大阪の郷土芸能が錦糸町の夏の風物詩に
大阪発祥の河内音頭がはるばる箱根の山を越えて、東京墨田区の錦糸町で毎年夏に大盛り上がりをみせている。なんでも2日間で約3万人も動員。首都高の高架下で赤い提灯が煌々(こうこう)と灯るカオスな空間でステージから大音量で音頭が響きわたるなか、大勢の人が踊り熱狂と興奮に包まれる。
錦糸町と河内音頭はどのように出合ったのだろうか。「1970年代から80年代にかけて、ルポライターの故・朝倉喬司氏が大阪の河内音頭を紹介したところ東京でも注目され、その延長線上で大阪から音頭取りを連れてこようとなったときに、錦糸町商店街の青年たちが呼応したんです」と教えてくれたのは、錦糸町河内音頭実行委員会のいちばけいさん。
1982年に今はなきパチンコ屋「銀星」の2階にあった「銀星劇場」で、河内音頭のライブを行った。さらに1985年には劇場を飛び出し丸井の裏側にあった空き地で開催していたが、駐車場になるということで、1997年から現在の首都高の高架下へ。「2003年と2004年には丸井の裏手にある、いわゆるダービー通りで行ったことも。こんな面白いものがあれば街が盛り上がるのではという声から始まり、40年以上も続く夏の風物詩です」といちばさん。
“踊るもよし、聴くもよし”な河内音頭
河内音頭の最大の特徴は、CDを音源とする一般的な盆踊りとは違って、全編生歌・生演奏のライブ形式で行われること。音頭取り(歌い手)を中心に、和太鼓や三味線、エレキギターやお囃子(コーラス)などが加わって、“踊れる音楽”を奏でてくれる。そして、服装は何でもOK、個人の参加も大歓迎と自由度が高い。実際に、仕事帰りのサラリーマンがYシャツ姿で踊っている様子も見られる。
さらに、「物語を一定のリズムに合わせて歌いあげているのが河内音頭。浪曲の定番となっているお題も多いので、ステージ前には歌をじっくりと聴いている人も。まさに、“踊るもよし、聴くもよし”なんです」(いちばさん)。
そして錦糸町河内音頭では、基本2種類の踊りが繰り広げられる。河内音頭が東京にやってきたころに大阪の音頭取りに教えてもらったのが「手踊り」や「まめかち」などといった踊りだが、「まめかち」に似た踊り「マンボ」が約40年の歴史の中で東京ナイズされて独自の進化を遂げた「錦糸町マンボ」も踊られる。「輪の内側をおとなしめの手踊りが反時計回りに踊り、外側を激しめのマンボが時計回りに踊ります。手踊りは初心者でも入りやすいので、見よう見まねで踊ってみて。慣れてきたらぜひマンボに挑戦を」(いちばさん)。
複数の踊りが同時進行するので、初参戦だと戸惑うかもしれない。「初心者でもちょっとの勇気さえあれば輪の中に入れるので、気楽に踊りに来てください」といちばさん。フィナーレはロックコンサートのように、会場がひとつになって盛り上がる。錦糸町でしか味わえない唯一無二の盆踊りを体験してみよう。17時30分開演だが、18時過ぎると人出もどんどん多くなってくるので、早めに来場することがおすすめだ。
開催概要
「第42回すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り」
開催日:2024年8月28日(水)・29日(木)
開催時間:17:30~21:00
会場:堅川親水公園特設会場(東京都墨田区江東橋3-1付近)
アクセス:JR総武線・地下鉄半蔵門線錦糸町駅から徒歩6分
【問い合わせ先】
錦糸町河内音頭実行委員会 [email protected]
公式HP:https://www.kinshicho-kawachiondo.jp/
取材・文=香取麻衣子 ※画像は主催者提供