江戸時代の浮世絵にも登場するアサガオ

夏を代表する花・アサガオは、もともと、奈良時代に中国からの遣唐使によって下剤用の漢方薬として伝えられた。種に薬効があり、種は中国名で「牽牛子(けんごし)」、花は「牽牛花(けんぎゅうか)」といわれる。そして、七夕伝説の彦星の中国名が「牽牛」であることから、入谷の朝顔まつりは七夕の前後の3日間に開催されるようになった。

江戸時代の浮世絵にも描かれているように、アサガオが観賞用として栽培され、人々の生活に身近な存在となったのは江戸時代に入ってからのこと。当初は入谷にほど近い御徒町周辺に住んでいた武士によって栽培されていた。その後、入谷の十数軒の植木屋さんが「入谷田圃(いりやたんぼ)」と呼ばれていた空き地で育てるようになったのが入谷朝顔の始まりだ。

その頃流行ったのは「変わり咲き」と呼ばれる、さまざまな花を交配することによって花びらや葉っぱを変化させた珍しいアサガオだった。最盛期には1000種類を超える品種があったという。あまりにも出来がすばらしかったため、明治中期には有料で観賞させるほど有名に。大正2年(1913)、植木屋の廃業を最後に朝顔市は一度途絶えたものの、1948年に復活し、現在は下町の夏の風物詩として多くの人々に親しまれている。

アサガオの性質に合わせて早朝から市が開かれる

1鉢2500円前後が相場。売り子さんとの会話を楽しみながら選ぼう。
1鉢2500円前後が相場。売り子さんとの会話を楽しみながら選ぼう。

期間中、境内と言問通りには約40軒の朝顔業者と約100軒の露店が立ち並ぶ。日の出とともに開花するという性質に合わせて、祭りは早朝6時頃から始まる。がんばって早起きをすればアサガオが大きく開花している様子を見ることができて、まさに三文の徳である。7月6・7日は12時~(8日は17時~)言問通りが歩行者天国になるので、ゆっくりと選びたい場合は午後からのお出かけもおすすめだ。

アサガオは末広がりの形状で縁起がよく、薬として伝来した経緯から、暑い夏を無病息災で過ごせるといわれる縁起物。色鮮やかなアサガオの花をめでながら、今年の夏は元気いっぱいに過ごそう。

開催概要

「第77回入谷朝顔まつり」

開催日:2024年7月6日(土)~8日(月)
開催時間:6:00~23:00頃
会場:入谷鬼子母神(東京都台東区下谷1-12-16)
アクセス:地下鉄日比谷線入谷駅から徒歩1分、JR山手線鶯谷駅から徒歩5分

【問い合わせ先】
入谷朝顔実行委員会☎03-3841-1800
公式HP:https://www.asagao-maturi.com/

 

取材・文=香取麻衣子 ※画像は台東区提供