浅草で評判の甘味処の店主に共通するもの、それはあんこに対する熱い思い"あんこ愛"だ。
『御菓子司 徳太樓』の増田有希人さんは「あんこはシンプルなんです。結局、小豆と砂糖、少しの塩。余計なものを入れない。だからこそ手間をかけて丁寧に作る過程がとても大事。でないと、さっぱりとしたいいあんこはできません」。『デンキヤホール』の杉平淑江さんも「仕込みから店にお出しするまで3日かかります。あくを取りながらふっくらと炊き上げ、煮冷ましたのが煮あずき。それに水を足して味の落ち着きを調整すると、ゆであずきの出来上がり」と、あんこを愛おしむように言葉を紡いでいく。的場製餡所の的場茂社長も「北海道十勝産のえりも小豆を原料に、小ロットを平釜で手作りし、小豆の自然の色と風味、舌触りの良さにこだわっています」と、負けてはいない。

そしてもうひとつ感じたのは、さりげない心遣い。『三島屋』の今川焼きもそう。周りの"羽根"を切れば見た目も良くなるが、羽根を楽しみにしているお客さんのために店主の平原健一さんはあえて切らない。『小松園』の佐竹徳治郎さんは、「お茶をおいしく飲むには、急須の大きさに合った茶葉の量が肝心」と、計量スプーンをサービスしてくれる。『銅銀銅器店』の星野保さんは、「うちの急須は出が良くて切れがいいのが特徴。口の部分をそう作っている。茶殻止めの穴はぎりぎりまで開けているしね」と教えてくれた。
「原材料にこだわり、無添加で体に優しいおはぎです」と、『OHAGI 3』の店長・舘林智さん。『菊丸』の菊池昭子さんは、「東京のあんみつはこしあんが基本だけど、希望があればつぶあんも可能です」と、甘党ファーストへの心遣いをみせてくれる。下町浅草の人とあんことお茶のさっぱりとした甘さは、なんとも心地いい。

御菓子司 徳太樓

あんこの旨さが光るきんつば

一晩寝かせたあんこを四角に切り、水で溶いた小麦粉を付け銅板の上で手際よく焼いていく増田さん。

「あんこはシンプルなんです。結局、小豆と砂糖、少しの塩。余計なものを入れない。だからこそ手間をかけて丁寧に作る過程がとても大事。でないと、さっぱりとしたいいあんこはできません」と4代目の増田有希人さん。『御菓子司 徳太樓』は明治36年(1903)創業以来、地元をはじめ、花街通いの粋人たちに愛されてきた老舗だ。名物きんつば1個140円は、あんこが透けて見えるほど皮が薄く、口に含むと軟らかくもなく硬くもない皮の絶妙な食感が心地いい。噛むほどにさっぱりとしたあんこのおいしさがほどけていく。

外観から花街風情漂う風雅な佇まい。

『御菓子司 徳太樓』店舗詳細

住所:東京都台東区浅草3-36-2/営業時間:10:00~18:00(土・祝は~17:00)/定休日:日(行事により営業)/アクセス:つくばエクスプレス浅草駅から徒歩8分

三島屋

癖になる、昔かたぎの今川焼き

あんこたっぷり。ワイルドな見た目からは想像できない上品な味わい。

焼くときにはみ出した皮が、餃子の羽根のように付く今川焼1個80円。周りの羽根は、切れば見た目も良くなるが、羽根を楽しみにしているお客さんのためにあえて切らないのだ。あんこほくほく、皮はふわふわ、周りの羽根がパリッと香ばしい。店主の平原健一さんが週2回、4~5時間かけて丹念に作る甘さ控えめのあんこを、卵が多めに入った生地でふんわりと焼く。この形は1952年の創業以来変わらない。

店内でも飲食可。たこ焼き350円も旨い。
少し小ぶりだが、この大きさが昔ながらの今川焼きの標準サイズ。

『三島屋』店舗詳細

住所:東京都台東区千束3-4-9/営業時間:12:00~20:00/定休日:水・木

小松園

下町茶舗でお気に入りに出合う

香り豊かな静岡産の松苑100g1080円。

創業明治20年(1887)。千束通りで長く親しまれてきた老舗。店には茶櫃(ちゃびつ)が並び、抹茶用の石臼も置いてある。「お茶は値段じゃなくて、あくまでも好みだから。甘み、渋味、旨味、香り、自分の好みを伝えてもらえれば予算内で用意します」と、4代目佐竹徳治郎さん。「お茶をおいしく飲むには、急須の大きさに合った茶葉の量が肝心」と、計量スプーンをサービスしてくれる。

ご主人がお茶を淹れてくれたり、話を弾ませながら茶葉を選べるのも下町ならでは。
昭和30年ごろの正月初荷の様子。中央の男の子がご主人。
常時32種類が揃う。荒づくり茶200g1728円、自家製ほうじ茶100g324円。

