とある晩、『みますや』でカレーのルーだけを注文して酒を飲む常連客の姿を見た。思わず真似して試してみれば、また違った味わい深さがあるのだと驚いた。カレーで酒は飲めないよ! なんて人もまだまだ多数だが、実際につまみとしてカレールーを置く居酒屋もけっこう多いのだ。……と編集会議で熱弁したら、「吉岡さん、ちょっといい店調べてきてよ」と編集長。おつまみカレーを求めて奔走の日々が始まった。

松屋

60年余続く地元の名店

まずは清澄白河『松屋』へ。ランチは定食、夜はもつ焼きが自慢のこの店は、新鮮な鶏肉で仕込んだチキンカレーが人気で、おつまみ用にルーのみもある。種々の調味料(内訳は企業秘密!)を混ぜ合わせて毎日仕込むのだとか。店員の長田友梨さんおすすめのお酒は角ハイボール。中辛ルーの絡んだほろほろの鶏肉に、濃いめのハイボールがたまらない!

チキンカレーのルーのみ400円。
風情ある瓶入り炭酸水で作る角ハイボール480円は「下町だからウチのは濃いよ!」の一言もうれしい。

『松屋』店舗詳細

住所:東京都江東区三好3-9-3/営業時間:17:30~22:00/定休日:木・第1日

ブンカ堂

店主こだわりの日本酒は常時30種類近く揃う

続けて、「『カルー』という変わった名前のメニューがある」と聞いて向かったのは立石の『ブンカ堂』。店長の西村浩志さんは「カレーのルーを略してカルー。気になって頼むお客さんも多いです」。ジャガイモなどをとろとろになるまで煮込んだルーは辛さ控えめ。主張しない味なのにねっとりとした食感が不思議と後をひく。おすすめはなんとにごり酒を熱燗で。なるほど、日本酒もお米が原料なのだから、間違いない。

カルー 420円。生酛のどぶ750円。
オレンジワイン750円とのマリアージュもおすすめだそう。

『ブンカ堂 』店舗詳細

住所:東京都葛飾区立石4-27-9/営業時間:15:00~ 23:00LO(日・祝は~21:00LO)/定休日:不定

老若男女が静かに集う憩いの場

最後は高田馬場へ。駅前に店を構える『里』の店主・武田廣市さんはなんと日本最古のインド料理店・ナイルレストラン出身。バラ肉カレールー530円は、タマネギを30個以上も使用し、仕込みに1週間かけるという絶品ルーだ。ナイル仕込みの複雑なスパイスが香り立つ。武田さんおすすめは自家製のレモン酢ドリンク。スパイスの辛味がレモンの酸味と見事に調和して、ついついもう一杯。

バラ肉カレールー530円。テイクアウトもOK。
レモン酢ドリンク400円は夏にぴったり。
初めての客にも「おかえり」と迎えてくれる店主の武田さんのファンも多い。
ナイル商会のカレーパウダー、カエンペッパー、マサラの3種を使用。

『里』店舗詳細

住所:東京都新宿区高田馬場2-19-4/営業時間:15:00~23:00/定休日:日

多様なのはカレーだけではなく、お酒との組み合わせもしかり。カレーのルーとは、合わせるお酒で寄り添うように味わいを変える、カメレオン的つまみなのだ!

取材・文・撮影=吉岡百合子(編集部)
『散歩の達人』2020年9月号より