社会の変革期につくられた作品が我々に問いかけるものとは
第一次世界大戦の勃発前夜、ベル・エポックと呼ばれる平和と繁栄の時代を迎えたヨーロッパ。特にパリは芸術文化の中心地として栄え、街にはリトグラフのポスターやアール・ヌーヴォー様式の優美な装飾があふれていた。
しかし、第一次世界大戦によってベル・エポックは終焉。アーティストたちにも大きな衝撃を与えた。
本展では第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の約20年間に焦点を当てる。激動の時代の中で模索しながら、それぞれの表現を版画で試みたアーティストたちの作品約230点を、4つの構成に分けて展示していく。
1「『両大戦間』に向かって:Before1918」では、フェリックス・ヴァロットン、ジョルジュ・ルオーら、ベル・エポックの華やかさを感じさせる作品を展示。2「煌めきと戸惑いの都市物語」では、都市をテーマとする版画やファッション雑誌、絵本などの印刷物から、新しい社会に対する期待と不安が入り混じったフランス、アメリカ、日本、ドイツ、ロシアの様相を伝え、竹久夢二や藤田嗣治らの作品を展示する。
また3「モダニズムの時代を刻む版画」では、「抽象表現」「挿絵本文化」「シュルレアリスム」という3つのキーワードからモンドリアンやジョアン・ミロなどの作品を展示。4「『両大戦間』を超えて:After1939」では、第二次世界大戦の勃発によるアーティストたちの変化や戦後の展開に焦点を当て、フェルナン・レジェらの作品を展示する。
学芸員の高野詩織さんは、「不安定な情勢が続く今日、第二次世界大戦の直前にあたる100年前の社会と芸術が注目されています。“両大戦間”と呼ばれるこの時期には、人々の価値観が大きく変化し、近代から現代へと社会が急速な発展を遂げました。本展では、華やかな挿絵本やファッション雑誌から、社会の矛盾を冷静に捉えた版画、子供のための絵本まで、多様な作品を紹介します。激動の時代を生き抜いたアーティストたちの思いを感じ取っていただければ幸いです」と本展の見どころを語ってくれた。
時代に翻弄されながらも表現を試みるアーティストたちの思いを感じられるはずだ。
関連イベントも開催!
10月12日(土)記念講演会「両大戦間のファッションを語ったポショワール版画 -ファッション・プレート史を踏まえて-」
講師に東京家政大学名誉教授の能澤慧子氏を迎え、記念講演会を10月12日(土)、14時~15時30分、『町田市立国際版画美術館』講堂にて開催する。定員100名(予約不要、先着順)。本展観覧券の半券の用意が必要。
11月9日(土)「こどものための鑑賞会」を開催
講師にNPO法人赤ちゃんからのアートフレンドシップ協会代表理事の冨田めぐみ氏を迎え、「こどものための鑑賞会」を11月9日(土)10時15分~11時30分、13時15分~14時30分の2回開催。対象は0歳~未就学児とその保護者。定員各回10組(申し込み順)。申し込みは10月8日(火)12時から、町田市イベント申込システム「イペシス」HPあるいはイベントダイヤルより。保護者は当日有効観覧券が必要。
9月21日(土)プロムナード・コンサート「煌めきの奏者たち」開催
『町田市立国際版画美術館』プロムナードにて9月21日(土)、桜美林大学芸術文化学群による演奏第1部が13時~、玉川大学芸術学部による演奏第2部が15時~行われる。各回30分程度。無料。
開催概要
「両大戦間のモダニズム:1918-1939 煌めきと戸惑いの時代」
開催期間:2024年9月14日(土)~12月1日(日)
開催時間:10:00~17:00(入館は~16:30)※土・日・祝は10:00~17:30(入館は~17:00)
休館日:月(9月16日・23日・10月14日・11月4日を除く)・9月17日(火)・24日(火)・10月15日(火)・11月5日(火)
会場:町田市立国際版画美術館(東京都町田市原町田4-28-1)
アクセス:JR横浜線・小田急電鉄小田原線町田駅から徒歩15分
入場料:一般800円、高校生・大学生400円、中学生以下無料
※障害者手帳などお持ちの方と付き添い人1名は半額。
※初日9月14日(土)は無料。
※文化の日11月3日(日)は無料。
※会期中の第4水曜シルバーデー(9月25日・10月23日・11月27日)は65歳以上の方無料。
【問い合わせ先】
町田市立国際版画美術館☏ 042-726-2771
公式HP https://hanga-museum.jp/
取材・文=前田真紀 画像提供=町田市立国際版画美術館