『小松園』店舗詳細

住所:東京都台東区浅草5-17-10/営業時間:9:30~18:30/定休日:毎月8日・18日・28日/アクセス:つくばエクスプレス浅草駅から徒歩8分

銅銀銅器店

お茶との相性がいい銅の茶器

平丸の特上急須3万5200円。

大正13年(1924)創業。「お茶やコーヒーの味にこだわるお客さんが、銅やかんはお茶やコーヒーの旨さを出す素直なお湯が沸く、と喜んでくれます」と、3代目星野保さん。熱しやすく冷めにくい銅の急須は茶葉がよく開くという。値段は少々張るが、軽くて丈夫で長持ち。毎日使うことを思えば、高い買い物ではないかも。

内側は錫(すず)でコーティングされ、絶対に錆びない。
令和元年度東京都優秀技能者を受賞した星野さん。「うちの急須は出が良くて切れがいいのが特徴。口の部分をそう作っている。茶殻止めの穴はぎりぎりまで開けているしね」と教えてくれた。

『銅銀銅器店』店舗詳細

住所:東京都台東区浅草4-22-10/営業時間:10:00~17:00/定休日:不定/アクセス:つくばエクスプレス浅草駅から徒歩3分

OHAGI 3

おはぎの優しさで世界を幸せに

本店は2017年5月名古屋市守山区で開業。「原材料にこだわり、無添加で体に優しいおはぎです」と、『OHAGI 3』の店長・舘林智さん。

和の優しさに包まれた食材が合わさった伝統の和菓子を、世界中の人に食べてもらいたいと2019年8月浅草にオープン。つぶあんをはじめ、抹茶やココナッツなどを使った個性的なおはぎが9種類。あんことご飯のバランスを考えて雑穀米を使用したものも。どれも口当たりがよく、優しい味わい。

各1個220円、3個単位で販売。白あんにほうじ茶パウダーが入った「焙月」と、こしあんが堪能できる「有明月」は東京限定。

『OHAGI 3』店舗詳細

住所:東京都台東区浅草1-31-4/営業時間:10:00~18:00/定休日:不定/アクセス:地下鉄銀座線・半蔵門線浅草駅から徒歩3分

菊丸

夢を叶えた〝あんみつ愛〟

濃抹茶あんみつ840円。最中の皮がパリッと香ばしく、素材の旨さが光っている。

「あんみつは材料の味のバランスが大切。自分がおいしいと思うものだけを使っています」と、店主の菊池昭子さん。「東京のあんみつはこしあんが基本だけど、希望があればつぶあんも可能です」と、甘党ファーストへの心遣いをみせてくれる。上野と銀座の甘味処に11年勤め、念願の店を2007年に開業。あんこや黒蜜が奏でるハーモニーについ顔がほころぶ。

リンゴの赤ワイン煮入りのあんみつベルサイユのばら870円。お客さんも幸せそう。

『菊丸』店舗詳細

住所:東京都台東区西浅草2-4-1/営業時間:11:30~18:30LO/定休日:第1・3月と第3火(行事により不定休あり)/アクセス:つくばエクスプレス浅草駅から徒歩3分

あんですMATOBA

絶品あんこを使った、あんパン専門店

人気ナンバーワンのこしあんぱん170円には製餡所のトップブランド「北の雫」を使用。

大正13年(1924)創業の的場製餡所のアンテナショップとして1980年に開業。店内には、製餡所で丹念に作られた自慢のあんこを使った小倉あんぱん、かぼちゃあんぱんなど、風味豊かなあんぱんが約20種類も並ぶ。いずれも絶品で、まろやかな甘さが口いっぱいに広がっていく。

焼きたてのあんぱんがずらり。
パックのあんも人気。こしあん、小倉あん各415円(150g×3)。

『あんですMATOBA』店舗詳細

住所:東京都台東区浅草3-3-2/営業時間:7:30~18:30/定休日:日・祝/アクセス:つくばエクスプレス浅草駅から徒歩5分

デンキヤホール

看板メニューは〝飲むあんこ〞

ゆであずき550円。冬はホットでいただく。煮あずき700円も風味豊か。

開業は明治36年(1903)。店名は前身の電器屋+ミルクホール。人気メニューのゆであずきは、もともと江戸時代に盛り場などで売られていたもの。北海道産大納言を丹念に煮あげた煮豆をさらに水で炊いて味を調整した飲み物だ。お汁粉よりもさらりとした、まろやかな甘さに癒やされる。

看板母さんの杉平米子さん(右)、その笑顔を受け継ぐ淑江さん。

『デンキヤホール』店舗詳細

住所:東京都台東区浅草4-20-3/営業時間:9:00~20:30LO/定休日:水・木

取材・文=伊東邦彦 撮影=伊東悦代 構成=さんたつ編集部
『散歩の達人』2019年12月号より