絵画、彫刻、工芸品を通して、ヘビのパワーにあやかろう

自在蛇置物 宗義作 昭和時代・20世紀。頭部を除き、大小合わせて222個の部材からなり、本物のヘビのようにとぐろを巻いたり、這いずり回ったり、自然な動きができる。
自在蛇置物 宗義作 昭和時代・20世紀。頭部を除き、大小合わせて222個の部材からなり、本物のヘビのようにとぐろを巻いたり、這いずり回ったり、自然な動きができる。

『東京国立博物館』のお正月の恒例企画「博物館に初もうで」。22年目となる2025年は、ヘビにまつわる作品やおめでたい作品が大集合する。

脱皮を繰り返す生態や毒をもつ特性もあいまって、人々が古くから不思議なパワーを見出してきたヘビ。本特集では、古今東西の絵画や彫刻、工芸品を通して、美しさ、迫力、面白さ、かわいらしさなど、人々がヘビに重ねてきたさまざまな魅力を紹介する。変化自在の活躍を見せるヘビたちのパワーを浴びながら、新しい年の訪れを感じられるはずだ。

胆松に白蛇 渓斎英泉筆 江戸時代・19世紀。朝日を浴びて、弁天様の使いとされるめでたい白蛇が松の木に絡む、元旦にふさわしい浮世絵。ヘビの輪郭線は銀で摺られ、間近で見ると鱗の一枚一枚がキラキラと輝くよう。
胆松に白蛇 渓斎英泉筆 江戸時代・19世紀。朝日を浴びて、弁天様の使いとされるめでたい白蛇が松の木に絡む、元旦にふさわしい浮世絵。ヘビの輪郭線は銀で摺られ、間近で見ると鱗の一枚一枚がキラキラと輝くよう。

時代や場所、表現方法もさまざまなヘビたちの魅力が炸裂

蛇形土偶 伝イラン、ルリスタン地方 鉄器時代・前1000年頃 谷村敬介氏寄贈。にょろっとしたヘビの動きをとらえた土偶。古代西アジアでもヘビは再生や豊穣と結びつく生き物だった。
蛇形土偶 伝イラン、ルリスタン地方 鉄器時代・前1000年頃 谷村敬介氏寄贈。にょろっとしたヘビの動きをとらえた土偶。古代西アジアでもヘビは再生や豊穣と結びつく生き物だった。

会場では4章にわたって、異なるテーマでヘビの魅力に迫る。第1章「シンボルとしてのヘビ」では、古今東西の文化のなかでシンボルとなったヘビに注目。ヘビの王が傘となり雨風から守ったという伝説に基づいたアンコール時代の仏像などを紹介する。

第2章「ヘビのかたち」では、古代西アジアでも再生や豊穣と結びつく生き物だったヘビの土偶などを展示。職人や画家の感性を刺激し、古来、多様な工芸品や絵画のなかで表現されてきたヘビが登場する。

また第3章「ヘビと祈り」では、人々の祈りや願いが込められているヘビの造形に着目。新年にふさわしい、縁起のいいヘビたちが集合する。

第4章「物語のなかのヘビ」では、伝説や物語にもしばしば登場する大蛇に着目。日本神話に登場する怪物、八岐大蛇(やまたのおろち)などが登場し、物語の要となってきたヘビたちが、魅惑的な姿を現している。

ナーガ上のブッダ坐像 タイ・ロッブリー出土 アンコール時代・12~13世紀 三木榮氏寄贈。 悟りを得たブッダが瞑想する間、ヘビの王「ナーガ」が傘となり雨風から守ったという伝説に基づいた仏像。ブッダの背後に7つの頭を持ったヘビが見える。
ナーガ上のブッダ坐像 タイ・ロッブリー出土 アンコール時代・12~13世紀 三木榮氏寄贈。 悟りを得たブッダが瞑想する間、ヘビの王「ナーガ」が傘となり雨風から守ったという伝説に基づいた仏像。ブッダの背後に7つの頭を持ったヘビが見える。
重要文化財 十二神将立像(巳神)京都・浄瑠璃寺伝来 鎌倉時代・13世紀。薬師如来が従える十二神将のうちの巳神。ヘビのように鋭いにらみをきかせている。頭上にはとぐろを巻いて鎌首を持ち上げるヘビを表している。
重要文化財 十二神将立像(巳神)京都・浄瑠璃寺伝来 鎌倉時代・13世紀。薬師如来が従える十二神将のうちの巳神。ヘビのように鋭いにらみをきかせている。頭上にはとぐろを巻いて鎌首を持ち上げるヘビを表している。
重要文化財 清水寺縁起絵巻 巻下土佐光信筆 室町時代・永正14年(1517)。突如大蛇に巻き付かれてしまったお坊さん。清水寺に仁王像を安置すると誓うと大蛇は去り、窮地を逃れたとされる。
重要文化財 清水寺縁起絵巻 巻下土佐光信筆 室町時代・永正14年(1517)。突如大蛇に巻き付かれてしまったお坊さん。清水寺に仁王像を安置すると誓うと大蛇は去り、窮地を逃れたとされる。

開催概要

「博物館に初もうで―ヘビ~なパワ~を巳たいの蛇!―」

。開催日:2025年1月2日(木)~1月26日(日)
開催時間:9:30~17:00(金・土は~20:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:月
会場:東京国立博物館(東京都台東区上野公園13-9)
アクセス:JR上野駅から徒歩10分、JR鶯谷駅から徒歩10分
入館料:一般1000円、大学生500円、高校生以下及び満18歳未満、満70歳以上は無料。

【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式URL  https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2678

 

取材・文=前田真紀 画像提供=東京国立博物館