高いデザイン性と繊細な色彩感覚が光る、宮脇芸術の魅力とは

『白菜』 1975年 『豊田市美術館』蔵。
『白菜』 1975年 『豊田市美術館』蔵。

身近なモノを対象に、布と紙で美しく親しみやすい作品を生み出した宮脇綾子。主婦として毎日目にしていたものをモティーフにし、ときには割って断面をさらし、分解して構造を確かめるなどして生み出された作品は、造形的に優れているのみならず、デザイン性の高さと繊細な色彩感覚で観るものを魅了する。

展覧会を企画担当した冨田章館長は「宮脇綾子が創作を始めたのは40歳の時でした。アプリケの手法で始めた制作活動は数年の内に目覚ましく深化し、すぐに手芸の枠に収まらない豊かな表現を見せるようになります。野菜、果物、魚など、生活の中から見出したモティーフを徹底的に観察し、収集した膨大な布の中からこれぞという一枚を選び出して制作された作品は、優れた写実性と予期せぬ驚きに満ち、いのちの輝きを見事に表現しています」と見どころを語ってくれた。

『鮭の切り身とくわい』1980年 個人蔵。
『鮭の切り身とくわい』1980年 個人蔵。
『芽の出たさつまいも』1987年 『豊田市美術館』蔵。
『芽の出たさつまいも』1987年 『豊田市美術館』蔵。

組み合わせの妙から生み出された多様な作品の数々

『日野菜』1970年 『豊田市美術館』蔵。
『日野菜』1970年 『豊田市美術館』蔵。

素材にこだわり、好みの古裂(こぎれ)を探して骨董屋や骨董市めぐりをしていたという宮脇。レースやプリント生地、洗いざらしのタオル、古くなった柔道着などあらゆる素材を活かし、さまざまな手法で表現していった。ときには布のプリント柄と紙の箸袋を組み合わせるなどし、写実的な作品を作り上げることも珍しくなかったという。

モノを徹底的に観察することで、優れた写実性を生み出している点に着目した1章「観察と写実」にはじまり、果実や野菜の断面に美しさを感じ、表現するスタイルに迫る「断面と展開」、そして布の柄や模様を活かし、模様で遊ぶといった手法によって「素材を活かす」「多様性」を表現した作品などを取り上げ、8章に分けて紹介。宮脇マジックの奥深さに触れられるはずだ。

『ねぎ坊主 おべんとうの折で』1970年 個人蔵。
『ねぎ坊主 おべんとうの折で』1970年 個人蔵。
『鰈の干もの』1986年 個人蔵。
『鰈の干もの』1986年 個人蔵。
『あんこう』制作年不詳 個人蔵。
『あんこう』制作年不詳 個人蔵。

開催概要

「生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った」

開催期間:2025年1月25日(土)~3月16日(日)
開催時間:10:00~18:00(金は~20:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:月(ただし2月24日、3月10日は開館)・2月25日(火)
会場:東京ステーションギャラリー(東京都千代田区丸の内1-9-1)
アクセス:JR東京駅丸の内北口直結
入場料:一般1300円、高校生・大学生・専門1100円、中学生以下無料
※身体障害者手帳などをお持ちの方は200円引きその付添いの方(1名まで)無料。

【問い合わせ先】
東京ステーションギャラリー☏ 03-3212-2485
公式HP  https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202501_miyawaki.html

取材・文=前田真紀 ※画像は主催者提供