅からバス「水元公園」下車、徒歩5分

【問い合わせ先】
葛飾区観光課☎03-3838-5558
URL:https://www.city.katsushika.lg.jp/tourism/1000064/1028427.html

 

取材・文=香取麻衣子 ※画像は主催者提供