5人の学芸員の視点で綴る写真と映像の世界
1995年に日本唯一の写真と映像の綜合的な専門美術館として開館した『東京都写真美術館』。2025年が総合開館30周年となるのを記念して、1年を通して写真と映像の未来についてじっくりと考える、さまざまな企画が展開される。
「不易流行」とは、江戸初期の俳人・松尾芭蕉が俳句の心構えとして述べた言葉。現代語では「変わらないものを知らなくては基本が成立せず、流行を知らなくては新しい風は起こらない」という意味となる。各学芸員が所蔵作品を新たな視点でとらえ、「不易流行」という言葉で共鳴することで、コレクションの新たな魅力が再発見される。
広報担当者は、「『東京都写真美術館』初となる5名の学芸員が共同企画するオムニバス形式の展覧会で、5つのセクションで、写真・映像の歴史的作品から現代作家の表現まで多様なテーマを楽しめます。例えば、第5室では、1995年の総合開館記念展『写真都市TOKYO』を再現するほか、当時若手作家として台頭し、現在も活躍する女性作家たちの作品を紹介。古いものと新しいものが入り混じる昭和末期から平成初期までの写真表現とその時代背景に目を向けます」と見どころを語る。
歴史的に貴重な作品も多く、当時と今の変化が見て取れるとともに、その時代を生きる人々の真摯な姿に触れられる。
赤瀬川原平の『版画集 トマソン黙示録』が初展示
本展では、赤瀬川原平〈版画集 トマソン黙示録〉(1988年)が初展示される。前衛美術家や小説家などとして幅広く活躍した赤瀬川原平(1937-2014)は80年代のはじめに、街の片隅にある無意味な造形物や正体不明の物件・現象を「トマソン」と名付け、ユーモラスな視点でそれを観測・報告する活動を行った。14点組のポートフォリオから11点が展示されるのにも注目したい。
開催概要
「総合開館30周年記念 TOPコレクション 不易流行」
開催期間:2025年4月5日(土)~6月22日(日)
開催時間:10:00~18:00(木・金は~20:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:月(ただし5月5日は開館)・5月7日(水)
会場:東京都写真美術館(東京都目黒区三田1-13-1 恵比寿ガーデンプレイス内)
アクセス:JR恵比寿駅から徒歩7分、地下鉄日比谷線恵比寿駅から徒歩10分
入場料:一般700円、中学生以下及び障がい者手帳をお持ちの方と介護者(2名まで)は無料
【問い合わせ先】
東京都写真美術館☏03-3280-0099
公式HP https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-5069.html
取材・文=前田真紀 画像提供=東京都写真美術館